1.春の雪
ご来訪ありがとうございます。
校正から推敲までAIを活用しました。使えるものがあるなら使います。
自然を書きたいという欲求から、過剰な自然描写とAIからボロクソ言われましたが、それでも譲れない点はあるのです。
20000文字弱15話構成の予定です。
よろしくお願いします。
冬の終わり、家の前の二本桜が咲くのを心待ちにする季節。春の気配が漂い、庭のハーブも芽を出し始めた。
「今年もこの季節がやって来ました!」
「キマシタワー!」
私、イゼルダの家に隣の幼いアンナマリーが押しかけてきて、両手を振り回しながら走り回っている。悪魔に攫われた彼女を助けてから家に突入してくることが多くなった。
「って季節が来たらなんですの?」
「雪山に幻のキノコを取りに行く季節なのです!」ふんす。私は腰に手を当てて胸を反った。
「キノコって寒くても生えますの?」体全体を傾げるアンナマリーの目線の先、窓の外では雪が降り始めていた。
「ふ、アンナマリー、甘いわね。生えるからこそ幻のキノコなのよ!」「なんだか凄いですわ!」チ、チ、チ、とたてる私の人差し指を緑色の寄り目が追う。
「霊薬の材料だけど、自分で採って材料費を節約するのよ!」ぐっと握りこぶし。
「やっぱりセコイゼルダですわ!」
「ふふん」
「褒めてませんわ」
この地域のドルイドにだけ伝わる秘伝で、キノコで高級な材料を代用することで材料費を大幅に節約できるのだ。胸を張る私に口を開け目をぱちくりさせるアンナマリーだった。
ワン――ワン――
アンナマリーの家で飼っている犬アーサーだ。積もり始めた雪の上ではしゃぎ回っている。
「ふ、私にもあんな頃がありましたわ」アンナマリーは遠くを見つめながら呟いた。
「まだ10年も生きてないよね?」
「ローキックですわ! ゲシゲシ!」
「逆ギレ!? なんで私、シバかれてるのかな!?」照れ隠しか、推定ジト目の私をアンナマリーは容赦なくけたぐってくる。「ふー、イゼルダの相手は疲れますわー」まったく効いていない私を見ると、誤魔化すように犬を連れて帰っていった。まるで嵐のようだ。
「えー……」窓の外を金色の巻き毛が横切っていった。
「ただいまですわー!」アンナマリーの声が聞こえた、近所なのだ。
外へ出ると吐く息が白く渦を巻く。「止みそうもないわね」アンナマリーが去ると、静かさを余計に意識してしまう。
毎年付き合ってくれる冒険者が足を痛めたので、今年は一人で行くことにした。準備は全部私がやってきたので、何をすればいいかちゃんと分かっている。
そんなこんなで、町の錬金術師でドルイドの私は冬の雪山へ向かうことになった。
目的地までは直線距離で約2マイル(2~3km)。夜明けの山頂付近で採取したキノコにしか薬効がないため、夜通しの行程となる。山頂で泊まればいいと思うかもしれないが、そうすると不思議とキノコは見つからないのだ。父は森の意思だと言っていたが、目の当たりにするまでドルイドの冗談だと思っていた。
振り返ると、雪を被った我が家。ドルイドだった父マーリンがエルフの友人から譲り受けた、木の成長に合わせて形作られた家だ。樹齢千年に相当する巨木を、エルフの成長促進の霊薬で家にしたという。木の香りと質感が、落ち着いた雰囲気を与えてくれる。
「ふー」二度目の息は小さかった。日も傾き始めたようだ。鈍く輝く空を見上げ、私は小さく震えると家に入っていった。