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【書籍化&コミカライズ企画進行中】ダンジョンすみっこぐらし~実力無自覚系配信者を世間は必死で探し出す。早くダンジョンから出てきて!?~  作者: 夏目ナナセ
人が来たよ編

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人が増えるよ編スタートです!







「え!美味しい!同じ白丸の肉なのになんで?」

「……あ、私、職業『料理人』なので」


高畑と1人の女性が自宅で食卓を囲んでいる。

自宅とはもちろんダンジョン300層の自宅の事だ。


高畑にビクビクと脅えながらも料理を披露した彼女と脳天気な高畑の生活は少し前から始まった。



すみっコタウンに何故高畑以外の人がいるのか。

時は少し遡る――







綾元真鈴の職業は、料理人である。

職業といっても、一般的に言う労働のではない。

一般的に言う職業なら、学生になるだろう。


真鈴は東京都立探索者専門学校に通う1年生だ。

探索者専門学校とは、この世界にダンジョンが出来て、探索者という職業が生まれてから出来た、探索者を育成する専門学校。

2年制で、高校を卒業した後に入ることが出来る。

入学は誰でも出来るが卒業は難しい。

卒業した時点でDランク探索者として、2個上のランクからスタートができる為、職業に恵まれて探索者を目指す若者はここに集まった。



真鈴の場合は『料理人』なので、探索者向きかと言われるとそうではないと答えるのが無難だろう。

真鈴のスキルは、『料理』『食材鑑定』『炎耐性』『短刀術』の4つ。

『炎耐性』と『短刀術』があるので探索者としてやれないこともないが、正直戦闘職のそれと比べると大したことはない。


真鈴もその事は理解している。

だが、母親は探索者になることを望んで勝手にその環境を整えていった。

「真鈴の進路なんだけど、探索者いいと思わない?」

そう言ってきた母親の顔を一生忘れないだろう。


母は私の人生も母の人生だと曲解している――



母親は理想を人に押し付ける人間だ。

母が決めた筋書き通りに進まないと途端に不機嫌になる。

サンタクロースへお願いするプレゼント、ランドセルの色、習い事、服の趣味、部活動、受験する高校――

何もかも母の機嫌を伺いながら、母が怒らない方を選択してきた。


だから今回も母親の機嫌を取ることに慣れている真鈴は、逆らわなかった――いや、逆らう気力が既になかった。

真鈴が探索者を目指すと言わなければおそらく目を血走らせて発狂し、家を破壊し尽くしただろう。

そして、真鈴が親不孝者として叱責されるのだ。

母親の口癖は「真鈴のこと私が一番わかっているんだから」「ママが失敗しないように導いてあげてるのよ」「真鈴はなにも分かってないんだから」「真鈴はママを信じてたら大丈夫」だ。


