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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第二十三話 寝る前に》

駅周辺の明かりが、だんだん遠くなってきた。

住宅街のポツン、ポツンと点在する街灯の明かりを頼りに、俺は帰り道を進んだ。

どこの家も明かりは消えていて、先程までいた渋谷とは正反対な静けさだ。

俺はこっちの方が好きだな。


アパートに帰り着くと俺は郵便受けを覗いた。

何も入ってはいなかった。

階段を昇って、自分の住む部屋へ行く。

二階の202号室が俺の住んでいる部屋だ。

隣の201号室は明かりがついている。

こんな時間に珍しいな。

隣の201号室に住んでいるのは、近くの図書館で司書をしている朝霧あさぎりさんっていう女性だ。

なんだかとても暗い人で、挨拶程度の会話しか今までしたことがない。

歳はたぶん俺より少し年上だろうな。

目が前髪で隠れていて、素顔を見たことはない。

声も小さくて、よく聞こえない時がある。

まあ、物静かな人という印象だ。

明日は休みで夜ふかしでもしているのだろう。

俺も休みだけど、今日は疲れたからシャワーを浴びたらさっさと布団に入るか。


「家の鍵は、っと、あれ?」

どこにしまったかな?確か右のポケットに入れてたはずなんだけど、あれ?無いな、嘘だろ。また落としたのか?

玄関先でゴソゴソと家の鍵探しをしていると、隣の部屋のドアが少し空いて、中から人が覗いているのに気づいた。


「す、すいません。こんな時間にうるさくして」

俺はバツが悪くて頭をかいた。

「い、いえ…」

「鍵をどこにしまったのか。忘れちゃって、ハハハ」

少しだけ開けたドアの隙間から、ジトッとした目で見られる。

変な汗が出てきた。

俺はカバンの中身をガサゴソともう一度探してみる。

「あ!あった!良かった。すいません、うるさくして」

俺が再び隣の部屋に目を向けると、既にドアはしまっていた。

「って、もう見てないのか」


謎のがっかり感を味わった。そして寂しさも感じる。

去年の春先に引っ越してきて一年が経つ。

隣の朝霧さんだけは会話らしい会話を全然したことがない。

少しだけ彼女のことが気になっている。どういう人なんだろう。


部屋に入るとすぐに風呂場に直行し、シャワーで汗を流した。

さすがにもう眠い。俺は髪を乾かしてすぐに布団に入った。

いつも寝ているときに聞いている朗読動画を再生させる。

最近はこの朗読を聞いて寝るのがマイブームになっている。

寝付けないときにいろいろ探して見つけたのが、「時雨しぐれさん」の朗読配信だ。

おっとりとした癒やし声が良くて、すぐにチャンネル登録した。


動画と言っても本を読んでいる女性のイラストが決まった動きをするだけ、そこに音声がついただけのものだ。俺はいつも画面を真っ暗にして聞いている。

そのまま寝落ちするためにだ。

いつものように、スマホで朗読動画を再生して画面を暗くする。

今夜は「セロ弾きのゴーシュ」を聞きながら眠ることにした。


冒頭にタイトルを言い、朗読が始まる。

いつもはしばらく話を聞き入ってから寝落ちするのだが、今日は疲れていたのでタイトルを聞いたら、いとも簡単に眠ってしまった。


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