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【アニセカ小説大賞特別賞】ダンジョンすみっこぐらし~実力無自覚系配信者を世間は必死で探し出す。早くダンジョンから出てきて!?~  作者: 夏目ナナセ
売れっ子配信者になるぞ!編

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こんにちは!

またちょっと久しぶりになってしまいましたが、書きます笑




ボスを倒した康太が階段を下ると、交差点が見えた。


「え?地上?」

「え?そんなわけないでしょ」


後ろから遅れて顔を出した蒼太も一瞬ポカンと口を開いたが、見たことある景色であることを思い出し慌てて取り繕う。

「ほら、これスミさんがこの前の配信で作ってた、スクランブル交差点〜ダンジョン293層支店〜じゃん」


スミさんらしいネーミングの交差点を指差して蒼太は足を進める。

「あ、ほんとだ。やべーやっと近づいてきた感じするな!」

「うん確かに」


今までは蒼太が索敵してボス部屋まで誘導していたが、この層からはスミさんが作っている道なりに進めば良いので楽だ。

蒼太は“盗賊王”という職業で、これは盗賊職の最上位クラスの職であるため、索敵は大の得意分野だ。

今までもスイスイ最短距離を進んできたので、到着までの時間が早まることはないが、索敵をサボれるのはでかい。

おまけに飽き飽きしていた、原始的な岩のゴツゴツした道が、景色豊かになるのは嬉しかった。


「スミさん一回地上出た時あったじゃん?絶対これ、そこでビルとか見て作りたくなったよね」

「新宿御苑見て日本庭園作り出した時にもそれ言われてたよ。影響されやすいんだよあの人」


二人は会話しながらも、モンスターの相手をする。

293層のモンスターはグールやソンビ。

交差点を徘徊する人もどきの群れは、妙にマッチしていて面白かった。


「ゾンビ映画のセットみたい」

「言えてる」


康太が自身の体格に迫るほど大きな大剣を軽々と振り回すのに対して、蒼太は小さなナイフで気配を消して素早く動き回っている。

康太の職業は“戦王”というもので、戦うことに関しては、200層くらいまでなら康太に任せておけばほとんど問題ないほどの異様な強さだ。

とは言っても、一度に数体くることが当たり前の深層では一人じゃやっていけないので、蒼太もしっかりサポートをしていた。



そうやって順調に進んでいって二人はとうとう300層にやってきたわけだ。

後はボス部屋まで辿り着けばこの大冒険も終わりだ。ボスと戦う必要はもうないので、殆ど終わったも同然。


「開けるよ」

「うん」









高畑はステータスを見ながら1人で唸る。


ステータスは簡易的な物ではあるが、全人類見ることが出来る。

名前、職業、職業のレベル、スキル、スキルのレベルの5つが、ステータスと唱えると目の前に文字が浮かび上がってくる仕組みで、ゲームのような感じだ。

そして、名前の横の数字が表すのは世界ランキングなのだが、高畑はもちろんそのことに気づいていない。


「やっぱりもしかしてだけど、俺って強い方だったりする?」


いやまさか、そんなわけが――たいして探索もしてないというのに、などと腕を組んでウンウン唸り続ける高畑。


〈無自覚系乙〉

〈たいして探索してないってwwwめっちゃ煽るじゃん〉

〈ふーんおもしれー男〉

〈ちょっとステータス読み上げてみ?〉

〈マジでそろそろ発表しよ〉

〈右上の可視化ボタンをちょんちょんっとしてご覧?〉

〈みーせーろー〉

〈ここまで来たら謎に知りたくない感情もあるw〉



高畑は不安が込上げる胸を押さえ込み立ち上がる。

1人で悩んでいても埒が明かない――とりあえず上層の方へ登って行って誰かに話を聞こうと、入口へ足を進めた。



その時――


ガチャ


高畑が触れることなく開いたドア――

驚きで目を見開いていると、見た目がそっくりな男の子二人がなだれ込んできた。


「「つ、ついたー!」」


装備品をしまうと、前髪が左分けの剣を持っていた男の子が「イェーイ」と声を上げ相方へ両手を突き出しハイタッチを求める。

そして、前髪が右分けのパソコンを持っていた男の子が、やや気だるげにだが「イェーイ」と応じて、気持ちの良い乾いた音をパンと鳴らせた。

ふたりは高畑の方を見ると、「「スミさん!会いたかったよ!」」と声を揃えて言い、駆け寄ってくる。


高畑は、スミさんと呼ばれたことを疑問に思ったが、それよりも、こんな小さな子達が来ることが出来るなら、誰でも来れるんじゃん、と先程までの悩みを吹き飛ばしてしまった。


