断罪イベント365ー第32話 断罪反省文の提出ミス事件
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
断罪イベントが終わると、
王子には「断罪の反省文」を提出する義務があった。
もともとは
「反省などしない王子に、少しでも考えさせるため」
に導入された制度である。
経理部が提出管理をしており、
形式だけでも反省の意思を示すのが“儀礼”とされていた。
ところが。
「……え? 提出されてませんよ?」
経理部の執事長が書類束を確認しながら、眉間にシワを寄せた。
「ありませんね。“第31回分”の反省文が――」
まさかの「王子、反省文すっぽかし」である。
「ちょっ……そんなの、ただの書き忘れでしょ!?」
必死に弁明する王子。
「いや、だって昨日は起きたら
クラリスが勝手に断罪してたし! もう終わってたし!!」
「……つまり、自分で進行しなかった上に、
反省文も書かなかったのですね?」
「ちょっと待って!? これは誤解だって!」
「王子様、ご提出期限は“断罪日当日午後5時まで”でございます」
執事長は、静かに眼鏡を押し上げた。
「ええ、ええ。
王子様が“あれ〜今日って何かあったっけ〜?”と
寝ぼけながら目を覚まされたのは――
断罪開始予定の正午を、15分すぎた頃でございましたね?」
執事長が静かに、提出箱を持ってきた。
「ご本人が“反省文を出していない”ということは、
我々が“代理提出”することになります」
「え、いや、だから・・・!?」
王子の目が宙に浮いた。
執事長が静かに提出箱の一番奥を取り出す。
中から現れたのは――
**「第30回・ざまぁドーナツ美味しかった件について」**
という、**断罪とまったく関係ないレポート**だった。
「うっ……」
「しかも、こちらの文章。“ざまぁって、
つまりイベント的に盛り上がって良くない?”と記載がありますが?」
「……」
「反省どころか、**ざまぁをエンタメとしか思ってない**ことが明らかです」
さらに――
「ちなみに、第28回から第31回までの反省文が
“すべて同じコピペ”であることも判明しました」
「なんでそんなの調べるの!?」
執事長のメガネの奥が、キラリと光る。
「断罪庁の反省文AIが“同一構文”を検出いたしました。
以下がその文です」
魔道プロジェクターに文字が浮かぶ。
> 『私は断罪イベントを通じて、
多くの学びを得ました。今後も民の声に耳を傾けてまいります』
>
> ※この文章は他の王子様にも流用されている可能性があります
王子、チャットAIのテンプレ流用がバレた瞬間である。
「いや!これは流用じゃなくて……効率化というか!!」
執事長の側にいたクラリスが
そっと歩み寄り、王子に向かって手を差し出す。
「紙とペンです。今ここで、
**本当の反省文**を書いてみてはいかが?」
「……え」
「“自分の言葉”で、お書きになるのも悪くないですよ?」
王子は、しぶしぶペンを取る。
だが、なかなか書き始められない。
> 「あの時、クラリスは……
> 俺のこと、どう思ってたんだろう」
ようやく書き出された一文。
『俺は、君の言葉を、ちゃんと聞かなかった』
それは王子が
やっと、自分の心に向き合えた瞬間だった。
王子!ドーナツよりも反省を!
by執事長
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