こうして小鳥遊 空はやりなおす
これは小鳥遊 空がぼっちを脱却し、リア充なるべく奮闘するやり直しの物語である。
『ぼっち』という言葉ほど、哀しい言葉は無いと俺は思う。なぜなら、その『ぼっち』となる人間たちは別になりたくてなっているわけでは無いからだ。
もちろんこの俺、小鳥遊 空もその1人である。小学校での生活と中学校での今までの生活を見事に友達0人で過ごし、結局部活にも入れず仕舞いだった。体育のペア組みは地獄だし、宿泊研修や修学旅行の班わけ、部屋決めに至ってはクラスメイトが俺を押し付けあっている姿に思わず涙してしまった。
だからこそ、俺は決意した。やりなおそうと。恐らく、今のまま地元の高校への進学すれば周囲のクラスメイトはあまり変わらないため、俺はまたぼっちとなってしまうだろう。ならば……。
「札幌の高校へ進学して友達作ってリア充になる!!」
中学3年生に進級したその日、俺は自分の部屋で高らかに宣言した。
その日からの俺は、自らの学生生活をやりなおすための第一段階として、受験の日まで全力で勉強に取り組んだ。幸いにも、ぼっちであったが故に勉強はそれなりに取り組んでいたため、札幌の高校には無事合格。俺は晴れて、田舎の中学生から、札幌の高校に通う高校生にランクアップしたのである。
これで俺も、友人に囲まれたリア充の仲間入りとなる…はずだった。だがしかし、入学式から約1ヶ月、俺は結局ぼっちを貫いていた。もうすでにクラス内ではグループが完全に出来上がっており、俺の入る余地など皆無であった。
てか、小中の9年間を友人0人で、さらに高校生活3年間も友人0人ならば、それはもはや快挙なのではなかろうか。もしも、そういうギネス記録があるなら俺はぶっちぎりで登録されるだろう。自分で言うのも恥ずかしいし、哀しいが。
「でも本当に、なんでできねぇんだろうなぁ…」
教室の自席で、俺は小声でそう呟いた。
そして、俺は持ってきていたライトノベルを手に取り、休み時間の暇つぶしを兼ねて読み始める。読んでいる作品は、所謂ラブコメであり、俺のようにぼっちな主人公がなんやかんやあって可愛い美少女たちと友達になって、なんなら彼女まで作ってしまう王道作品である。
俺もこうなれたらなぁ…とは思うが、人生そう上手くはいかない。これくらい上手くいくなら、今頃俺は苦労していないだろう。
そんな変なことを考えていると、後ろの方から何か気配を感じる。振り返ると、そこにはクラスの1番目立つギャルグループの中心人物、柊 真白がいた。柊は、道外から来た入学生であり、白い肌に少し染めた茶髪が良く似合う学校一と言っても過言では無い超絶美人のいけ好かない女である。
俺も同じ札幌市外出身なのになんでこいつは人気者なんだ。やっぱり顔か、顔なのか。
「あ、それ…」
すると、柊はそう小さく呟いた。そして、柊の視線は俺のラノベの挿絵のページに向いていた。
「あ!?へへ…」
俺は謎の恥ずかしさから、慌ててラノベを隠した。なんで隠したんだよ俺、別に違法なもの読んでたわけでも無いだろうが。
すると、そんな俺をゴミのような目で睨みつけながら、柊はその場を立ち去って行った。
「なんだったんだ…ほんとなんだったんだ…」
俺は困惑のあまり、自然とそう口にしていた。
だがしかし、さっき目に映った柊はなにか言いたげなように見えたのだが、それは気のせいだったのだろうか。
考えても無駄かもしれない。そう考えた俺は、しまったラノベを再度手に取り、静かにまた読み始めた。
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