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お久しぶりです。
不定期更新に変更します。
描きたいものが分からなくなって迷ってましたm(*_ _)m
あとキャラクター名が今更ながら問題だと認識しまして、とりあえず今後出さないのと、タイトルひらがなへ変更しました。
真鈴は生きていてここまで息苦しさを感じたことは無かった。
水中にいるような、いや空気は正しく吸えているのだから、吸った空気がまるっきり二酸化炭素のようなという方が近いかもしれない。酸素がない。
目の前にはナイフとフォークでいつもと同じ料理を綺麗に食べているタカハタ。
その表情もいつもと同じであるように見えたが、真鈴には分かった。
タカハタの微妙な違いが。
いつもよりこちらへ目配せする回数が多い。
タカハタがこちらに意識を向ける度に戦慄の思いだった真鈴は視線に敏感になっていた。
しかもチラリと見てはすぐ目を逸らす。
何か言いたいことがあるのは明白だった。
なぜ何も言ってこないのだ、と真鈴は冷や汗をかく。
真鈴はずっとギロチンに頭をセットしている心地がした。
いつ下ろされるかも分からない刃を恐れ、タカハタの一挙手一投足を瞬きすら惜しんで観察している。
(私はタカハタの討伐に失敗した)
元から勝率などあってないようなものだったのだ。
タカハタがそもそも何タイプ攻撃手段を用いる魔物なのか探るため様々な質問をしたが、わかったのはどうやらタカハタは『魔術タイプだが物理攻撃の方が早くて好き』というよく分からない事実と、こしょこしょには強いことだ。
もっと綿密に準備をして、慎重に決行する必要があった。
「あの……あ、えーと昼間はその……」
ネームドモンスターというのはこうも感情豊かなのかと真鈴は驚く。
気まずくて話しかけたくても話しかけられない様子はまるで人間のようだった。
「申し訳ございません。もう、二度としないので」
「あ、いや別に……」
ネームドモンスターは普通の魔物と違って自我がある。
自我があるということは性格だってあるだろう。
タカハタはどうやらおおらかで正々堂々とした性格のようだ。
自分を殺そうとした人間を簡単に許し、今日も餌を運んできてくれた。
しかも挑まれること自体は嫌いじゃないらしい。
順序と気持ちが大切、と言っていたから、真剣勝負を申し込んで、握手でもして互いに礼でもした後に戦えば良いのだろうか。
「フッ……」と真鈴は自嘲気味に空気を漏らすように笑う。
もう勝負など申し込むつもりもない。
このままこの部屋で過ごせたらそれでいい。
だがそうもいかないことは分かっていた。
真鈴はもう確実に嫌われている。
タカハタは、あの黒いモヤで淀んだナイフを真鈴にピッタリだと言ってきたのだ。
真鈴の心そのものだと、突きつけてきたのだ。
もう無かったことにはならない。戻れない。
「あの!」
急に溌剌とした声を上げた真鈴に、タカハタが肩を跳ねさせ顔を向ける。
「私を食べないんですか?」
「私を食べないんですか?」
高畑は真剣な表情で濡れた瞳を向ける彩元さんに内心焦っていた。
(え!この子順番が大切っていう俺の主張聞いてた?)
高畑が何も言えずにいたら追い討ちをかけるように「なんで食べないんですか?」と問立ててきた。
「なんでって、もっと関係性が深まってからの方が……」
彩元さんの目が見開かれる。
一気に顔を青ざめてボソボソと呟いた言葉は正しく聞きとれていたとしたら「なんて残酷なの……」だ。
「ん?あの……残酷?って言いました?」
彩元さんはもしかしてもう関係性が十分深まっていたつもりだったのだろうか。
好きならもっと分かりやすくやって貰えないとこちらは何も分からない。
昼間のあれは分かりやすかったが、笑顔で挨拶とか、ボディタッチが多いとかからでお願いしたい。
自分の行動で傷つけてしまっていたのなら申し訳無いが、初心者にはキスや体から入るのは無理だ。
「だって……仲良くなって、希望を見せて、信頼を築いてからの方がいいんでしょう?そんなの残酷だわ――どうせ食べられるなら早い方がいい」
思い詰めた表情で唇を噛み締めている彩元さんを見て、俺は大きな思い違いをしていたのではないかと思い直した。
「もしかしてやられたくはない?」
彩元さんは鋭い眼光で「そんなの当たり前でしょう!!」と叫んだ。
奇妙な状況に頭を悩ませた高畑はひとつの答えにたどり着く。
