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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第四章 陽太、兎姫(うさぎひめ)からお菓子をもらう》
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《第十五話 三種のクッキーシュークリーム》

俺の目の前には、桃、いちご、びわの色鮮やかなフルーツが上に乗ったガレットが並んだ。

表面はキラキラと、何かを塗っているように光っている。


「それでは、まず始めに実食していただくのは、お嬢様のお菓子ガレット・ブルトンヌからでございます」

まず俺は、桃が上に乗ったガレットをつまみ、口に入れた。

カリッ!ジュワッ!

生地はサックサックだ。

そして、上に乗った桃を噛むと果汁がこれでもかと言うくらい出てきた。

糖度が高いようで、とても甘い。

「う、美味いな」俺は一言、そう漏らした。

美味くて気の利いた言葉が出てこないくらいに美味いのだ。


「上手に焼けたわね、ミトちゃん」

「ありがとうございますわ、お祖母様」

「ん〜このフレーズもデリーシャスデース」

セバスチャンさんは苺が乗ったガレットを噛り、唸った。

とても恍惚とした表情を浮かべている。


「さぁ、お祖母様。このびわのガレットもお召し上がって」

「ええ、そうするわね」

びわのガレットを一つつまんで、一口噛る理事長。カリッ。


「甘くてとっても美味しいわ。私の好きなびわの品種を使っているのね?」

「ええ、もちろんですわ。お祖母様に喜んでもらうために用意しましたの」

「ありがとう、ミトちゃん。とても嬉しいわ」

「私もお祖母様に喜んでもらえて嬉しいですわ」

理事長の喜ぶ顔を見て、西園寺は嬉しそうだ。

少女のような屈託のない笑顔をしている。


俺もびわのガレットを一口噛ってみた。カリッ。

ええ!?なにこれっ!?うんまぁ〜い!

桃も苺も美味しかったがけど、びわがこんなに甘くて美味しいなんて知らなかった。

あっという間に西園寺が用意してくれたガレットブルトンヌを食べきってしまった。

もっと食べたかったなぁ。


西園寺のガレットブルトンヌを名残惜しく思っていると

「続きましてはスヤサキ様のお菓子です」

西園寺のガレットブルトンヌの余韻を残したまま、スヤサキの作ったお菓子が出された。


「おお、これは三種類のクッキーシュークリームデズネ」

「まぁ、凄く鮮やかな緑色。これは抹茶のようね」

「こっちの黒はチョコみたいですね」

スヤサキが作ったお菓子は、「三種のクッキーシュークリーム」だ。


俺はまず黒い皮のクッキーシュークリームをつまんだ。

頭には白い粉がかかっていて帽子を被っているようで可愛い。

サクッ!うん、皮はサクサクだ。しかもほろ苦いのだ。

そしてこのほろ苦さを感じたらすぐにチョコホイップの甘さを感じる。


俺は美味しさのあまりふた口で、チョコのクッキーシュークリームを平らげた。

なんだ?この美味しさは!?

このチョコクッキーシュークリームをもっと食べたい。


「良い食べっぷりだね。真神くん。よっぽど美味しかったんだね、さすがボクだね。うんうん」


ニコニコと笑うスヤサキは腕を組んで自画自賛している。

ん?今気付いたんだけど、腕を組んでるスヤサキに胸がある。

スヤサキのやついつの間に偽乳を着用したんだ。

メイド服を用意される前はツルペタだったのに。


「私はこの抹茶をいただくわね」

俺がスヤサキの胸を凝視していると、隣の理事長が抹茶のクッキーシュークリームを口に入れた

サクッ!うん、良い音だ。この距離でも聞こえるサクサク音。

「まぁ、とっても上品な味ね」

一口噛った理事長はそう感想を漏らした。

上品な味?いったいどんな味だろう?


俺は次に抹茶をつまんで、口に運んだ。うん、甘さ控えめで上品なお味だ。

甘いものが続いたらこれを食べるといいだろう。


「うーん、カスタードもデリーシャス」


セバスチャンさんが食べたのは三種類の最後、スタンダードのカスタードクリームだ。

俺も食べてみる。シンプルな味わいだ。だがそれが一番美味い。

安心するバニラの味。シュークリームと言ったらこれ!


「カスタードクリームは、ワタシが見習いだった頃に飽きるほど作らされマシタ。立派なパティシエになるにはこのカスタードクリームをマスターしなくてはなりまセーン。ゆえにカスタードクリームは重要なのデズ」

なるほど。立派なパティシエになるには、まずそのお店のカスタードクリームを作れないといけないのか。

どんな世界にも登竜門的なものがあるんだな。


「さぁ、それではどちらのお菓子が良かったか。審査員の御三方に聞いてみましょう」

いよいよ、決着の時か。どちらのお菓子が美味しかったか決めねばならない。

「それでは審査員の御三方。手元のスイッチでどちらのお菓子が美味しかったか決めていただきましょう!」


いつの間にか二色のボタンが付いているスイッチが、テーブルに置かれていた。青がスヤサキ、赤が西園寺のボタン。

どっちが美味しかったなんて決めきれない。

だってどっちも美味しかったもん。西園寺のびわのガレットブルトンヌは驚いた。

普段は滅多に食べないびわがあんなにジューシーで甘いものだとは思わなかった。

だが、スヤサキのチョコクッキーシュークリームも絶品だった。

ほろ苦いカカオの皮にたっぷり入った甘いチョコホイップクリーム。

それだけじゃない何かがあった。それが何なのか…くっ!…思い出せない。


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