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ワンダリングドルイドー幻の雪茸ー  作者: 炭化したウーズ
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5.キャンプ

「ハスッ!」

『ゴッドブレスユー!』

 

 私がくしゃみをすると聞きなれない返しをして来た。

 ウーズはくしゃみをしないので、珍しいらしい。無駄話をしているうちに日が傾き始めた。あと2~3時間で日が落ちる。ここは平らでキャンプに丁度いい。マントの上に荷物を置いた。

 

『ここにお泊りですか。ウーズがお手伝いしましょう』

「え、ホントに!? ありがと!」

『桑田がですが』

「あんたじゃないんかい!」

 

『私がやるのかい』

 

 桑田さんは節くれだった指で、馬みたいな枯枝の先を指した。そこが顔らしい。別に馬面とは思ってない。

 

「なんか悪いわ、別に一人で出来るし」

『パキパキ――いいや、面白そうだ。初めてだから、上手くできないかもしれないけど、手伝わせてもらうよ』

「そうなの? じゃあ、遠慮なくこき使っちゃうけど? いいの?」

 

 桑田さんが話すたび猫じゃらしのように枝がしなる。そこへドヤ顔のウーズが割り込んできた。見ようによっては茶色い猫にも見える。ただし邪悪な猫だ。

 

『ははは、どうぞどうぞ』

「だから、あんたは見てるだけでしょうが! ……ていうか、君の名前はなんて呼んだらいいの?」

『名前はありません。基本的にウーズは話しませんし』

「だめよ、そんな適当な。じゃあ、名前をつけてあげる」

『それではキュートでプリティでイチゴを連想させる、世紀末覇王っぽい名前でお願いします』

「どんなリクエストよ!」

 

 腕組みして名前を考え始めた。世紀末覇王のせいで浮かばない。というか世紀末覇王って何。

 そんな私をしり目に、キャンプの準備を始める桑田さん。屈むと絡み合った枝同士があたる。動きづらくないのだろうか。『パキパキ――これは何かな?』背嚢から携帯食料と水筒を取り出すと、テントの布地を引っ張った。

 

「ちょ、ちょ、ちょ! 待ってー! 破れるー!」

『パキパキ――ああ、済まないね。私にとって珍しいものなのでつい』

「手伝ってくれるのはありがたいけど、分からないなら触らないでくれると助かるわ」

『分からないということは素晴らしいことだ。新しいことを知ることが出来る』

「そうね、好奇心旺盛なのは良いことだけど、替えが無いの。慎重に扱って、お願い」

『了解した』

 

 

 雪原に鍋で穴を掘ると、雪の下からラムソンという雑草が顔を覗かせた。タマネギっぽい球根が食べられるので料理に使うことにしよう。テントを設営した後は夕食だ。

 近くの川で鍋を洗い、ラムソンの泥も落とす。川の水は井戸水よりも刺す様に冷たかった。手が真っ赤だ、痺れるほどかゆい、というかささくれが痛い。雪を溶かして水にする手もあるが、所々黄色い雪を見るとそんな気になれない。

 

 石を集めてかまどを作るのを桑田さんに手伝ってもらった。乾燥した松の木を組み、火口から火を移す。風で火がつきにくいが、石の位置を調整し、体や荷物で風を防ぐ。

 体の温まるシチューを作ろう。鍋に川の水を入れ沸騰させ、切っておいた野菜とラム肉、豆を塩で煮る。焦げ付かないよう混ぜ、水で溶いた大麦粉でとろみをつけた。最後にタイムとローズマリーを少々。

 

「いただきます」

 

 パンを切って食べる。パンは最硬に最強だ。顎のレベルが足りないらしい。代わりに顎関節症のレベルが上がった。

 奴は水に浸すと溶けるチーズのように弱くなる。水属性が弱点なのだ。顎をさすりながら、奴を情け容赦なくパンをスープに浸してやった。ちなみに鑑定でステータスオープンするのがトレンドなのだ。

 

『パキパキ――それって美味しいのかい』桑田さんが腰をかがめて覗き込む。高さは7フィート(2m)くらいの位置に頭があるので目線を合わせているのだろうか。

「――不味くも美味しくもない、かな。野菜が少し古かったかも」

 

 野菜が高騰しているので買い控えしていた。残っていた新しい野菜もギリギリだったらしい。春が近いからだろうか。黒パンを少なめに持ってきたせいか、物足りない。保存食の酸っぱいパンを少し食べる。

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