《第五話 お姉さん、恋人はいますか?》
「お姉さんは…誰ですか?」
「やっぱり!アンタ!真神!?真神陽太でしょ!?」
寝っ転がってる俺に指差し驚く店員さん。
「そうですけど…お姉さんはいったい…誰?」
俺は起き上がり、山2つに隠れて見えなかった店員さんの顔を見てみた。
そこには顔を真っ赤に染めているウェリントンメガネをかけた超絶美人が立っていた。
長くて綺麗な髪は、春に咲く桜のような淡いピンク色をしている。
彼女の大変大きな胸は、白い無地のTシャツに立派な双子山を築いている。
白い無地のTシャツから透けて見えるピンク色の下着も素敵だ。下にはタイトなロングスカートを履いて、薄っすらと見えるその美脚のラインが素晴らしい。程よくムッチリしていて、お尻も程よく大きい。こんな美人見たことがない!しかもメガネっ娘!俺は三度の飯よりメガネっ娘が好き〜♫
「お姉さん、とても綺麗だ」
「はぁ!?」シュボッと顔を発火させるお姉さん。カワイイ。
「お姉さん、恋人はいますか?」
「え!?何いきなり」あたふたと焦り始めるお姉さん。キュート。
「ちょっと何言ってるのかなぁ!?真神くん!」少しイラつきをあらわにしてスヤサキ言った。
「こ、恋人って、その人がアンタの恋人じゃないの!?」
綺麗なお姉さんは、隣りにいるスヤサキを指さして言った。
「ええ?!ボ、ボクが真神くんの…恋人…」今度は戸惑いながらスヤサキは言った。なぜ、両手を頬にあて顔を染める?俺達は恋人同士ではないだろ!ちゃんと否定しろ。
「いえ、こいつとは断じて恋人関係ではありませんよ、お姉さん」
俺はいつもより三倍良い声でお姉さんに言った。
「そ、そうなの?じゃ、じゃあ今付き合ってる人とかはいないの?」
「ええ、もちろん。絶賛恋人募集中です」
「ふ、ふ〜んそうなんだ〜へ〜恋人いないんだ〜」
綺麗なお姉さんはくるりと背中を向け、なんだか嬉しそう離れていった。
「ねぇ真神くん…サクラコちゃんがいない今のうちこの店をでよう…」
「え!?店を出るって服はどうするんだよ?そのTシャツとワンピース欲しいんじゃないのか?」
あと、あのお姉さんの連絡先を知りたい。
「そうだけど、今回は諦めるよ」
スヤサキは俺の手を強く引き、逃げ出すようにお店を出た。
さっきまでお姉さんが対応していた男もいつの間にか店を出ていた。
俺はお姉さんの連絡先をゲット出来なかった。凄い美人だったな。
「あ、あれ?あの二人もういない…帰っちゃった?」
我に返ったサクラコは試着室の前に戻ってみたが、そこはもぬけの殻。
二人が入っていた試着室の中も誰もいない。
「あれ?なにか落ちてる…財布?」
古着屋「カメリア」を出て、吉祥寺駅付近まで歩いてきた。
「ここまで来たら大丈夫かな…はぁ〜心臓がバクバクだよ〜喉乾いた、どこかカフェにでも入ろうよ、真神くん」
「なんでさっきの店出たんだよ?」
俺は不機嫌になっていた。あの眼鏡美人ともっとお話していたかったからだ。
「実は…同じ大学の女の子がいて…今、女装してるから…」
「ああ、そういうことか…」
スヤサキの店を出た理由を聞き、それは仕方ないと納得した。
「ん?同じ大学?じゃあ俺も同じじゃないか?誰なんだいったい?」
「サクラコちゃん…あの女性店員さんだよ」
「えっ!?あんな美人、大学で見たことがないぞ。誰なんだあの美人は?教えてくれスヤサキ」
「え?会ったことないかな?サクラコちゃん。日向桜子ファッション科の子だからなかなか会わないのかな?」
ドゴォォォォォォォォォォォン!
俺の頭に衝撃が走った。青天の霹靂というものだ。
一年通った大学だが、あんな美女、一度もあったことがないぞ。しかもあの日向桜子?
「はぁ〜驚いたなぁ〜顔を間近に見られたらヤバかったよ。バレてないと良いんだけど。はぁ〜とにかくどこかで涼まない?」
「あ、ああ…そうしよう…」
一人汗をかいてるスヤサキはどこか涼しい場所に行きたいようだ。
衝撃的な真実を知ったが、これはきっと暑さによる幻聴だ。
スヤサキの言う通り、涼しい場所に行こう。あの美人が、あの日向桜子なわけない!
カランコロン。
俺達は吉祥寺駅付近にあったカフェに入った。
「わぁ〜涼しい〜生き返るよ〜」
スヤサキはTシャツの襟元を引っ張り、もう片方の手でパタパタと風を仰いで首元に風を送っている。
「おい、あんまり襟元を引っ張るなよ」
「え〜どうして〜?顔赤いよ?」
Tシャツの襟元から覗く胸の谷間が凄まじい色気を出している。
ひと粒の汗が胸の谷間にツーっと入って行った。俺はその汗になりたい。そんな邪な気持ちになっていた。
よぉ〜く考えろ陽太!相手はスヤサキだ。あれは本物ではなく、偽の乳なんだ。フェイクバストだ。
「どうしてもだよ。とりあえずアイスコーヒー頼むか?」
「うんそうだね」
スヤサキに席確保を任せて、俺はレジでアイスコーヒーを二つ頼んだ。
「ミルクとガムシロ二つで良かったか?」
「う〜ん、ありがとう」
「で、でで、な、なんであの美女が日向だって嘘をつくんだスヤサキ?」
俺は気になっていたサクラコちゃんのことを聞いた。ちょっと声が震えていた
「ふぇ?…嘘じゃないよ、サクラコちゃんだよ」
ミルクとガムシロ二つ入れたアイスコーヒーを、カラカラとゆっくりかき混ぜるスヤサキはキョトンして手を止めた。
またぁ~こいつはぁ〜そんなわけないだろう?あり得ないだろ〜?
日向桜子と言ったら俺の通っていた高校のギャル軍団のリーダー格の女じゃないか。髪は染めた金髪で、褐色肌のバキバキギャルメイクの女じゃないか。
「それが嘘だと言っているんだ!あんな清楚で、耳心地の良い声色で、立派な山二つをお持ちになった、美しくて綺麗なお姉さんが、あの日向桜子なわけないだろう!」
絶対そうなのだ!これは揺るぎない事実なのだ!




