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第十九話 賢者の秘密と孤島の試練

エメラルド色の光を放つエメロード姫は、空中で固まったクロードを一瞥すると、彼を島の奥深くまで吹き飛ばした。クロードは完全に戦意を喪失した状態で、島の守護者の圧倒的な力に屈したのだ。


姫の視線が私たちに向けられた。その目は、優雅でありながらも、千年の時を生きた存在の厳しさを宿していた。


「そなたたち、魔力の波動が歪んでいるな。特に、船底の青年……その魔力の癖。見覚えがある」


姫は、船底で意識のないアトラスを見下ろした。その言葉に、私は直感した。この姫は、シリウスのことを知っている。


「エメロード様、あの青年は浮浪の最強賢者シリウスの弟子、アトラスと申します。そして、私たちは、王国の理不尽から逃れる者たちです」


私が正直に告げると、エメロード姫は静かに息を吐いた。


「シリウス……あの風来坊め。まだ人の子を巻き込んで、世界の『調整』を試みているのか」


私の鑑定が、姫の発言を読み取る。


対象: エメロード姫 シリウスとの関係: 【旧知の仲(千年単位)】【協力者(世界の安定)】 発言の真意: シリウスは、リリたちを使って世界を「調整」しようとしている。


「調整……?それはどういう意味ですか?」私が問うた。


エメロード姫は、地面に座り込むアイリスと、剣を構えたエリオット王子を見ながら、重々しく答えた。


「シリウスは、この世界が『停滞』していることを嫌う。停滞は、やがて腐敗を生み、世界を滅ぼす。彼にとって、そなたたち二人の『追放された者』が、硬直した王権を破壊し、新しい『流れ』を生み出す『トリガー』なのだ」


つまり、シリウスは、私たちを助けているのではない。私たちという「爆弾」を使って、古びた世界を「爆破」し、強制的に進化させようとしているのだ。


「そして、その実験台であるそなたたちは、私にとって『世界の停滞を打ち破る資格があるか』を試す『試練の対象』だ」


エメロード姫は、島全体に響く声で宣告した。


「この島に、古代の魔術文明が遺した『知識の宝庫』がある。その宝庫を開く鍵は、『理と情の調和』。そなたたちの中で、理(知恵)を司る者と、情(心)を司る者が、協力して宝庫の扉を開けてみせよ」


理を司る者……それは、私の鑑定と知識だろう。


情を司る者……それは、父の夢のために戦い、可愛いウサギを彫るアイリスの純粋な心か。あるいは、国民を想い、強大な敵に立ち向かうエリオット王子の情熱か。


エリオット王子はすぐに剣を収め、姫に深く頭を下げた。


「姫様。私が情を司る者として挑みます。私は、国民を愛する心だけは、誰にも負けません」


そして、私は頷いた。私の知識と、エリオット王子の情熱。あるいは、私の知識と、アイリスの純粋な技術への愛。どちらが正しい組み合わせなのか。


「承知いたしました。私たちの『生存戦略』は、貴方の試練を乗り越えることで、『世界の調整』という新たなステージへ進むようですね」


私は、孤島エメラルドに隠された古代の知識、そしてシリウスの真の目的を理解した。もはや、逃亡ではない。私たちは、世界を変えるための「実験」に参加させられているのだ。



フフフ。ボクの秘密が、エメロード姫によって開かされてしまいましたね!


そう、ボクの目的は、リリたちの「輸送」ではなく「増幅」、そして「世界への投下」です。停滞した世界を揺さぶるには、彼らのような異端の存在が必要です。エメロード姫は、ボクの意図を正確に理解してくれる、数少ない盟友の一人ですよ。


彼女の出した試練、「理と情の調和」。これは、リリの合理的思考(理)と、エリオット王子の情熱(情)、またはアイリスの純粋な心(情)、そしてアトラスの理論(理)の、どの組み合わせが最も強いかを見極める試練です。


そして、古代の魔術文明が遺した『知識の宝庫』!これが、彼らの逃避行を成功させ、ヴァルキリアス王国の復権に不可欠な「究極の切り札」になるでしょう。


リリちゃんはどの組み合わせで挑むのか?彼女の『鑑定』スキルが、宝庫の扉を開くための鍵を見つけられるか、楽しみにしていましょう!


次回、いよいよ古代の試練が始まります!またね!

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