自分が強いのかもと思ってしまったのが恥ずかしい。

彩元さんが300層には誰も来ることが出来ないと言っていたのは、彩元さんの周りの人がそうなだけなのだろう。

探索者専門学校とか言っていたし、周りにいる子達が皆探索者の見習いの子なら、確かに来ることが出来ないのかもしれない。


〈ちょ……フリーズしてた〉

〈え?中学生?wwww〉

〈どうやってきた、このガキ共〉

〈子供二人だけ?〉

〈は??本当に人間?むしろ魔物の擬人化と言われた方が信じられる〉

〈ハッ!懸賞金!?〉

〈懸賞金、この子達のものになるんか〜〉

〈1億だっけ?〉

〈すみっこぐらし終了?〉

〈( ͡ ͜ ͡ )(感情を失っている)〉

〈終わりはいつも突然なんだ……〉

〈徳川埋蔵金発見ってこんな感じなんやろな(適当)〉

〈スミさんお宝扱いなの草〉

〈同接爆上がりwww〉

〈Twitterトレンド入ってるで〉

〈ダンジョン協会大喜びやろな〉

〈いや、その前にこの2人何者?〉


「いらっしゃい。よく来たね。スミさんって?」

そう尋ねた高畑に少年達は口々に、「ダンジョンすみっこ暮らしチャンネルだからスミさんって呼んでた!」だとか「僕たち二人それ見て会いたくなって来たんだ!」だとかワイワイ騒ぐ。