真鈴が機嫌を伺いながら選択を修正すると、優しく微笑み頭を撫でる。

そして一時すると全ての選択を真鈴自身が望んだことだと記憶を捻じ曲げてしまうのだ。


「なんでピアノ嫌なの?真鈴がピアノ習うって言ったんじゃないの」

「吹奏楽部辞めるの?真鈴の好きなことママ全力で協力してきたよね?どうして投げ出すの?」


――自分からやりたいなんて1度も言ったことがない。

私が好きな洋服は花柄のワンピースではないし、好きな食べ物も母の作ったアップルパイではない。

好きな芸能人は母と同じ、ジニーズの相田くんではないし、好きな色だってピンクではない。




母親が真鈴の将来の夢を探索者にしてきたのは、探索者の地位は今や、医者や弁護士と並ぶものとなっているからだ。


全員が職業を得たといっても、使い物にならないのがほとんどで、母親は『市民』

4割の人が『市民』というなんのスキルもないハズレ職業。

3割の人が『料理人』や『美容師』などのダンジョン探索と関係ない職業。

2割の人が『鍛冶師』や『薬師』などのダンジョン探索関係の生産職業。

そして1割の人が『剣士』や『魔術師』といった、戦闘職業だ。

1割の中でもピンからキリまであり、ランキング上位者のような特殊職業は激レアだ。


4つもスキルがあり、その中の一つが戦えそうな『短刀術』の時点で母親が期待するのは仕方がないことだった。


真鈴が探索者となり、そこそこのランクに上がれば年収は何千万となり、女手一つで育てた恩を返して貰えると思っている母親の懐に入るのだから。




だがやはり短刀術だけでは無理がある。


「あーやーもーと~ダンジョン探索演習、またうちらと同じ班に入れたげる」

「え~美香超優しい~うちらに感謝しなよ綾元」


学友の須藤美香が、真鈴の返事を聞く前に班員を書いた紙を提出に行く。

誰も真鈴と組みたがらないのは、須藤のグループがいじめているからだというのに、恩着せがましくケラケラと笑いながら須藤は肩を叩いた。


いじめる理由は真鈴の異常なほどに従順な性格もあるだろうが、単純に弱いからだ。

探索者専門学校という場所は、原始時代に戻ったかのように力こそ全てだった。

突然得た己の能力におごり、全能感に呑まれた若者達は持て余した力を真鈴をいたぶることに使った。





ダンジョン探索演習当日。

真鈴の班、総員6名は教師に指示された二層の探索をしていた。


探索者専門学校では、探索のノウハウを叩き込まれる。

そしてそれを実践するために実際にダンジョンに潜るのだ。

今回の演習も3度目になり、生徒達も慣れている。

配信も回しており、教師は見回りしながら視聴ている。

十分に安全マージンもとっている。



はずだった――



「まじ楽勝」

「それな、あとゴブリン三体倒せばいいんでしょ?」

「なんでこんなに簡単なんだろ、あっごめん!綾元には難しいよね!」

「あ~うちらが楽勝でも、やっぱり一番下の実力に合わせないと死者でちゃうもんね~」

「綾元次、ラストアタック譲ろうか?プッ」


「い、いえ……」


真鈴はこんなに馬鹿にされても、相手が激昂しないように、一番望む応対をし続けてしまう。

ここは下を向いて震えておくのが最善だ。

下手に逆らってもいいことはない。

ここでまかり間違って、「ラストアタックくれるの!ありがとう!」なんて言えばボコボコにされるのが目に見えている。

ダンジョン内でした怪我は全て魔物のせいになる。

真鈴は配信ドローンを見上げる。

毎回確実に映っているはずだが、あれが須藤達のいじめを咎めたことは一度もなかった。




「もうちょい倒してプラス評価狙う?」

「だね~」


もう、課題の五体を討伐し終えたというのに、まだまだ戻る気配のない須藤達。

真鈴は戻るべきだと思ったが、この班で真鈴の意見が通るはずもなく口を噤む。


先人たちがマッピングし終えた地図を見ながら、キャアキャアと遠足気分ではしゃぐ様子には緊張感の欠片もなかった。




「ハッ!」


須藤が槍で一突きすると消えていくゴブリン。


「ナーイス美香!」


もう集合時間が迫っており、そろそろ折り返さないと間に合わない。

それをわかっているのか、いないのか、須藤達はまだ戻る気配がなかった。


真鈴はしょうがなく提案する。

「あの……今から戻れば集合時間に丁度いいかも」


正確には今から戻らないと間に合わないのだが、真鈴はできる限り柔らかく伝える。

だが、須藤達はこれ幸いとばかりに真鈴を罵りだす。


「んな事分かってるよ」

「綾元さぁ~今日何もかもおんぶに抱っこで恥ずかしくないわけ?」

「荷物持ち楽しい?」


須藤は、俯いていた真鈴の顔を覗き込むように首を傾げて無理やり目を合わせる。

真鈴は悲痛な面持ちだったが、諦めに近い表情だ。

苦痛に涙を浮かべて耐えるような、須藤の期待した表情じゃなかったのだろうか、須藤の手が真鈴の肩を押す。


