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ブックマークたくさんありがとうございます!

お陰様で、日間ローファンランキング13位まで上がりました(^-^)v

大感謝です!

これからもよろしくお願いします。





日本ダンジョン協会東京新宿支部。

人々のざわめきの中で本日よく話題に上ったのが、高畑の懸賞金貼り紙である。



「お前これみた?」

「え?スミさん顔出ししたんだ?」



放送事故によって顔が明らかになった高畑。

よって貼り紙の写真も早急に差し替えられていた。

あの配信は切り抜きも出回り、ネットニュースにもなっていた。

探索者の間ではもう既に有名となっていた高畑だったが、一般人の間でも一時的にではあるがその名を知らしめたのである。

残念ながら、“イケメン配信者”としてであるが。




(それにしても腹立つわぁ〜)


椎名は手に持った高畑の貼り紙を見る。

あの配信の切り抜きであるから当然証明写真のようなまともな写真では無い。

ベッドでくつろぐアンニュイな表情をする高畑――


(本当お気楽なことで……こっちはこんなに必死に探してるっていうのに)


普段は日本ダンジョン協会中央本部で働いている椎名が、新宿支部まで来ていたのは理由があった。

今日は、この新宿支部で日本のトップ探索者、矢野進次郎に会う約束を取り付けているのだ。


ドラゴンスレイヤーとなった高畑を見た協会のトップはやっと重要性に気づいたのか、今更慌てふためいて椎名に探すように指示を出してきた。


(やっと予算出したか……こっちは、もうずっと探してるっつうの!)


顔写真も手に入り、恐らく300層辺りにいることも分かった。

初期よりも確実に情報が集まっている。

高畑がいる可能性が一番高いのは新宿中央ダンジョンの300層。


適当に不特定多数宛に依頼を出していても意味が無い。

一般の探索者では到底たどり着くことすら不可能だ。

よって協会は正式に、矢野進次郎の率いるS級パーティー、花鳥風月へ依頼を出すことにしたのだ。







「本日はご足労頂きありがとうございます」


「いえ、こちらこそ、わざわざこちらまで来てくださってありがとうございます」


椎名とパーティーメンバーは自己紹介をしてにこやかに握手を交わす。

事前にメールで依頼内容を伝えていたのでスムーズに説明に入った。


「スミさんと呼ばれる行方不明者、もとい、高畑優成さんを直ぐに連れ帰っていただきたいのです。幸い配信は毎日しているようで、生存は確認できてます」


「ただ、彼はおそらく新宿ダンジョンの300層付近にいる可能性が高く、連れ帰るのは並大抵のことではないかと存じます。協会は惜しみない協力と十分な報酬はお約束いたします。まず報酬は1億でいかがでしょうか?」


矢野は難しい顔で腕を組んで唸る。

吸った息を鼻から出し口を開いた。


「椎名さん。大変有難い話なのですが、結論から言うとお断りします」


「で、では上に掛け合って報酬を上げます!」



「そういう問題ではないんです」



矢野は落ち着き払った声音で諭すように話す。


「お話をいただいて動画の切り抜き等拝見致しました。無理なんです。私達ではとてもとても……力不足です」



「ですが!」

あっさり引く訳にもいかないため声を絞り出す。


「矢野さんのパーティー、花鳥風月は、順調に100層まで到達する事、もう7ダンジョン目ではないですか!新宿ダンジョンに絞って探索していただければ――」


「私たちが100層で引いているのは、安全第一でやっているからです。逆に言うと100層までが私たちの実力」


「私はもう少しいけると思うけれど」


赤髪の女性が口を挟むが、「安全が第一だ」と諌められ肩を竦めて口をすぼめる。


「黒炎龍――おそらく聖白龍と同格の魔物をKnightsがやっとのことで倒してました。

300層となると、Knightsのように世界ランク一桁の化け物が大人数を率いて挑む他ありません」


椎名はぐうの音も出せない。

日本には300層に到達できる人材が居ないことは元から承知していた。

それでも望みをかけて、日本唯一のS級パーティー、花鳥風月へ依頼をする他なかったのだ。



赤髪の女性がまたもや口を挟む。


「日本で有象無象を集めても無理だよ。ディオの職業、将軍はパーティーメンバーに強力なバフがかるから、やっぱりKnightsにしか無理なのよ。世界最大のギルドって言われているけど、あれは、世界最大の人数のギルドなの。世界最大の戦力のギルドじゃないんだから」


「ユリ、ややこしくなるからお前は黙ってろ」


「すみません……とにかく、少人数でいけるとしたら――世界ランク一桁が少なくとも2名はいないと……もちろん足を引っ張る人は論外だから最低でも世界ランク20以上ですね」

「そうですか……」


「うちらもいずれは300層行くつもりだから何時でもいいなら引き受けるけど多分10年は先だよ?」

「おい、タメ口で勝手に話すなって!」

「はぁ?何偉そうに」

「おいおい二人とも……矢野、俺ら騒がしいから出てようか?」

「僕は騒がしくないでしょ。ユリだけだよ」


赤髪の女性、原野百合香を他のパーティーメンバー、品川隼人が注意し、騒ぐ二人を葉山秋紀が宥める。


「あ、いえ、大丈夫です。現役探索者の貴重なご意見大変参考になります」

「……すみません」


「花鳥風月に不可能なのであれば……現状日本には高畑さんを連れ帰るほどの実力者がいないって事なんですね」


「海外に依頼されるのが妥当でしょうか」


矢野は、溜息をつきそうなほど落胆している椎名に、「自主的に帰る気になってくれたら一番良いんですけどね」と声をかけ励ます。

椎名は乾いた笑いで返した。




椎名は花鳥風月のメンバーと別れた会議室で机に突っ伏して項垂れる。


高畑が自分で帰還する――


それは一番無理だ。

実は毎日高畑の配信を見ている椎名は確信を持って断言できた。

高畑が、あの街を捨てることは有り得ない。





プルルルル


机に置いていた椎名のスマホが鳴る。

気怠げに手を伸ばし掴み取ると姿勢の悪いまま耳へ当てた。

声だけはキリッとする事を心がけ、通話ボタンを押す。


「高畑優成の居場所が分かった!!!!」


「んえ!?!?」


間抜けな驚き声をあげて椎名は席を立った。






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