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元気が出る感想をお寄せ頂きありがとうございます!
またランキングに載せて頂きありがとうございました!
励みになりまくりです!
高畑は今日も今日とて日課である白丸討伐を終え、ついでにこちらの日課も片付けようと、配信をスタートさせる。
〈やほ!〉
〈なんで配信スタートが狩り終わったあとなんだよ〉
〈今更それいう?w〉
〈新規か?〉
〈スミさん登録者数120万前後をフラフラしてんな〉
〈あの白丸討伐がピークだったんだよ〉
〈あれ以降もちょいちょいオモロいのにな〉
〈ちょいちょいww宝箱とか初の到達者事件はちょいでござるかww〉
〈保護されたよね彼女〉
〈無事でめでたしめでたし〉
〈それにしてもスミさんが連れ帰られなくて良かったよな〉
〈危うく俺らの大草原が枯れるところだった〉
〈農薬撒きに来てくれただけで助かる〉
〈お前らww協会に目つけられるぞwww〉
「ふぅ〜今日も肉を忘れず採取しました〜白丸いつもありがと〜」
肉はドロップでは基本少ししか出ないので、鱗と同じく、生きてる内にカットするやり方で確保した。
散らばった肉を拾いながら肉の残数を計算する。
一人になったというのに二人分で計算していた自分に苦笑してしまう。
「しまった……こんなに要らなかったなぁ……まぁいつか誰かが来て肉足りなくならないように備蓄したらいっか」
〈哀愁漂わせているところ悪いけど来ないよwww〉
〈諦めろww〉
〈彩元真鈴が最初で最後〉
〈短刀のニュース見た?〉
〈『メイドインスミ初の武器出土か』出土wwww〉
〈古代遺物かな?〉
〈武器っていうところがポイント。初の出土はトイレだからwww〉
〈ほんまあのトイレ何なんww〉
〈あれのおかげでスミがダンジョン制覇したの確定したよなw〉
〈確実にいた証拠〉
〈いうて、あのタイミングの重なり方は確定でスミ〉
〈状況証拠より物的証拠〉
〈協会で保管されてるらしいで〉
「それにしても、最後の彩元さんの言葉、300層には誰も来ないってどういうことだろう……」
高畑は白丸に踏み荒らされてバキバキに割れたレンガタイルを元の位置に戻しながら考える。
彩元さんが帰ってからというもの、最後の言葉が耳に残ってずっと高畑の頭の中を回っている。
あれは一体どういう意味なのだろうか――
「……もしかして本当にここには誰も来ることが出来ない?」
〈心理に辿り着いたか〉
〈ピンポーン!正解の音〜!〉
〈彩元真鈴余計なこと言い残すなw〉
〈撒きにきたのは除草剤やったかもしれんな〉
〈そんなことない俺が行く!〉
〈ワロタ絶対行けよお前〉
〈お前が行けばスミさんも心理から離れる〉
〈300層に来る人ってもうそれ化け物かスミなんよ〉
〈ジャスティンならいける〉
〈ジャスティンも行けなくもないだろうけど、明明の方が余裕で行けると思う。ジャスティンは1人だけど明明はネクロマンサー軍隊作れる〉
〈レイチェルちゃまが可愛くて最強〉
〈ゆうてランキング上位勢なら1人で行けるやろ。聖女のヘレンは厳しいけど〉
「まぁ考えても仕方ない。とりあえず今日は武器でも作るか」
高畑は思考を放棄し、武器屋へ移動すべく足を進める。
今まで、ここに来るまで飽きるから誰も来ないのだと、景色を豊かにすべく、着々とダンジョン緑化計画を遂行していたが、もし仮にそもそも誰も来ることが出来ないとしたら、やっていることが無駄になってしまう。
今日は290層の予定だったが、こんな気分のまま外に出る気にはなれなかった。
武器屋に着いた高畑は、店先に並ぶ様々な剣や槍を眺め、今度は何を作るかで悩み始めた。
あれらはほとんどがドロップ品だ。
量産品であるドロップ武器よりも、オリジナルの性能の高い武器の方が人気なはずだ。
彩元さんが選んだのも高畑が作成したオリジナルだったし間違いないだろうと、1人で納得したように頷く。
