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ブクマと評価ありがとうございます!

毎日投稿を意識して続けていきたいと思います!




「康太これ見て」


「なにこれ?」



双子の兄弟が仲良く体育座りでソファーに座っている。

暗い部屋でゲームをしている康太に、蒼太は無理やりiPadを押し付ける。



「聖白龍のソロ討伐切り抜き動画」


「聖白龍のソロ~!?!?」



康太は携帯ゲーム機を投げ捨てる勢いで、iPadを奪取する。

食い入るように動画を視聴すると、目を輝かせて言う。



「誰これ!ランカーの人!?日本のSランク探索者?」


「はぁー康太は本当に何も知らないんだね。この人はね――」



康太は胸を高鳴らせ唾を飲む。

純真そうな瞳が輝きマシュマロのように柔らかな頬が高揚で染まる。

久しぶりに面白そうな事がおきそうだと康太はワクワクして続きを待った。



「僕も知らない」


「ガクッー!」



古典的なボケでソファーからずり落ちて見せた康太。



「お前も知らないんじゃん!なんで僕を無知みたいに言うのさ!」


「ランカーの顔と名前くらい把握してないお前が悪いんじゃん」


「はぁ!?僕はただ面白くないやつに興味無いだけ!」


「まぁまぁ落ち着いて。この人のこと、僕だけじゃなくて皆知らないみたい」



蒼太は現状分かっている情報を康太に話す。



「本名年齢ランキング職業顔不詳」


「ほぼ全部不詳じゃん」


「本人に自覚は無いみたいだけど一応日本の人気ダンジョン配信者。チャンネル名は『ダンジョンすみっコぐらし』ダンジョンで街づくりしてる様子を配信してる」


「え?街づくり?」


「うん。ねぇ、興味あるでしょ?」



蒼太は康太の目を見つめる。

見つめられた康太は蒼太の目の中に好奇心が映るのを見逃さなかった。


康太と蒼太は双子。

楽観的で、思ったことを何でも口にする兄の康太。

合理的で、大人しめだが自分勝手な弟の蒼太。

性格こそ多少違えど、何をするにも一緒で、好きな事も嫌いな事も一緒。


そして何より二人の共通点は、面白いものが大好きだということ。


康太が興味あることは蒼太にもあるのだ。

この動画も、康太に興味を持たせるために見せてきたに違いない。



「蒼太だって興味あるんじゃん」


「うんまぁね」



二人は顔を見合せ新しい玩具をもらった子供のようにキャッキャと笑う。




「「行こうダンジョンに!」」










俺は今日も今日とて配信を始める。



「はーいこんにちは~」



見ている人がいないとしても何となく挨拶をしてしまう。

見ている人に挨拶していると言うより、このカメラに向かって挨拶しているのだ。

今日もよろしく、というように。



〈こんにちは!〉

〈こんにちは〉

〈仮面とって!〉

〈Hello〉

〈職業スキル紹介して!〉

〈同接は10万!?深夜のゲリラで!?〉

〈超楽しみ〉

〈待ってた!!〉

〈文字追えぬ……〉

〈こんにちは!!〉

〈名前は?〉

〈やばばば人バカ増えてる〉

〈外国人もいるな〉

〈スミさんバズってるね〉



目まぐるしく同接者数が上がっているのだが勿論高畑は気づかずいつも通り配信を始めた。



「今日は~」


〈ワクワク〉

〈ボス討伐?〉

〈ドラゴン!〉

〈次の階層探索!!〉




「ジャ、ジャーン」


「昨日取った白丸の鱗で、商業街のアーケードを作っていきます!」



〈知ってた〉

〈??〉

〈??あ、そういうチャンネル?〉

〈??〉

〈Why?〉

〈知ってたww〉

〈鱗とったらそりゃ使うよね〉

〈当たり前だよなぁ〉

〈どゆこと??〉

〈激しくふるいが揺れている〉

〈網目細すぎんか?wwww〉

〈拙者細い網目を綺麗に通り抜け着地!〉

〈スミさんが元気そうでなにより〉



 俺が作った街の商業街。

 観光地を意識した白を基調としたトロピカルでカラフルな色合いで街並みを形成している。

 一直線に伸びた広い道は白いタイルのような石畳。

道の両脇には均等に並べられたカラフルな旗。

 

