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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第一章 陽太、喫茶ペンブロークに出勤する》
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《第五話 ルーナは魔法少女》

俺は着替えが終わり、パタンとロッカーを閉めて、聖夜ひじりや先輩の座っている席の正面に座った。

「ファンに呼び名をつけるのって特別感があって、なんか良いですよね」

「そうでしょ、そうでしょ。真神まかみ君は映画のことくらいしか興味なさそうだから他にも趣味増やしてみたら?」

「俺の趣味は映画だけではないですが、まあ……これと言った趣味は少ないですね。」

そう言われて考えてみたが、自分の趣味が他に思いつかなかったことに落胆する。


他に趣味を増やそうか?何がいいだろうか?


俺の趣味は映画を観賞すること。ジャンルは問わないのだがコメディが一番好きだ。

ファーストデイはもちろん!近場の映画館のサービスデーはほとんど映画館で映画を見ている。

そんな日を使わなければ学生にはお金のかかる趣味だからな。


「真神君もVチューバーを応援するのはどうだい?Vチューバーはいいぞ〜特にルーナ!とっても可愛いんだ」

「はぁ〜どうしようかなぁ」と俺はあまり気乗りしない返事をすると、聖夜先輩は不満そうな顔になる。


「なんだぁ〜、その返事は〜、全然心に刺さってないな〜」

「いや、まあ、その〜、あまりVチューバーを観る習慣が無くてですね」

「だったら今日のイベントでルーナのファンになればいいよ。いや…君はファンになるね」

人差し指を俺の顔に近づけ、そう断言する聖夜先輩。

「なぜ…そう言い切れるんですか?」俺は仰け反り、生唾をごクリと飲み込んだ。

「わからない、でも真神君はルーナの虜になるね」

「なんなんですか、それ」


訳のわからない事を言う聖夜先輩。マスターから事前に渡された資料を見てみたけど髪の毛は白と黒のツインテール。魔法少女のような白と黒の衣装。そして顔には目元だけを隠した仮面をつけている。白黒猫のような仮面だ。俗に言う、ハチワレだ。


「なんで彼女は顔を隠しているんですか?」

聖夜先輩は片手で頬杖を付きながら答える。

「それはね、ルーナが普段の配信から仮面をつけたバーチャルアイドルだからだよ」


なんで仮面つけてるんだろ?キャラ作りか?


「衣装を見るからに……ルーナは魔法少女的な存在ですか?」

「そう、ルーナは魔法少女なんだ」

やっぱり、ルーナは見た目通りの魔法少女だった。

「普段はね、魔法の国から配信してるけど、今日は実際に、生で、ルーナを拝めるんだからね!」聖夜先輩の鼻息が荒くなる。

俺はそこでふと疑問に思い、ひとつ質問してみた。


「それなんですけど、ファンの人は三次元になったルーナのことをどう思っているんですか?」

聖夜先輩は腕を組み、唸りながら答えた。

「う〜ん、そこはやっぱり賛否両論だよね。なんてったって、このライブで初めて中の人が黒子猫ちゃんの前に出るんだから」

「やっぱり反対の声もあるんですね」

「そうだね、バーチャルアイドルは二次元世界のキャラクターだからね。やっぱりイメージを崩されたくない人も少なからず多いわけだね」

聖夜先輩は体勢を変えた。両肘を机に立てて寄りかかり、両手を口元に持ってくるあのグラサンをかけたおじさんのポーズだ。

「そうですよね。イメージは崩されたくないですよね、やっぱり」

「だが!ルーナは反対されるとわかってるけど、その姿を見せることにしたんだ!」

机をダン!っと叩き、熱く語り出す聖夜先輩。危ない予感がする。

「いわばこれは!ルーナと黒子猫ちゃんの熱い挑戦なんだ!二次元世界のアイドルが我々が住む三次元世界に舞い降りる奇跡の祭典なんだよ!真神君!」

聖夜先輩のボルテージが上がってきた。前のめりになり唾も飛ぶ勢いだ。汚い。


「へぇ〜すごいですね〜」

「む!ちゃんと聞いているのか?真神君」

「聞いてますよ、ちゃんと。ルーナが三次元になるんでしょ?凄いじゃないすか」


聖夜先輩のヲタトークは、話始めたら止まらないことで有名だ。てか半分以上がこちらの理解が出来ない話題になってくることが多くて疲れてしまうのだ。俺にもそっち方面の知識があれば良かったが…わからないヲタトークが長くなるので最近は「へぇ〜すごいですね〜」と話を流すことにしている。


「その通りだけど…なんかおざなりだなぁ」

「そんなことないですよ」

「むーっ!なんだか最近冷たくないかい?真神君〜」

眉をひそめて困り顔になる聖夜先輩。ちょっと可愛い。

「冷たくなんてないですよ。そんなことより休憩時間終わりますよ、聖夜先輩」

「あ!ホントだ、長話になってしまったね。それじゃまた後で」


トタトタと聖夜先輩は途中まで食べていたどら焼きを口に全部入れ休憩室を出ていった。

俺は休憩室を出ていく聖夜先輩の後ろ姿を目で追った。張りのあるお尻を眺めながら

「一体どんな子が来るんだろう…」とつぶやいた。


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