とは言ってもあれは怪我の功名でたまたま出来た作品――
軽さを追求して付与魔術を重ねがけしまくっていたら、勢い余って刀身がモヤとなり霞み消えてしまったのだ。
不思議なことに殺傷能力はそのままだったのでヨシとした。
いつぞやに金髪の女性探索者に渡した盾もオリジナルだ。
これはそこそこコツを掴んだ後に作成したもので、高畑自身も出来栄えに満足している。
あれには『自動追尾』と『ステータス補正』と『反射吸収』がついており、攻撃の中心へ自動で移動してくれる優れもので持つだけで使用者のステータスが二割上がる。
吸収した攻撃を七つの魔石に込めることが出来、魔石に触れながら解放と唱えると、溜め込んだ攻撃を反射させることが出来るのだ。
金髪の女性冒険者に細かい説明をする暇はなかったが何となく使いこなしてくれるだろう。
性能もさることながら、特にこだわったのは見た目だ。
縦の真ん中に竜の掘りを入れたが、あれは白丸をモデルとしている。
白丸を拘束してモデルにさせ、自分は座り込んで盾に白丸を彫り込むのは楽しかった。
3割増でかっこよく掘ったので許して欲しい。
今回はあれと対になるような片手剣にしようと、材料を取りだし、高畑は奥の作業台へ向かう。
作業台へ着くと、お気に入りのハンマーでミスリルをうちつけていく。
〈当たり前のようにミスリルなの草〉
〈打ちつけてるハンマーの性能がヤバそう〉
〈いつもみたく謎魔術でパパっと作るかと思ったら意外と本格的〉
〈もうあんなにドロップ武器あるから作んなくて良くね?〉
〈しかもレアだしな〉
〈スミさんやっぱり鍛冶師なんじゃね?〉
〈そんなシンプルな生産職でこんなに強いか?〉
〈スミさんだから〉
〈ソシャゲのぶっ壊れキャラすぎるw〉
この時間は地味に好きだ。
オレンジから青に変わる炎を見つめ、焼けた匂いや炎がパチパチ弾ける音を聞くと心が落ち着く。
温度を見極め慎重に取りだし、真心を込めて打ち付けるのはストレス発散にもなった。
ハンマーを打付ける甲高い音が辺りに鳴り響き、穏やかな時間が流れる。
「俺はものづくりが天職なんだろうな〜」
〈戦闘だと思うよ〉
〈スミさんの才能は無駄遣いです(異論は認める)〉
〈ワロタwww〉
〈まっなんでもいいんじゃね?〉
〈本人が楽しいなら何より〉
〈喋らんくなったな〉
〈睡眠BGM?〉
〈カーンがうるさすぎて寝れんわ〉
〈俺はカラオケでも寝れるタイプ〉
〈知らんわwww〉
熱しては叩きを繰り返しある程度出来上がったところで、付与魔術を行使する。
「んーと、とりあえず『耐久力強化』と『切れ味強化』?あとは――」
この剣はこれからあの盾とついになるよう、刀身に白丸を彫り込むつもりだ。
どうせなら能力も同じにしておこうと、追加で『反射吸収』を付与する。
〈反射吸収?はにゃ?〉
〈wwww〉
〈そんな付与出来んの!?〉
〈スミさん半端ないってw〉
〈ちょwwww何これ!今北産業〉
〈ものづくりスローライフ系配信者スミさんの
新作片手剣に
すっごい付与魔術なう〉
〈3行無理矢理で草〉
〈配信コメント欄で今北産業初めて見たww〉
〈配信者がコメント欄見ないからスレ化してるんやで〉
吸収した魔力や魔術を貯めておける石をこの剣にも埋め込んでおこうと、アイテムボックスから石という石をかき集める。
相変わらず整理整頓が出来ていないので、「これはちがうか」「あの石はどこいったっけ」などと独り言を零しながらポイポイと床へ石を放り出す。
〈なんかめっちゃ出てきたwww〉
〈氷の宝珠、闇の宝珠、炎の宝珠etc〉
〈石呼ばわりですけど、宝石よりも価値が高い魔法石なんだなぁそれ〉
〈ていうか、宝珠バカデカサイズじゃね?ww俺の拳よりでかい〉
〈大宝珠?特大宝珠?ww〉
〈なんか散らかりすぎてボールプールみたいになってきたな〉
〈ボールプール用のボールサイズの宝珠がボールプール作れるほど溢れてるYO!〉
〈ラップ全然ダメやり直し〉