 屋台のようにお店が並び、活気に満ち溢れ“そうな”雰囲気を醸し出す、そんな場所だ。

俺一人だから決して活気に満ち溢れることは無いのが残念だ。



「この商業街、ちょっとシンプルすぎるよね〜ってことでアーケードを足してみます」



俺は見ている人を意識して鱗をカメラへ近づける。

ドラゴンとの戦闘後だし、もしかしたら固定客が着いているかもしれないからだ。

気分はすっかり配信者である。

 


「この鱗、きっといい感じのアーケードになると思うんだよね!乳白色がさ、この商業街のタイルの色にそっくりだし!」



〈で、たwww〉

〈鱗はアーケード。はっきりわかんだね〉

〈彼は何言ってる?〉

〈ドラゴンの鱗は防具か武器がいいんじゃないかな〉

〈フェンリルカーペット、エンシェントトレント看板、ミスリルガゼボ、明光石電飾線、デーモン蚕玄関マット、白丸鱗アーケード←new〉

〈もったいない〉

〈パンピーには分からぬかもしれんが、コレがいいのよ〉



「では、鱗みたいな質感を残しつつアーケード作っていこうと思いま~す」



俺はある程度の枚数の鱗を地面へ並べ、魔力を注ぎながらイメージを固める。

入口にはアーチ状の高く聳え立つ門を、街道の天井にはしっかり光が入るような天井を作っていく。



〈秒で建築できるのなんなん〉

〈毎度の事ながら圧巻〉

〈Amazing!!!〉

〈彼は魔術師ではなかったのですか?〉

〈建築士?〉

〈次の階層の探索は?〉

〈【注】スミさんは探索しません〉

〈丸いポコポコした感じ、鱗感残ってて良き〉



「ふ~いー感じ!」 



俺は商業街の出来たてのアーケード門をくぐって、街道を進む。

果物屋、肉屋、パン屋、本屋、宝飾店、武器屋、服屋、織物屋、カフェ、美容室、整骨院、雑貨屋、薬屋なとが、ズラリと並んでいる。

ほとんど街のインテリアとして見た目だけ立派に作ってあり、中身はカスカスだ。

ちなみに、武器屋と織物屋と整骨院と雑貨屋だけ内装も完成しており、商品もある。



〈武器屋にチラッと見えた黄金の大剣は!?〉

〈オリハルコンやで〉

〈白い大剣もある!!〉

〈昨日の宝箱の白丸の大剣では?〉

〈装備しないんだ〉

〈装備出来ないんじゃね?魔術師やろ?〉

〈魔術師確定では無い。結界師かもやし建築士かもしれんし……〉

〈てかオシャレやね〉

〈普通に街〉

〈わかる〉

〈これ作るのめっちゃ時間かかりそう〉

〈スミさんこれしかすることないんで……〉



真ん中まで進み天井を見上げる。

窓から光が差し込んでおり、白いタイルが明るく照らされている。



〈ていうか、なんでこのボス部屋太陽光みたいなのがあるん〉

〈わいも知らん〉

〈多分超初期に作ってる。スミさんを発見する前〉

〈ボス部屋なのに外みたい〉

〈めっちゃ気になるじゃん〉




「あっ、そういやあれどこやったかな」


俺は空間に手を突っ込み、ガサゴソと掻き回す。



〈あ〜おっと?この流れは〉

〈wktk〉

〈やばいもの出せ!〉



「あったあった!」


「これ、後これ、あっこれも、これとこれとこれと……」



俺は様々な色の宝石を取り出して地面にポイポイと撒き散らす。



〈サファイア?〉

〈ルビー〉

〈アクアマリン〉

〈ガーネット〉

〈ペリドット?〉

〈めっちゃ宝石〉

〈宝石凄いんだけどなんか普通。物足りない〉

〈麻痺ってんな〉

〈だって金積めば普通に手に入るじゃん〉

