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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第四章 陽太、兎姫(うさぎひめ)からお菓子をもらう》
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《第十七話 あの味を思い出して…母の日》

「お、お母様!いつから!?いえ、最初からずっとお祖母様に変装していたのですか?」

「ええ、そうよ。あなた全然気づかないんですもの」

「ハッ!?もしかしてウェンズデー、あなたは知っていましたの?」

「申し訳ありません、お嬢様。奥様のご命令でありましたので」深々と頭を下げるウェンズデーさん。

それについで他のメイドさんや執事も頭を下げた。

これは西園寺以外のお屋敷関係者は全員、理事長の中身が西園寺のお母様だってことを知っていたようだ。


「「え!?奥様!?」」

ランさんとリンドウさんは同時に驚いてる。

この二人も知らなかったのか。

「うわ!凄いね。理事長からあんな若くて、綺麗な人が出てきたよ。しかもミトちゃんのお母さんだって」

スヤサキは、俺の体の後ろに隠れて顔だけだし、覗くようににして西園寺のお母様を見ていた。

「なんで隠れるんだよ」と聞くと、

「ごめん、急に顔の皮膚を剥いだからびっくりしちゃって」と相変わらずビビリなやつだ。


「うううぅ!!!不覚ですわ。お母様の変装に気づかないなんて」

西園寺は、勝負に負けた時よりも悔しい顔をしている。

「さ、西園寺。そちらの方は?」

もう答えは知っているが、一応西園寺に誰なのかを聞いてみた。お母さんなんでしょ?

「え、ええ。申し訳ありません。ご紹介が遅れましたわ。こちらはワタクシの母、西園寺寅子さいおんじ トラコですわ」

「は、初めまして西園寺さんと同じ大学に通う真神陽太です」

「初めまして同じく須夜崎夜空です」

俺の挨拶に続いてスヤサキも挨拶をした。


「ええ、初めまして。ミトの母、西園寺寅子です。以後お見知りおきを」

西園寺のお母さんは、初めは眼光鋭い顔つきだったが、ニコッと笑顔で会釈を返してくれた。

とても美人だ。そのニコッと笑う顔は西園寺に似ていて可愛いらしさもある。


「ミト、先ほども言いましたけど、あなたは来週から辰郎さんのいる大阪に戻らねばなりません」

「そうですわ。お父様と大事な打ち合わせがありましたの。ヨゾラさん、ごめんなさい。次の対決は当分できませんの」

「うん、わかったよ。ミトちゃん」スヤサキは少し残念そうに言った。

「真神さん、今日は来てくれてありがとうございました。ワタクシに投票してくれなかったのは残念でしたけど、真神さんの好みが知れて良かったですわ」

「あ、いやぁ。西園寺のも美味しかったよ。特に桃のガレットが」

「うふ、真神さん、桃、お好きなんですね?」

クルッと後ろを向きお尻についた尻尾をゆらす西園寺。

ハッ!まさか!?俺がお尻好きなのを知っててやっているのか?


「女の子は男の子の視線に気づいてるんだよ…」

背後から低い声で脅しにかかるスヤサキの声がした。

ひぃ!やめろ、怖いよ、スヤサキくん。

ドスっ!ドスドスっ!

痛い、やめろ!脇腹を手刀の先で突くな!


            


かくして、初めて見るスヤサキと西園寺の対決は、スヤサキの勝利で終わった。

次の対決はいったいいつになるのか!乞うご期待!


「真神くん。夕日に向かって変なこと言ってないで帰ろうよ」

「あ、うん。そうだな…帰ろう」


かくして、俺は頭の中で言っているつもりだったが、声に出ていた!恥ずかしくなんかないもん!泣かないもん!男の子だもん!


「かくして、また声に出ている真神くんだったのだ!ニシシシシ」


いたずら小僧のように笑うスヤサキは、

メイド服のままだ。


「スヤサキ、そのままの姿で帰っていいのか?」

「うん、このメイド服ね。ミトちゃんがプレゼントしてくれたんだよ。似合ってるからって」

「そいつは良かったな」

スヤサキは女装のままでも気にしないようだ。

ちゃっかりあのドラゴンの角カチューシャと肉球ミトンも貰っている。

西園寺家の門を出るとスヤサキには迎えの車が来ていた。スヤサキのお兄さんだ。

俺も途中まで乗っていかないかと誘われたが、このあと寄りたいところがあるから断った。


「またね~真神君」

「またな〜スヤサキ」


俺はスヤサキと別れてから、

しばらく歩いて駅に行き電車に乗った。

電車に揺られること約15分。


俺が向かった先は…ガラガラ。


「ただいま〜」

「おかえりなさい、陽太。お風呂湧いてるわよ」

俺は実家に戻ってきた。

出迎えてくれたのは、俺の母親だ。


「ありがとう、母さん」

「今日はどうしたの?急に帰るだなんて、何かあったの?」

「母さんの手料理が食べたくなって」

「あら、そう」

ニコッと笑う母さんは嬉しそうだ。


「じゃあ陽太の好きなハンバーグ作りましょうね」

「あと、デザートにシュークリームも食べたいな」

「ええ!?シュークリーム食べたいの?珍しいわね、甘いの好きだったかしら」

「え?ああ、まぁ…その、久しぶりに食べたくなってさ、いいだろ?作ってよ」

「そうね。陽太、チョコのシュークリーム好きだったもんね。わかったわ、作ってあげる」

「やったぁ!」

「でも時間がかかるから、明日のおやつね〜」

「そんなぁ」

俺は楽しみにしていたからがっかりして見せる。

「そんなにがっかりしないで、美味しいハンバーグ食べさせてあげるから」

「わかったよ、母さん。明日の楽しみに取っておくよ。あ、そうだシュークリームの生地はクッキーでお願い」

「はいはい、クッキーシュークリームね。それも好きだったわね〜陽太。どうしてまたそんな懐かしいもの食べたくなったの?」

「まぁふと思い出してさ。母さんの手料理が食べたくなったんだ。それとこれも」


俺は自分の体で見えないように後ろ手に隠してあったカーネーションの花束を母さんに見せた。

「まぁ!?何?どうしたの、急にこんな花だなんて。綺麗ね〜」

母さんは驚いた後、嬉しそうに喜んで花束を受け取った。

俺は母さんに一言伝えた。


「母さん。いつもありがとう」


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