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第6話:囁く森 ― 二つの正義 ―
夜明け前の森は、静寂に包まれていた。
だがリナは、空気の震えを感じ取っていた。
因果の森が――何かを語りはじめている。
胸の中央に埋まった因果の実が、微かに光を放つ。
それは警告のようでもあり、呼びかけのようでもあった。
「……誰?」
森の奥から、声が響く。
それは彼女自身の声にも似ていた。
だが、冷たく、歪んでいる。
> 「同じ力を持つ者よ……おまえは何を守る?」
リナの足元を、黒い靄が取り巻く。
靄の中に、人影が見えた。
それはリナと瓜二つの姿をしていたが、右半身ではなく左半身に因果の模様が刻まれている。
> 「私の名は――“ナリア”」
影の少女が微笑んだ。
その瞳は紅く燃え、リナの正義を試すように細められている。
> 「おまえは“守る”という。だが、誰かを守れば誰かが傷つく。それでも、正義と呼ぶの?」
リナの胸が締めつけられた。
森の囁きがさらに強まる。
「因果は巡る」「二つの正義が交わるとき、森は目を覚ます」――
因果の森全体が、光と影に分かれるように震動を始めた。
空に散る花のような光の粒が、二人の少女の間を漂う。
リナは剣を構え、静かに呟く。
「ならば、確かめよう……私の正義が本物かどうか」
ナリアは妖しく笑い、因果の左手を掲げた。
二人の光が交わる瞬間、森が咆哮を上げた。
> ――因果は、ふたたび動き出す。




