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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第一章 陽太、昔馴染みと再会する》
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《第十二話 これもマネージャーの仕事か》

スヤサキは自分から配信活動のことを喋ってしまった。どうしてだスヤサキ!?配信活動まで教えてしまったら、今までひた隠しにしていた女装趣味があれよあれよと他人にバレるんだぞ。どうしてなんだ?こんなにもあっさりバラしてしまうなんて…やっぱりあれか?このお姉さんが日向桜子だからか?


「なんでそこまで言うんだ、スヤサキ?秘密にしときたかったんじゃないのか?」

「サクラコちゃんに女装がバレたんなら仕方ないよ。ボクたちお友達だし、サクラコちゃんに隠し事してるのも辛かったし」

スヤサキは日向に向き直り、

「ごめんねサクラコちゃん。今まで黙っていて」

頭を下げた。

「別に気にしてないけど、配信活動っていったい何をしているのよ、ヨゾラ?」

日向はコーヒーにミルクと砂糖を入れて、かき混ぜながら聞いた。日向は砂糖を3本入れた。甘党なんだな、日向。

「実はね、ボクには…叶えたい夢があるんだ、サクラコちゃん」

スヤサキもコーヒーに砂糖3本入れた。こいつも甘党かよ…まぁ解釈一致ではあるな。


「叶えたい夢?なんなの?その叶えたい夢って?」

日向はコーヒーを飲む手を止め、興味を示した。

立ち上る湯気を見つめてしばらく黙ったあとスヤサキは言った。

「……ボク…アイドルになりたいんだ…」


「アイドル?アイドルってテレビとかで観る、歌って踊る。あのアイドル?」

「そう。アイドルといってもバーチャルアイドルの方をやらせてもらってるよ」


「バーチャルアイドル?なにそれ?」

日向はバーチャルアイドルを知らないようだ。この時代にバーチャルアイドルを知らないとは、なんとも古風なやつだ。日向桜子、昔はギャルだった女。そういう最先端なことはギャルとして知って当然だと思っていた。


「バーチャルアイドルっていうのはね。アニメの姿で配信活動をしている人たちのことだよ」

「ア、アニメの姿でって?どういうことよ?」

「ちょっと待って。実際に観た方がはやいよ」

スヤサキは自前のタブレットを取り出し、日向の隣の席に座り直した。

「これがバーチャルアイドルだよ」


スヤサキのタブレット画面からポップなBGMが流れてきた。

数秒のアニメーションの後、スヤサキがバーチャルアイドルとして活躍する時に使用しているキャラクター「月見夜ルーナ」が現れた。


「我は月の姫様からの命により、この地に舞い降りた可愛い猫!月見夜ルーナ!人間どもよ、今宵も月を拝むのだ!」

一拍おいた後、画面上のルーナはオープニングの挨拶を済ませて、喋り始めた。

「いや~キミたち今日は満月だよ!お外見てみて綺麗だよ〜」


「こ、これが…アンタなの?ヨゾラ?」

日向は初めてバーチャルアイドルの映像を見て驚いていた。

「う、うん、そうだよ…どうかな?」

「え、ええアニメのことはよくわからないけど可愛いと思うわ。声なんて女の子そのものじゃない…」

画面上のルーナはとても可愛らしい声をしている。日向の言う通り、まるで女の子だ。こいつ蝶ネクタイ型変◯機を持っているのか?


「えへへ、ありがとう〜」

褒められて頭をかくスヤサキ。

「今も少し声が女の子みたいだけど、それが本当の声なの?」

「う、うん。実はね。声が高いとバカにされるかもしれないから、普段は低くしているんだ」

「そんなことないと思うわよ。可愛くていいじゃない。無理して低い声を出す必要はないわよ」

「あ、ありがとう…」

スヤサキは照れくさそうだが、喜んでいる。

「今度からは大学でもその声でお喋りしましょ、ヨゾラ?」

「う、うん、わかったかな。でも…笑われないかな。男がこんな声だと」

「心配ないわよ。ヨゾラをいじめるやつはアタシがとっちめてやるから、安心して、その声で話しなさい」

「でもやっぱり恥ずかしいから、サクラコちゃんの前だけね」

「まぁ、それでも良いわ」


「ところでサクラコちゃん、ヒマワリちゃんとナデシコちゃんにも言うの?」

「当たり前じゃない、あの子達はアタシの親友よ。隠し事なんてできないわ」

「そ、それはだめだよ。女の子に体を触られるのは恥ずかしいよ…」

「あらぁ、初なところもあるのね、ヨゾラ。可愛いわね、ねぇ真神?」

「なんで俺にふるんだよ」


「そうだ。良いこと思いついたわ。ヨゾラが女の子に触られるのを恥ずかしがるなら、真神、アンタがヨゾラのスリーサイズ図りなさいよ」

「はぁ?なんでだよ」

「な!?なにを言い出すの!?サクラコちゃん?」

俺とスヤサキは驚いた。しかしリアクションの大きさは違った。ただ面倒くさいと思っただけの俺と違って、スヤサキはかなり驚いている。顔も真っ赤だ。


「さっきの話、聞いてなかったの。ヨゾラは女の子に触られると恥ずかしくなっちゃう男の子なんだから、同じ男のアンタが図るのがベストじゃない?アンタたち友達なんでしょ?」

俺はそう言われて、ハッとする。

「めんどくさいけど、これもマネージャーの仕事か。わかった!俺が図ろう。早速図ってみるか、スヤサキ?」

俺は自分がルーナのマネージャーだということを思い出し、スヤサキのスリーサイズを図ることにした。


「ちょ!?ちょっと真神くんまで何を言ってるのかな!?」

少し涙目になって慌てるスヤサキ。ちょっといじめたくなる可愛さ。

「別に構わないだろう、男同士だ。ちゃちゃっとやっちまおう」

「良いわね。ならカメリアでやりましょうよ。椿さんに連絡しとくわ」


「ぜっっっっっっっっっっったいにぃいいいいいいいい、嫌だからねぇぇぇぇぇ!!!!!」


今までスヤサキから聞いたことないほどの大声が飛び出た。お店中が静まり返り俺達の席に注目が集まる。店員さんがこちらを睨んでいる。

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