ただ付けているだけの配信を見ていた人がいたのはなんだか気恥ずかしかったが、慣れないガチャ配信をして集客した成果が出たのは素直に喜ばしい。


高畑はこの街をもう誰かに見てもらいたくてうずうずしているのだ。

気分はすっかり地方自治体の町おこし担当者。

作り上げている時は楽しくて気にならなかった孤独も、作り上げてしまってからは一層強く襲ってくる。

前回の綾元さんは、確かに最初の来場者ではあるが、自分で連れてきたためカウントして良いのか少し迷っていたのだ。

しかし今回は正真正銘、向こうから来てくれた、初の来場者――


いつかこの街が人気の観光地になることを夢見て、高畑は頬を緩ませていると、配信ドローンを見つけた男の子がドローンへ近づく。


「あっ、配信してるんだ。やっほ〜僕はそ……」

と言ったところで慌てて口を押さえ、「おっと本名言うところだったよ」ともう片方の男の子の方へ振り返り、意見を求める。


「康太、名前何にする?――あっ」


〈わろた〉

〈ガキがはしゃぐと碌なことがない〉

〈コウタくんね、了解〉

〈自分の名前はギリ踏みとどまったのに、相手のは秒で漏らすの草〉

〈ガキンチョは本名って古の時代から決まってんのよ。ネトゲネーム本名くさいやつ大体小学生やから〉


「……お前がネットリテラシーがクソなせいで、もう僕の名前は康太になったところだよ」

「ごめんって」


両手を合わせてテヘッと舌を出す男の子を横目で見た康太は、大きくため息を吐いて言う。

「まあ、仕方ないか。蒼太がテンション上がるのは分かるしね――あっ」


少しの沈黙の後、蒼太がジト目で康太を見つめる。

「……僕も康太がテンション上がってるのがありありと感じられるよ」

「ごめん」


〈ソウタくんね、了解〉

〈漫才かwwwww〉

〈スミさん捕獲されたって聞いてきた〉

〈それがまだ捕獲されてないんよ〉

〈300層到達→スミさんを褒めまくる→カメラに向かって本名暴露 (イマココ)〉

〈こいつらマジで何しにきたん〉

〈え!なんで子供がいるの!?〉

〈俺たちの無自覚無駄遣い最強スミさん終了?〉


落ち込んでいる少年たちに、高畑は「これただ付けてるだけだから大丈夫だよ」と声かける。

今日は本当に特に何もせず付けていただけだったので恐らく誰も見ていない。

名前を言ったところで、見ている人がいなければノープロブレムだ。


二人はチラッと目を合わせアイコンタクトをとった後、「あ、うんソウダネ」「誰も見ていなくてヨカッター」と、どこかぎこちなく声を出していたが、高畑は気にせず話を続ける。


「本当はそろそろちゃんと配信して、来場者を増やしたいんだよね……」


この子達にこんなことを言ってもどうにもならないのはわかっているが、いかんせん会話ができる人がすごく貴重なので、子供でも話し相手になってもらうしかない。

見たところ、中学生くらいに見える。

13歳から15歳くらいだろう。

見た目はそっくりの双子で、康太の方が少し活発そうな雰囲気で、蒼太の方は気だるげな雰囲気を纏っている。


「ふーんそうなんだ。スミさん、今ね、ダンジョン配信者ってすっごく人気なんだよ」

「そうそう、Dチューバーとか言ったり、アイドル化して、ダンジョン配信アイドルグループもあったりさ、すごいんだよ」


そこで言葉を切った蒼太と康太は二人で視線だけの会話を済ませると、再び高畑の方へにじり寄る。


「スミさんもさ!狙わない?人気ダンジョンアイドル配信者!」

「僕たち今どきの子だから、詳しいよ!目指せ登録者数100万人!」


〈このガキども何言い出すんじゃw w w〉

〈※もうすでに129万人です〉


「え〜俺は別にいいよ」

「スミさん、この街を有名にするにはもうこれしかないんだよ!」

「そうそう」


そう言われるとやる価値があるような気もしてくる。

今更、人気配信者とやらを目指すつもりは毛頭無かったのだが、ここを観光地にできるのはでかい恩恵だ。


「僕たちが、スミさんを人気ダンジョンアイドルにしてあげる!」

「プロデューサーって呼んでね!」

蒼太と康太はウインクして手を伸ばす。


高畑の、この誰も来ない現状を変えたい思いはもう一人でかかえなくてもいいのかもしれない。

二人はこの街のファンのようだし、悪いようにはしないだろう。

ネットはからっきしだし、若者に任せておけば大丈夫――

そう思った高畑は、自身へ伸ばされた二人の手を掴んで言う。


「これからよろしく、プロデューサーさん」


〈カオス〉

〈スミさんアイドルになる〉

〈何しに来たんだよwww〉

〈アイドルマスターの新シリーズ始まった?〉

〈推そうかな〉

〈なにこれwwwww腹痛い〉

〈全然連れ戻す気なさそうだよね〉

〈ダンジョン協会に怒られるぞこれ〉

〈ふざけすぎてワロタ〉


「じゃあ作戦会議するんで一旦落としまーす。悪いねリスナー、僕らがスミさんを独り占めして」

カメラへ手を伸ばす蒼太のニンマリした悪そうな笑みを最後に、今日の配信は終わった。














アイドル編?っていうのは冗談で、配信編します。

ダンジョン配信物なんだからそろそろちゃんと配信して、スミさんの秘密を暴いていこうと思います笑


面白いと思った方是非ポイント評価をよろしくお願いいたします!!!!!!


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― 新着の感想 ―
ショタの職業が王なら スミさんは魔王なのだろうか?それとも魔神? 神ほどの全能感はない気もする。
やっとここまで読めました〜!でも気になるところで終わってる…!笑 アニセカ小説大賞からタイトルで気になって読み始め、スミさんのほんわかキャラに反した最強やらかしっぷりが楽しくて、真鈴ちゃんとのアンジャ…
2025/06/30 22:58 退会済み
管理
流石盗賊王!みんなのスミさんを盗んでいくぅ!
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