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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第一章 陽太、昔馴染みと再会する》
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《第八話 学生証》 

「そういう関係…?」俺はなんのことかわからず聞き返した。

このお姉さんは、一体どういう関係を想像されているのか?

「ケーキをあ~んして食べ合うラブラブな関係よ」

俺とスヤサキがケーキをあ~んしているのを見られていた。恥ずっ!お姉さんに全てを見られていた。恥ずっ!!ラブラブ恥ずっ!

お姉さんはギロッと俺を見ている。美人に睨まれるのも堪らないな。


「ね、ねぇアンタって真神陽太なんだよね?」

「ハイ、そうです。私が真神陽太です」

「アタシが誰だか気付かないの?」

なんですと?こんな美人を見たら忘れるはずがないのに。

「はぁ〜まぁ別にいいわ。それよりもっと気になるのはこっち」

お姉さんはため息をついた。少し残念そうだ。そのかたわらで、気づかれないように逃げようとしていたのは女装大好きスヤサキ君を睨んだ。

「待ちなさいヨゾラ?」

「ふぇ!」ビクッ!!

「どこに行こうというのかね、アタシのことわかってるわよねヨゾラ?」

大佐だ。大佐が出てきたぞ。天空の城の大佐だ。

そんなことより、なぜお姉さんがスヤサキのこと知ってるんだ?ヨゾラって下の名前で呼んでるぞ。体がジワジワと汗をかいてきた。このお姉さんは何者なんだ?女装しているのにスヤサキだと気づいた。女装スヤサキを見抜いたのはマスター以外あったことがない。

いや待てよ。あれは男のスヤサキというより、ライブイベントを行った「月見夜つきみやルーナ」と同一人物だと見抜いただけで、スヤサキが女装している男だとはまだ気づいてはいない。

なのにこの人は、今のスヤサキが男だと気づいている風である。


「ボ、ボボボ、ボクはスススス、スヤサキ君じゃないかな。ひ、人違いかな」

尋常じゃなく震えるスヤサキ。目がクロールしている。

「ふ~ん、しらを切るつもりなのね。だったらこの財布は誰の物なのかな?」

お姉さんの手にあるのは白黒柄のラウンドファスナーの財布。

ぎょっとするスヤサキ。自分のバックを確認して、真っ青になる。

「ボ、ボクの財布、一体どこで?ハッ!」

「今、ボクの財布って言ったわね。この財布、ウチのお店の試着室に落ちてたの。あなたたち二人が仲良く入っていた試着室の中に。中で何をしていたのか知らないけど」

なんか、お姉さんの声色がだんだんと怖くなってきた。そして、1つのカードを見せてきた。俺達がよーく見覚えのある大学の学生証だ。

その学生証には「須夜崎スヤサキ 夜空ヨゾラ」としっかり書かれていた。


「なんでこんなことに…」

俺の隣に座って頭を抱えているのはスヤサキ。そして向かいに座っているのは古着屋のお姉さん。この古着屋のお姉さんはどうやらスヤサキと知り合いらしいのだが、なぜか俺の事も知っている。そして信じられないことにこの美人さんはあの日向桜子ヒナタ サクラコだと、隣で失意のどん底にいるスヤサキは言うのだ。


「アンタがヨゾラってことはわかったわ。でもなんで真神と一緒にいるの?」

「そ、それは…」スヤサキは両手を両膝につきテーブルを見つめる。

「ちょ、ちょっと待ってくださいお姉さん。あなたはいったい誰なんですか?」

「アタシ?アタシは真神?アンタがよぉ〜く知ってる女よ」

「俺が…知っている女…」


「日向ぁ〜桜子ちゃんでぇ〜す」


美人のお姉さんはメガネを外しながらマジマジと俺の顔を見てウィンクをした。

ドキッ!恋する五秒前。だったら良かったのだが、「日向ぁ〜桜子ちゃんでぇ〜す」の一言により、ヒュン!と玉が縮み上がるのを感じた。俺も失意のどん底に落とされた。


「あ、あの…サクラコちゃん…ボクの財布と学生証を返してほしいかな…」

「その前にまずは、アンタのその格好から、説明してもらいたいわ。真神とデートしてることについてもね」

「デートじゃありません。俺はこのスヤサキが新しい服が欲しいって言うから、友達として付き合ってるだけだで、決してデートではないです」

「怪しいわね」

疑いの目を向けるお姉さん。本当にデートじゃないんですが…


「ハハハ、どこがです?友達の買い物に付き合うのは当たり前のことで、全然怪しくないですよ」

「ケーキの食べ合いっ子は怪しいわよ」


グサッ!ぐうの音も出ないとはこのことだ。あの恥ずかしいところを一部始終見られていたのか。なんであ~んの安請け合いなんてしちゃったんだろう。数分前の自分に会いに行けたら、殴ってでもやめさせてあげたい。そんな気持ちだ。

Dえもん、早く俺の机の引き出しから顔を見せておくれ。


「サクラコちゃん、ボクたちは本当にただのお友達だよ。安心してほしいかな」

「は、はぁ?!何が安心してほしいなの?別に心配なんかしてないし、こいつのことなんてどうでもいいし、アタシのこと覚えていないやつなんて気にならないし、ジョーダン言わないでよね」

パタパタと手で扇ぎながら顔に風を送っている。エアコンの効きが悪いのかな?

汗をかいているぞ。


「なぁ待ってくれ。あなたがあの日向桜子として話が進んでいますが、まだ確定ではありませんよね?」

「はぁ?アタシは日向よ。なんで疑うのよ?」

「真神くん往生際が悪いよ。彼女は本当にサクラコちゃんだよ」スヤサキは呆れた顔で言った。

「うるさい!まだ可能性は残っている!」

俺は往生際が悪い人間だった。信じたくないのだ。

「はぁ~じゃあ、これを見てよ」


お姉さんから出されたのはこれもまた学生証。そこには「日向桜子」と書かれていた。その学生証に写っているのは確かに俺の知ってる日向だった。しかし写真に写っている顔が違う気がする。

「お姉さん、なんで日向の学生証を…」

「だから、アタシがその日向桜子ちゃんなのよ。ちょっとイメチェンしただけよ…」

プイッとそっぽを向いて、恥ずかしそうにするお姉さん。

訳がわからなくなった。目の前にいるお姉さんの顔とお姉さんが見せてくる学生証に映る顔をは別人だ。

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