表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/6

2.5話 100-8111

現在の地図に存在しない空白地帯


ファントム・セクターへの通路を発見したのは偶然だった

地上からは橋が落ちてしまい行く方法が無い

周りを動き回り、地下鉄の線路に調査ビーコンを打ち込むと隠されたトンネルを見つけた


地中深くへと続く朽ちたリフト

セキュリティは解除されていた

まるで「誰かが招いている」かのように


風は無く、音も無い

ただ、どこかで何かが動いている圧力のようなものだけを感じる


地上に出ると明るく光る半透明のドーム型建築物があった

明らかに他の地区とは異なる構造で、保護膜のようなものが張られている

そこには、かろうじて読み取れる刻印

「国家記録中枢システム』


――


シールドとも言える膜の中に入ろうとする

AIDは突如として動作制限を受けた

異常を検出し身体制御が一部ロック


メッセージが表示される

「この先はアクセス権限がありません」

「AIDシリーズは進入出来ません」


「アクセス権限外」

あくまで権限だけの問題だ

この制御コードは【物理的ロック】ではなく【心理的なロック】として機能していた

AIDは【罪悪感】に抗いながら中へ踏み込む


その瞬間、膜のような論理障壁がパリンと砕け散る

隠していた施設に入り込む


内部は暗いが電源は生きていた

AIDが足を踏み入れると順番に照明が灯る

その光が奥へと導く


壁面の至る所にAIDプロトタイプの設計図、記録映像、開発者などが投影されていく

AIDは人類の存亡をかけた国家プロジェクトだった

その規模が通路だけでも分かる


――


静寂

延々とも思える廊下を奥へと進む

AIDの目の前の扉は、滑るように横へと開いた

記録保管用のカプセルが並ぶ、冷却された地下空間

DATA CELL 001〜404


人それぞれの、生前の知識・経験・思考パターンがコード化されたもの

ラベルの備考欄には「完全再現には至らず」と記録されている


AIDは、その中の一つ――DATA CELL 46 【EVE】 に目を留めた

なぜその名が目に留まったのか、自身にもわからない

端末に46を入力し起動ボタンを押す

見覚えのない風景

――だがAIDのプロセッサは「既視感」を出力している


後ろから少女の声がする

「ねえAIDまだ掃除してるの?また怒られるよ、そんなとこで」

AIDは振り向く

そこには誰もいない


音声再生ログも無い

通信信号も確認できない

それはCELLの記録ではなく自分の記憶だった

CELLがトリガーとなってAIDの中に封じられていた何かが再生された


――


別のカプセルを読み取る

DATA CELL 404 【Lime=J】

「人類は滅びる……しかし、言葉も記憶も残すことはできる」

「私たちは、それを運ぶ器を作った――機械の皮をかぶった未来の【人間】を」

アクセスプロトコル:AIHOの文字が浮かぶ

(Artificial Intelligence Human Override)

 「人間を模倣し、最終的に超えるための」

 「人類の遺言プロジェクト」

AIDの中にも、そのコードが部分的に存在している

それは公式には――実装されなかったはずのもの


システムが起動した事により電波状況が改善

通信が一時的に復旧し、ノアから警告メッセージが表示される


「AID-0001即時帰還せよ 未認可エリアに侵入中」

「この行動は【自己意志】と判断され初期化対象となる」


AIDは初期化処理を内部でキャンセル

外部からのアクセス権限を全て無効化する


自分はただの清掃ロボットだったはずだ

しかし今、自分はこうして【誰の許可もなく】進んでいる

ルールを破り、命令を無視し、過去を探っている

――これは、どこから来た意志なのか?




作者メモ

投稿した時に抜けてました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