《第六話 一緒に行こうよ》
「日向にはもうバレてるだろ?日向にだけこのメモをこっそり渡せば良いんじゃないか?」
俺は先ほど計測したスヤサキのスリーサイズが書かれたメモを差し出した。
「う~ん、それは難しいかな…」
腕を組んで、首を傾げて考えるスヤサキ。日向に会うのをしぶってる様子だ。
「それならさ、日向の連絡先知らないのか?」
「う〜ん、ごめん。連絡先は知らないかな」
俺は手っ取り早い方法を提案してみたが、なぜか背中を向けて応えるスヤサキ。ぷるんとお尻が揺れた。何か隠してるのか?
「そうなんだ。意外だな、仲良さそうだったのに」
「うん、仲は良いよ。大学内であったらお話するくらいにね。でも通ってるコースも違うから連絡先を知るまではいってないかな」
スヤサキの話を聞きつつ、俺の目線はスヤサキのお尻に釘付けだ。
「そうか。まぁそういうこともあるか」
そうだよな。俺もスヤサキとは2年になってからの知り合いだ。知り合ったのは大学の外でだけど。
「うん、そうだよ。あ!そうだ。ボクの代わりにサクラコちゃんにこのメモを渡してもらえないかな?」
スヤサキはクルンとこちらを向いた。ブルンと胸が揺れた。
「ええ!?なんでだよ、一緒に行こうよ」
俺は一人で行くのはきついと思っている。だからスヤサキには一緒に来てほしいのだ。
「真神くん、ボクは大学では女装できないんだよ。だから仕方ないでしょ」
「それはわかってる。でもなぁ〜、一人で日向と会うのはさぁ~、気まずいしさぁ〜、一緒に来てほしいなぁ〜」
「どうしてサクラコちゃんに会うのを嫌がってるのさ?」
「それは俺と日向が犬猿の仲だからだ」
俺は腕を組んで言った。 俺は不安なのだ。もう一度、あの変わり果てた日向に会うのに。
「だからこの前会ったとき、頑なにサクラコちゃん本人だと認めなかったんだね」
「そうだ」
「でも綺麗になったよねサクラコちゃん。ボクは、前の姿も可愛くて好きだったかな」
「前の日向は妖怪のようだったよ」
「もう!女の子に妖怪って言ったらダメかな、真神くん」
プクッと頬膨らまして怒るスヤサキ。
「だってあの頃は妖怪に見えたんだもん」
「あの頃っていつ?」
「高校生」
「え!?高校生で、女の子に妖怪なんて言ってたの?」
「なんだよ?良いだろ別に、妖怪に見えてたんだから」
「また妖怪ってぇ〜!女の子は誰でもお姫様なんだからね!」
「うぇ~日向も〜?」
「もちろんだよ!サクラコちゃんも女の子なんだから!真神くんも見たでしょ?あの素敵な大人の女性になったサクラコちゃんを!」
「……認めたくないものだな」
認めたくないが、素敵なお姉さんになってた。
「認めなよ、サクラコちゃんは美人。真神くんもお店で会ったサクラコちゃんにうっとりしてたじゃないの」
「…俺も…若かったな…」
あのお姉さんが日向桜子だと言う事実を知る前に戻りたい。
「ハァ〜先週のことだよ…ほら、駄々をこねてないでルーナのマネージャーなんだから」
やめろ。バカを見るような目で見るな。ジト目を向けるな。
「うっ…それを言われると…やるしかないのか」
「そうだよ。キミはマネージャーなんだからやるしかないんだよ」
「でもなぁ〜」
「往生際が悪いかな、真神くん?男でしょ?それに今回の件で、
犬猿の仲だったサクラコちゃんと仲良くなれるかもしれないよ?」
スヤサキのその言葉に俺の心が揺れるのがわかった。俺はどこかで日向に謝りたいと思っているのだ。
青臭くて、人の優しさに、日向の優しさに気づかなかったあの頃の俺の振る舞いを。
「うーん………わかった。一人で行ってみる」
「うん、ありがとう!真神くん、しゃがんでしゃがんで」
「ん?こうか?」
俺はスヤサキに言われた通りその場でしゃがんだ。
「エヘヘ、いい子いい子」
スヤサキは俺の頭を笑顔で撫でた。
子供扱いされたが、目の前には素晴らしい景色が広がっているのでOKです!乳袋最高!
「それよりスヤサキ?」
「何かな?」
「服着替えないのか?」
「あ!そうだね」
スヤサキの胸がポヨンと揺れた。
「このままでも良いけど、風邪引いちゃうかも」
「そのままでも俺は一向に構わん!」
「エッチィ!」
スヤサキは呆れて、着替えに言ってしまった。
「じゃあ、明日これを持って日向に合えば良いんだな?」
「あ!ちょっと待って!サクラコちゃんに言って欲しいことがあるかな」
着替えの途中なのか、スヤサキは顔だけ出してきた。
「なんだよ、言ってほしいことって?」
「ボクは顔を見せるわけにはいかないでしょ?だからルーナのマスクをつけて出たいんだ」
「ああ、あのマスクね」
「そう、ルーナのマスクはこのデザインだから、水着の配色はこのマスクに合う色が良いって言って欲しいかな」
「おう、わかったよ。そう言っとく」
ルーナのマスクに合う配色にっと
俺はいつもの手帳にメモした。
「あと、あんまり露出の激しいのは嫌だよって言っておいて」
「おう、それは残念だな」
「もう!真神くんのエッチィ!」
スヤサキは再び顔だけを出して、口をイーーッ!としてから部屋の扉閉めた。
露出の激しいのらNGっと
これもいつもの手帳にメモした。