――もしかして自分は、家出少女を匿ってるおじさんポジなのではないだろうか、と。
好かれているなどと、恥ずかしい勘違いを晒す前に気づいて本当に良かった。
彩元さんには何かトラウマでもあるに違いない。
彩元さんを助けているのは全て完全なる善意からの行動なのだが、彩元さんにはそうは見えなかったのだろう。
助けた見返りをいつ求めてくるのかと、神経を張りつめて伺っていたに違いない。
下心なしでも全然命救うし、ご飯与えるし、住処も用意するのたが、彩元さんはすでに対価を支払う気でいるのだ。
「あの、じゃあ一緒に探索行きませんか?それで討伐を代わりにやってくれたらすごく助かります」
高畑は形だけでも何かお礼をしてもらえば気が済むのかもしれないと、探索の同行を依頼した。
彩元さんの鋭い眼光が弱まる。
「ん?討伐?」
「はい。討伐に。あっやっぱりまだ傷が癒えてないですか?」
「いや傷はもう、ていうか起きた時には怪我してたのも忘れるくらい綺麗さっぱり」
彩元さんは怪訝な表情を浮かべている。
「あの……討伐って私にも人間を襲えって言ってます?」
「え?どうしてそうなるんですか?」
「だって貴方が魔物を討伐するなんて変ですよね?」
「魔物を討伐しないでどうするんですか」
「ん?」
「ん?」
お互いに顔を顰めて向かい合う。
「俺に襲われたくないなら味方の証明として人間を裏切れっていうことですよね?」
「なにそれどういうことなんですか?」
「じゃあ魔物の討伐に付き合えって言ってるんですか?」
「え、はい」
「おかしいじゃないですか。なんで魔物が魔物を襲うんですか!」
「――魔物が、魔物を?」
(俺たちはコミュ障のくせに言葉足らずすぎたのかもしれない)
一つ一つ最初からお互いの認識を擦り合わせる。
「……すみませんでした!!」
完璧な土下座を披露した彩元さんは微動だにせずそう繰り返す。
「あ、いや、その……大丈夫っす」
全然大丈夫ではない。
まさか自分がこのボス部屋のボスで魔物と思われていたなんて思いもしなかったし、あまつさえ殺されかけていたなんてあまりにも恐ろしい。
善意で財布を拾ったらスリ扱いされた時のようななんとも言えない気持ちになる。
恐ろしい人だ。
ちょっと前の甘酸っぱいドキドキを返して欲しい。
幸い高畑が恋愛方面の勘違いをしていたことは悟られていないので、なんとかやり過ごしたい。
あんな恥ずかしい自惚れ勘違いを悟られたら死ねる。
「じゃあ帰らないんじゃなくて、帰れなかったんですか?」
「はい。てっきりボスを討伐しないといけないと思ってました」
「ボスなら俺たち毎日食べてるじゃないですか」
2人で食べかけの皿へ視線を送る。
「毎日帰還ワープ湧いてます」
「はぁ、そうですか……」
二人の間に微妙な空気が流れ、居心地の悪い沈黙に包まれる。
このボス部屋を支配しているというのが紛らわしい行動だったのかもしれないが、いくらなんでも人間を魔物と思うほうがどうかしている。
人間だってボス部屋を占拠して乗っ取ることもある。
どれぐらいそうしていただろうか。
彩元さんがゆっくりと土下座から立ち上がる。
「あの、帰ります」
ワープまで送り届けると、彩元さんは再び土下座で謝り倒してきた。
周りの目がないにしても何故だか非難されているような気持ちになる。
「もう大丈夫ですから、立ってください」
高畑はワープに乗るように促す。
青白い光が彩元さんを包む。
「あ、あの!お世話になりました。色々ありがとうございました。本当にすみませんでした!」
何度も謝罪はもういいと言ってもやり続けるので、「じゃあお詫び代わりに新宿ダンジョンの300層を宣伝してください。それで大丈夫ですから」と丸め込む。
「あんまり人来ないんですよね」
彩元さん以外の人が来ていないことを誤魔化して笑う。
「それは宣伝したって解決しませんよ。そもそも300層にソロで住んでるのがおかしいんですから。こんな所ソロじゃ誰も来れません。言い訳じゃないですけど、だから私勘違いしたんです」
「え?」
どんどん薄れていく彩元さんは最後に「あ!お元気で!」と大きな声で言って消えていった。
ちょっと待ってくれ。
俺たちはまだ話し合いが必要かもしれない。
彩元さんが残していった疑問は解かれることなく宙に浮かんだまま大きな影を落とした。
勘違い終了!
正直書き終わってもヒロインなのかは分かりません笑
女の子は真鈴と椎名さんの2人で終わりかもしれません。