「あったあった!でかい角の生えた馬の額にあった、超綺麗な石!――ユニコーンの聖魔結晶?へぇ、アイツユニコーンだったんだ……全然可愛くなかったけど」
オーロラ色に光り輝くクリスタルを手に取りながら、あの凶悪な馬面を思い浮かべる。
紫やらピンクやらではなく、全体的に白だったし、普通にムキムキの馬だったし、魔術耐性が強くて魔術では1ミリも削ることが出来なかった。
出会ったのは一度きり、おそらくレアだろうから武器に使おうと思って取っておいたのだ。
〈ユニコーン!?〉
〈ユニコーンだと!?〉
〈ユニコーン!〉
〈は?俺の耳が仕事しないんだが、ユニコーンはないよな?〉
〈ユニコーンありがとうございます〉
〈ユニコーンユニコーンうるさwそんな凄いん?〉
〈凄いなんてもんじゃないでござる。出会うことさえ奇跡〉
〈出会うことが奇跡〉
〈幻の聖獣〉
〈ほぇ〜凄そう〉
〈はぁ……これだからパンピーは事の重大さが分かってないでござるな……〉
〈ユニコーンはで会おうと思って出会えるものじゃないから〉
〈逃げる隙を与えたら逃げるんでしょ?〉
〈そだよ。発見報告は上がっていても討伐報告はゼロ〉
〈魔術耐性が強力で激強やから、むしろ逃がしてくれてありがとうなんですわ〉
〈スミさん魔術師じゃないんですか?〉
〈……さぁ?〉
盾の時は全面に石を散らしたデザインにしたが、剣では、刀身部分に石が着いていたら切れ味の邪魔をしそうなので、鍔の部分にシンプルにひとつ、この石を埋め込むことにする。
ひとまず形は整い、出来栄えに惚れ惚れしていると反射する刀身に映る狐面の男と目が合う。
「さぁ〜てここからが本番」
高畑はなにも剣が作りたかった訳では無いのだ。
メインは白丸を掘ること――
小さなナイフを取り出した高畑は、白丸の姿を思い浮かべながら刀身の腹の方に掘り始めたが、盾よりはるかに彫り込める箇所が狭く苦戦する。
〈え??なんか傷つけ始めたんだが〉
〈ミスリル……だよな?〉
〈ミスリルゴリゴリ削れる小刀〉
出てきた屑を息で吹き飛ばしてはまた削る。
時折鼻歌を混じえつつ時が経つこと小一時間――
「ふぅ〜まぁこんなもんかな。偉いちっちゃくなっちゃったな〜白丸」
〈おっ?出来た?もう深夜一時だぞ〉
〈かんせーい!888〉
〈クオリティが高いのがなんか癪なんだが〉
〈白丸の彫刻か〉
〈……え?見覚えあるくね?〉
〈は?なにが?〉
〈こ、これ、金色の夜光の姫騎士殿の盾ではなかろうか……〉
〈誰それ〉
〈あっ!!!既視感それか!〉
〈先日のショッピングモールダンジョン発生事件の時の被害者の一人で、そこから覚醒したかのごとく快挙を成し遂げて個人ランキング爆上がり中の通称『夜光の姫騎士』〉
〈鑑定に出した時少し盛りあがったけどご存知ない?〉
〈調べたらわかったわ〉
〈あれ、待てよ?じゃあメイドインスミふたつ目は姫騎士の盾!?〉
〈スミ産の武器があれば強くなれる…ってコト?!〉
〈まじ寝そうだったけど起きててよかった〉
〈是非拙者にも作ってくだされ……何卒……何卒……〉
〈スミさんやっぱ鍛冶師系統の職種か?〉
「おっと大事なの忘れてた『自動修復』っと」
地味だけど忘れてはいけない必須性能だ。
せっかく作ったのが壊れてしまっては悲しくなるのでほぼ全ての作品に付けている。
「これで完成だ!ジャーン!『片手剣〜白丸モデル〜』の完成!」
〈片手剣!?名前そのままなんだwww〉
〈名付けセンスだけは壊滅的www〉
〈まってwこれからこれ、白丸モデルシリーズって呼ばれんの?〉
〈この様子を見るに、姫騎士の盾も『盾〜白丸モデル〜』って名前なんじゃね……?〉
〈急にダサいwwwwドラゴン彫刻の時点で若干厨二臭かったけどw〉
〈俺の習字道具セットもドラゴンだから安心して〉
〈草wwそういう俺もエプロンもナップサックも裁縫セットもドラゴンだから安心して〉
〈そうそう、拙者も修学旅行でドラゴン剣のキーホルダー買いましたんで安心してくだされ〉
〈あれかwwwwまだあるんだwwww〉
〈みんな仲間で良かったなスミさん〉




