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第十三話 アイリスの魔道具ガトリングカノン砲、炸裂!

アウルムの沖合。背後からはオズウェル隊長とシエナの乗る高速追尾船が、猛烈な勢いで迫ってきていた。船酔いで完全に機能停止したアトラスをエリオット王子が支えながら、私は操舵輪を握り、必死に船を走らせた。


「リリ!追いつかれます!何か手はないのか!?」エリオット王子が叫ぶ。


私たちの船は小型とはいえ快速船だ。だが、王宮が用意した追尾船は、魔力で強化された最新鋭の代物だろう。このままでは、時間の問題だ。


その時、船底に隠されていた木箱を開けていたアイリスが、顔を上げた。


「リリ様!エリオット様!できました!私の『魔力増幅炉』です!」


彼女の手に握られていたのは、複雑な歯車と魔石、そして魔法陣が組み合わされた、手のひらサイズの奇妙な魔道具だった。その中心には、煌々と輝く青い魔石が埋め込まれている。


「これを、あの『筒』に繋げば、もっと速く……」


アイリスはそう言うと、船首に設置されていた、普段は漁網を巻き上げるための大型の巻き上げ機を指差した。その巻き上げ機には、円筒状の巨大な金属部品が取り付けられている。


私は鑑定を発動させた。


対象: アイリスの魔力増幅炉 効果: 微弱な魔力を吸収し、高出力の魔力エネルギーへと変換。接続された魔道具の出力を飛躍的に向上させる。


対象: 漁網巻き上げ機(改造済み) 機能: 通常の巻き上げ機能に加え、アイリスによって内部に『魔力加速回転機構』が組み込まれている。魔力増幅炉と接続することで、高速射撃が可能になる。


「まさか……これは、漁網巻き上げ機を改造して、『魔力式ガトリングカノン砲』に仕立て上げたの!?」


私の頭の中には、前世で見た重火器の映像が蘇った。アイリスは、この船の巻き上げ機を、密かに戦闘用の魔道具へと改造していたのだ。


「はい!これがあれば、追っ手を……」


アイリスは、そう言いかけると、魔力増幅炉を巻き上げ機に接続した。カチリ、と音がして、巻き上げ機の内部から、低く唸るような起動音が聞こえてくる。


「エリオット王子!アイリスを援護してください!私はこの船を操縦します!」


私は操舵輪を強く握り、船体を左右に揺らして、追尾船からの直線的な攻撃を避ける。エリオット王子は剣を抜き、アイリスの隣で彼女を守る体勢に入った。


アイリスは、魔力増幅炉と繋がった巻き上げ機のレバーを握ると、小さな体を震わせながら、その引き金を引いた。


ドォン!ドォン!ドォン!


通常であれば、せいぜい漁網を巻き上げる程度の動きしかしない機械から、信じられないほどの轟音が響き渡った。巻き上げ機の筒が高速で回転し、そこから放たれたのは、魔力を纏った巨大な鉄の塊だった。


それは、まさしく「魔道具ガトリングカノン砲」。


魔力を圧縮し、高速で連射されるその砲弾は、夜の海を切り裂き、追尾船目掛けて一直線に飛んでいく。


「な、なんだと!?あれは漁網巻き上げ機ではないのか!?」オズウェル隊長の声が、遠くから聞こえてきた。


シエナの魔力探知が、アイリスの魔道具から放たれる異常な魔力反応を捉えているのだろう。彼女の船は、砲撃を避けるために大きく旋回した。


しかし、アイリスの砲撃は止まらない。彼女は一心不乱に引き金を引いている。


ドォン!ドォン!ドォン!


放たれた砲弾の一つが、追尾船の船首を直撃した。


ガシャァァン!


船首から大きな木片が飛び散り、追尾船は大きく傾いだ。シエナの張っていた魔力結界も、衝撃で一時的に乱れているのが、鑑定で確認できた。


「やった!命中だ!」エリオット王子が歓声を上げる。


アイリスは、息を切らしながらも、誇らしげに胸を張った。


「私の……魔道具が……みんなを守った……!」


彼女の小さな体からは、想像もできないほどの技術と、そして決意が秘められていた。


「すごいぞ、アイリス!これで、彼らとの距離を稼げる!」


私は操舵輪を切り、全速力で西の海路を目指した。アイリスの魔道具ガトリングカノン砲は、私たちの逃避行に、新たな希望の光をもたらしてくれたのだ。

キターーッ!これですよ、これ!皆さん、待ってましたよね!シリウスも大興奮です!


第十三話の主役は、間違いなくアイリスでした!


「魔道具技師見習い」の称号が伊達じゃないことを証明しましたね!まさか漁網巻き上げ機を改造して、「魔力式ガトリングカノン砲」を造り上げるとは!その発想と技術力は、もはや「見習い」の域を超えています。彼女の「魔力増幅炉」も、その技術の要ですね。


そして、砲弾が追尾船の船首に直撃し、王の忠犬オズウェルと千里眼の魔女シエナを混乱させたことで、リリたちは貴重な時間を稼ぐことができました。アイリスの存在が、この逃避行における「戦闘力」を劇的に向上させたわけです。


今回の展開で、リリちゃんが「少女を拾った」ことが、単なる人助けではなく、「最強の戦力」を獲得したことが明らかになりました。彼女の「生存戦略」は、常に想定外の展開で強化されていきますね!


アトラスはまだ船酔いでダウン中ですが、リリ、エリオット、アイリスの三人で、この大海原をどう進んでいくのか。そして、王都の追っ手は、このガトリングカノン砲の衝撃からどう立て直してくるのか。


次回も目が離せませんよ!また次の後書きで!

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