〈でもこの量は圧巻〉

〈ダンジョン固有の宝石の価値やばいらしいね〉

〈マーメイドの涙結晶石、オークションで1000万の値がついたらしい〉

〈クイーンビーの瞳宝石が綺麗だよ〉

〈誰が1000万の宝石とか買うんや〉

〈探索者が買って指輪にして付与魔術も付けるんやで〉

〈付与魔術!?〉

〈ただの宝石とダンジョン固有石の大きな違い。ここテストに出るで~〉




「これ、多分ルビーだよね……こっちもよくわかんないけどちゃんとした宝石っぽい」


一つづつつまんで光に透かして眺めていく。



「うわーどうしよう。さすがに勿体ないかな?換金したらもしかしてだけど金持ち?」



〈wwwwwwwwwww〉

〈草〉

〈草超えて森ですわ〉

〈ここで迷うなww鱗で迷えww〉

〈あの量の鱗換金したら一生豪遊して暮らせた〉

〈フェンリルの時から金ドブしてるよww〉

〈宝石が高価という価値観はちゃんとあるんだw〉




「でもこれ結構序盤で手に入れたやつなんだよな~もしかしてダンジョンが出来て、宝石の価値下がってる? 俺もこんなに手に入ったし」



〈下がってないことは無いけどちゃんと高価やで〉

〈まぁ若干下がった。金とかプラチナもミスリルとかオリハルコンに押されて下がったよな〉



「お金があったら苦労しないよなほんと……俺も金さえあれば地上で暮らしてたし。家賃払えないから仕方なく家賃のかからない家で暮らしてるわけよ」



〈まさかの家賃がタダだからダンジョン生活!?〉

〈ダンジョン生活の理由、六年目にしてついに判明!?〉

〈お前、ダンジョンぐらしに自信持てよwwwww〉

〈金なくてダンジョン生活してんの?〉

〈金ならそこの大剣2本あれば家賃一生払えるくらい手に入るから早く戻ってこい〉

〈今日の独り言調子いい〉

〈彼はどうしてこんなに無知なの?〉

〈頭おかしいんか〉

〈スミさん調べたりしないから……〉



しばらくキラキラ宝石を眺めて悩んでいたが、

換金したとしてもこの街で暮らす限りお金は必要ないし、またこのくらいなら取れるため、使ってしまおうと決意する。

光に透かして眺めていた手をおろし、宝石を綺麗に地面に並べると、その上から手をかざす。

魔力を流しながらイメージを口に出して言う。



「窓をね、ステンドグラスみたくして、白いタイルにカラフルな光を幻想的な感じで差し込ませたい」



宝石は空中にひとりでに浮遊し、天井めがけて舞い上がる。

天井に吸い込まれた後、イメージ通りに窓がステンドグラスへ変化した。



〈お~白とカラフルの商業街にピッタリ〉

〈白いタイルはこの伏線か~〉

〈マジですごいセンスあるな〉

〈beautiful〉

〈どこの観光地かしら行ってみたい〉

〈観光地(ダンジョン推定300層)〉

〈300層まで行けたら行く〉

〈それ行かないやつ〉

〈今回のふるいかけ終わった?〉

〈結構新規さん残ってる〉

〈網目案外いい塩梅だったかもしらん〉

〈少なくともガキンチョはいんくなった〉







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>〈魔術師確定では無い。結界師かもやし建築士かもしれんし……〉 区切るとこ間違えて一瞬「もやし建築士」に見えた(´д`)
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