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第28話 ノードからの救援

 次の日の夕刻、カナクの警備隊が深刻な状況に陥っていた時、ようやくノードから3隻の船がカナクの港に到着し、90人の警備隊と医療班が上陸した。ノードへの避難も考えていたカナクの人々は、これでサラルを追い払えると心から感謝し、安堵で涙を流した。


 ノードからの警備隊は、到着初日にサラルの襲撃に備えて成人学校ドームとショッピングドームの周りに、盾と重火器を装備した警備隊員を展開した。ノードから来た警備隊の隊長はクレイの長男ラルフだった。いとこにあたるリッチは、早速ラルフ隊長を訪ね、感謝の言葉を述べた。ラルフ隊長はリッチに「カナクを守るために全力を尽くす」と述べ、しっかりと握手をした。大勢の警備隊員を警戒したのかその夜、サラル達は現れなかった。


 夜が明けた2日目、ノードの警備隊はドーム周辺の防御陣地の整備拡充に取り掛かった。工作機械を使った土木作業で本格的な防御陣地を、成人学校ドームとショッピングドームの周辺10か所に構築する事になった。その夜も、サラル達は現れなかった。


 3日目の朝、ラルフ隊長はサラル討伐に動くことになった。30名の警備隊員をカナクのドーム周辺の防御陣地に待機させ、60人の警備隊員を率いて、ドローンの探索によりサラルの群れが潜む事が確認されている南の森地区に向かった。南の森地区に到着すると、ラルフ隊長は南の森地区を包囲するように警備隊員を15人ずつ左右に侵入させ、本隊の30人の隊員を正面の位置に配置した。包囲される形となった数十匹のサラルは逃げる様子もなく、挑発するようにドローンや警備隊員に石を投げ始めた。

 ラルフ隊長は、正面に配置した本隊の30人の隊員に前進を命じ、サラルの群れへの進撃を開始した。サラルの群れは近付いて来る警備隊に対して、素早く後退を始めた。そこへ包囲するように待ち構えていた警備隊員達が銃を撃ち掛けたが、サラルは木の上や岩のある場所から羽を広げて飛び立ち、目に見えない程の速さで警備隊の包囲を突破していった。警備隊員達が追いかける術はなく、包囲作戦は失敗に終わった。


 そしてその夜サラルの群れが昼間の包囲作戦の仕返しをするかの様に、カナクのドーム周辺に現れた。投石の多さからサラルの数は大幅に増えていると推測された。警備隊はドームの周りに構築された防御陣地で待ち構え、暗闇から投石して来るサラルに向かって、赤外線スコープでその姿を捉え、散弾銃や赤外線追尾小型ロケットで応戦した。激しい戦闘は一晩中続き、多くのサラルを撃ち落としたが、警備隊も十名近い隊員が死傷した。この戦闘の中、リッチとルーシーは、コナーやアリスの仇を取ると、ノードの警備隊員達が驚くほどの勇敢さでサラルと戦い続けた。


 ラルフ隊長はノード政府に、カナクで継続中の戦闘を報告し警備ロボットの派遣を要請した。

「カナクに現れたのは間違いなくサラルだ。ただ我々の先祖が旧大陸で遭遇したサラルはほとんど空を飛んでいなかったと伝えられている。しかし今回現れたサラルは自在に空を飛んでいる。進化したと考えられる。これに対処するには、警備ロボットの赤外線センサーで自動発射する機銃で、サラルを撃退するしかない」

 報告を受けたノード政府は警備ロボットのカナクへの派遣を決め、数トンの重量のある警備ロボットを運搬するための船の改造を造船所に指示した。

 この間、サラルは毎晩のようにカナクのドーム周辺に現れ、防衛陣地で待ち構える警備隊との激しい戦闘が続いていた。サラルの数は日を追うごとに増え、警備隊の犠牲も続出していた。


 ノードの警備隊がカナクに到着して8日後、ようやくノードから警備ロボットがカナクに到着した。ノードから来航した三隻の大型船はそれぞれ中心部に巨大な警備ロボットを積載しており、港に接岸すると、側面から鋼鉄製の橋を下ろし岸壁の係留ビットに固定した。そしてその橋を通って警備ロボットが6台のキャタピラーを動かして上陸を開始した。

 3メートルを超す人型ロボットは頭部に赤い目が二つ、両腕の先に機銃の発射装置が見える。3台の警備ロボットの威容を見て、カナクの人々はこれでサラルを撃退できる、やっと静かな夜が取り戻せると安堵の声を上げた。


 ラルフ隊長は、警備ロボットを南の森地区に進撃させてサラルの群れを攻撃するより、ドーム付近に警備ロボットを配置しサラルを待ち伏せて包囲殲滅する作戦を立てた。その前に医療班が、警備ロボットの攻撃を回避するための小型カプセルを、カナクの全住民の手の甲と犬達の後頭部に埋め込む作業を行った。そして、3台の警備ロボットがドームの南に百メートル間隔で配置され、サラルを迎え撃つ準備が完了した。


 その日の夜、辺りが闇に閉ざされると、数十匹のサラルの群れがカナクのドーム付近に現れた。成人学校ドームの正面を守る警備ロボット1号が起動し、赤い目を光らせてサラルの群れに正確な射撃を与えた。数十匹のサラル達は暗闇に光る赤い目から銃撃を受けて次々と撃墜されていく。生き残ったサラルは反転して南に逃走するが、そこには左右に配置された警備ロボット2号3号が待受けており、南へ逃げるサラルを両側から追撃し撃ち落としていった。


 夜が明け、カナクのドームから南の森地区にかけて約20匹のサラルの死体が散乱していた。まだ生きているサラルもいて、近づく警備隊員達を羽を動かし「ギャー」という叫び声を上げて威嚇した。人々は初めて明るい場所でサラルの死体を見る事となり、改めてその異様さに驚いた。体長は150~160cm、茶色や黒い薄毛に覆われ、頭部に黒い(つの)が有る。鼻が大きく顔つきは猿より人間に似ている。背中の羽は蝙蝠の様に折り畳みが出来る。この羽を動かし体温調節もしているらしい。石を投げるための腕が発達している。長いしっぽが付いている。

 まだ生きている2匹のサラルを、どうするかの議論があったが、殺すよりもサラルをおびき寄せる囮として捕えておくべきだという結論となり、ショッピングドームの南の地点に、頑丈な檻を作りサラルを収監する事になった。警備隊はドローンを飛ばし、南の森地区やその周辺の山地を探索したが、サラルの姿は発見できず、サラルは遠くに逃げ去ったと発表した。

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