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12.キノコキノコ
霙はほぼ雨に変わっていた。フラウがナイアードに戻ったせいだろう。
岩に挟まっていた挿し木を梃子のように抜き、氷水の流れ落ちる岩棚を登った。そこは雪だった。頂上は一面雪で覆われ、なだらかな輝く凸面が空へと続いていた。枯れ枝が雪を留めていた。
最後の岩に足をかけると視界が開けた。動物の小さな肉球が横切っている。そんな中に人の足跡が残されていた。先客がいたらしい。山頂の対角線上の樹冠の下へ続いている。逆方向から登ってきたのだろう。
「――そうだ、キノコは……」
木の根元には雪面に穴が掘られ、採られた跡があった。遅かった。
周囲を探すが見つからず、山頂の斜面もよく分からない。足跡がないことから、可能性は低い。
奥にもう一峰ある。そこに賭けるしかない。幸い足跡はそちらの尾根には続いていなかった。「ふぅ、よし」
水がしみ込み始めたブーツに眉をひそめながらも進むことにした。冷たくはないが、量が増せば不快感も増す。先を急ごう。
「ぱぱっと跳んでけないの?」
「無理だから」