「ちょっとそこ立ってろよ。うちのスキル見てよ。レベル上がったかも。炎のスキルだからいけるっしょ綾元」


「えぇ~美香の『炎舞不知火』に綾元の『炎耐性』って耐えられるのぉ~?」


槍の先が赤く光るのが見えて、ハッと顔を上げ息を飲む。


「……っまって!……それは耐えられないから、お願いやめて……」


ようやく須藤の望む怯えが見えたからか、満足気に笑いながら、真鈴のすぐ後ろの壁にクルクルと舞うように槍を回してスキルを放った。

真鈴の体スレスレで水平に広がる炎の玉が爆ぜる。


「アハハ!当てるわけないじゃん!流石に綾元の炎耐性をそんなに高評価してないって!」

「自意識過剰かよ!ウケる!」



固く目を閉じ、恐怖に耐えている真鈴のすぐ後ろでガコンと、何かが外れる音がした。

僅かな振動の後、ひんやりとした冷気が真鈴の背中を撫でる。

真鈴はうっすらと目を開ける。

須藤達は、真鈴のすぐ後ろの壁を見たまま口をぽかんと開けて固まっていた。

我に返った須藤の取り巻きが地図を何度も見て、一言つぶやく。


「隠し通路……?」


真鈴も後ろを振り返る。


壁だったはずのそこには、暗く細長い1本の通路ができていた。


「ラッキー!!行こ!」

「え!絶対宝箱あんじゃん!」


須藤達は次々と通路へ足を踏み入れる。

例え二層だとしても、真鈴の実力では置いていかれたらたまらないと思い慌てて引き止めた。


「え?ちょ……あの!戻らないと!」


隠し通路はまだ未探索。

何があるか、どんな魔物がでるのかも分からない。

探索者の見習いのような真鈴達だけで行くのは危険だ。

それに嫌な予感もする。


「あんたバカァ?今戻ったらここは他の人に先に探索されんのよ?」

「こんなチャンスみすみす逃すわけないじゃん」

「二層だし大丈夫だよ!ビビりすぎ!」



真鈴の意見はやはり通らない。

遠くなっていく背中を見失わぬよう、真鈴も通路を走り出した。





カチッ



嫌な予感は現実となる。

須藤が踏んだトラップによって手に負えないほどの魔物が現れる。


魔物の召喚トラップ――


「キャー!!何こいつら!」

「ゴブリンだけじゃない、ゴブリンソルジャー、ゴブリンジェネラルまで!?」

「か、勝てない……逃げるよ!」


全員が通路の出口へ向かって走る。

奥の方まで調子に乗って進んでいたので、周りには助けを呼べる人がいない。

このままでは追いつかれる。


誰もがそう思った時、須藤が鬼のような形相で真鈴を見た。

槍の矛先は魔物ではなく真鈴へ向いている。


「な、何を……!?」

「全員で逃げても追いつかれるから仕方ないのよ!」


「キャ!」

真鈴は須藤の槍に薙ぎ払われ、ゴブリン達への元へ滑る。


「ちょ!助けて!」


真鈴の声に耳を傾けるものはいない。

皆既に駆け出しておりどんどん離れていく。


真鈴は傷ついた体を必死に起す。

もうゴブリンとの距離はなく、仕方なしに対峙することとなった。


震える手で短刀を握りしめる。

一体目と対峙しているとすぐさま横から剣撃が入る。

斜め前からは棍棒で殴られた。


「うっ!カハッ……!」


切られた脇腹を抑える。

指の隙間から血が溢れ出し地面へ滴る。


(うそ……血がこんなに……)


真鈴の短刀術スキルではとても太刀打ちできない。

ほぼ死を覚悟した時、視界の右端に移る青い光が目に入る。


「転移トラップ!?」


青い光の魔法陣は転移トラップ。

授業で習ったばかりで記憶に新しい。

飛ぶ場所は完全ランダム。

上の階層に飛ぶこともあれば、はるか下層に飛ばされることもある。

見つけたら報告して絶対に入らないこと、と教わった。


真鈴はゴクリと喉を鳴らす。


(今この状況よりもマシな場所に行けたら!!例え下層に飛んでもまだ人がいるところなら!)


悩む時間は無い。

真鈴はヘッドスライディングをするかのように魔法陣の上へ滑り込んだ。











まぁテンプレです。


また掘り下げすぎちゃったかな笑


面白いと思ったら、ブクマと評価よろしくお願いいたします(>人<;)

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― 新着の感想 ―
冒険者は動画撮影を義務付けしてるんやないの? こんな実習ならなおさら安全に行かすだろうし。 なんか、キャラ付けの掘り下げが変なところで なんで?って、なるなぁ。
哀しい…虐められた分、幸せになって…虐めてくる親や知り合いともうかかわらずに、幸せになって、涙
>また掘り下げすぎちゃったかな笑 2Fから300Fへは掘り下げ過ぎだと思うのw
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