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第1章 落ちた果実(後半)
> 因果の実は、まるで意思を持つかのようにリナの胸元へと吸い寄せられた。
光が弾け、空気が裂ける。
森が悲鳴を上げ、祠の木々がざわめいた。
「あ……っ!」
次の瞬間、実は彼女の胸に食い込み、溶けるように消えた。
リナの体を焼くような熱が走る。
右半身が脈打ち、皮膚の下で何かが這う。
まるで見えない炎が、正義の証を焼き尽くそうとしているかのようだった。
「やめて……! 私は……!」
叫びながら地に膝をつく。
月光の下、彼女の肌に現れたのは、黒と紅の入り混じる不気味な紋。
それはまるで、呪いにも似た刺青のように彼女の右腕を這い、胸元で一つに収束していた。
そこから放たれる光は、どこか妖艶で、神聖でもあった。
14歳の少女の面影は薄れ、代わりに現れたのは――
まるで夜の女神のような、近寄りがたい美貌と静かな狂気を宿した姿。
だが、瞳だけは変わらなかった。
まっすぐに、誰かを救いたいと願う、あの純粋な光のまま。
「私は……リナ。
この力が誰かを傷つけるのなら、私がその因果を背負う……!」
森の奥から、低く笑うような風が吹いた。
まるで《因果の森》そのものが、彼女の覚悟を試すように。
――そして、リナの運命は静かに動き出した。
正義の少女が、因果の化身へと変わる夜だった。




