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第十八話 孤島に眠りしエメロード姫、覚醒

「船の進行方向だけを、一瞬だけ別の座標に移動させてください」


意識のないアトラスに、私が魔術を依頼した瞬間、船は孤島エメラルドの岩礁に激突する寸前だった。私は船長とエリオット王子に身構えるよう叫び、木のウサギを握りしめながら、その瞬間を待った。


私の魔力と、エリオットの魔力を借りて強化した「空間の上書き」の力で、アトラスの脳の「魔術の実行部分」だけに、この命令をシンプルに焼き付けた。


バキィッ!


船が岩礁に激突する、その一瞬前。


アトラスの体から、微弱ながらも正確な魔力が発動した。船は進行方向だけが空間をスライドし、岩礁を避け、無事に島の浅瀬へと乗り上げた。船体が完全に壊れるのは免れたが、その衝撃で私たちは甲板に叩きつけられた。


「成功した!リリ、君の指示通りだ!」エリオット王子が歓声を上げた。


しかし、安堵は束の間。船が座礁したことで、私たちの居場所は確定した。島の木々の奥から、静かに殺気立つ気配が近づいてくる。


「シエナの魔力結界に捕捉されました!クロード、来ます!」


私はアイリスを庇いながら、エリオット王子を睨みつけた。


「王子!予定通り、囮になってください!アイリスは私と共に、最後の砲弾を準備します!」


エリオット王子は剣を構え、島の奥深く、クロードが潜んでいるであろう場所へ向かって走り出した。


私はアイリスを連れて船のそばに身を隠し、彼女は最後の砲弾となる魔力弾をガトリングカノン砲に装填し始めた。


そして、クロードの奇襲が来る前に、予期せぬ第三の事態が起こった。


私たちが上陸した浅瀬から、島の中央に向かう一本道。その道の両脇に生えていた、鮮やかなエメラルド色の苔が一斉に、光を放ち始めたのだ。


鑑定が、その光の発生源を読み取る。


対象: 孤島エメラルドの「生命魔力中枢」状態: 【魔力(満タン)】【起動(開始)】


対象: 浅瀬の海底(推定) 種族: 不明 称号: 島の守護者、エメロード姫 状態: 【覚醒(進行中)】【怒り(人々の争いに対して)】


「島の守護者……エメロード姫?」


伝説上の存在だとされていた、この島の名前の由来である「姫」が、私たちの戦闘の気配によって、覚醒を始めている!


木々の奥から、二振りのナイフを携えたクロード・ザンダーが姿を現した。彼は私たちの船を見つけ、勝ち誇った笑みを浮かべていた。


「見つけましたよ、第六王女殿下。まさか無人島で終焉を迎えるとは、お気の毒に」


クロードが私目掛けて突進してきた、その瞬間。


エメラルド色の光が、私たちの立っている浅瀬全体を包み込んだ。そして、その光の中から、信じられないほどの美しさを持つ、緑色の髪と瞳の女性が、ゆっくりと姿を現した。彼女の肌は透明感があり、全身から発せられる魔力は、シエナの魔力結界をも吹き飛ばすほどの、圧倒的な質量を持っていた。


「静まりなさい、愚かな者たち」


彼女の声は、海と風と、大地そのものの声のように響き渡った。


「この島は、人の血で汚されることを許さない。私はこの島の主、エメロード。私の眠りを妨げた罪は重い」


覚醒したエメロード姫は、クロードの突進を、ただ魔力の一瞥だけで停止させた。クロードの体は空中で固まり、彼の鑑定ステータスには【恐怖(極大)】が表示されていた。


そして、エメロード姫は、私とアイリス、そして船底で倒れているアトラスを、その緑色の瞳で見つめた。


「そなたたちの中から、『この島の怒り』を鎮める者を選ばなければならない」


私たちは、追手から逃げたはずが、より巨大な「島の意志」という新たな脅威に直面してしまったのだ。

ワオ!まさか、孤島エメラルドの伝説の存在が、このタイミングで登場するとは!シリウスもワクワクしています!


第十八話は、絶体絶命の窮地が一転、「伝説との遭遇」という超展開になりましたね!


アトラスの最後の魔術: リリちゃんのシンプルな指示と魔力上書きで、意識のないアトラスが正確に魔術を発動!リリの戦略家としての能力が、またも最強の助っ人を使いこなしました。


エメロード姫の覚醒: この島の守護者が、私たちの戦闘の気配で目覚めてしまいました。彼女の力は、クロードの暗殺術を完全に停止させるほど強力。これは、王宮の追手とは比べ物にならない、「自然の力」そのものです。


リリちゃんたちは、クロードという「刺客」と、エメロード姫という「裁き手」の間に挟まれてしまいました。


エメロード姫の言う「この島の怒り」を鎮める者**とは一体誰なのか?リリちゃんの知識、エリオット王子の武力、アイリスの魔道具技術。どれが姫の要求を満たすのか、見逃せません!


次回は、姫の要求と、それを巡るリリたちの新たな試練が始まります!お楽しみに!

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