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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第二十二話 兄の心配事とは》

その男は、髪をオールバックにし、夜なのにサングラスをかけていた。

どこかで見覚えがある男だと俺は思った。

この人は確か以前「喫茶ペンブローク」でルーナがライブをしたときにいた…


「あ、確か。ルーナのマネージャーの…」

あれ?名前なんだっけ?ど忘れしてしまった。

須夜崎悠夜スヤサキユウヤです。夜空の兄の」

「ああ、そうでしたね。お久しぶりです」

そうだ。この前のイベントで臨時マネージャーをしていたスヤサキのお兄さんだ。名前聞いてたかな?まぁいっか。


「夜空は…眠っているようだね」

「はい。映画見た後、帰りの電車に乗ったらすぐに」

「夜空はいつも夜の十時には寝ているからね。今日は、もう二時間も夜更かしをしている」

夜の十時に寝ている!?いつも!?

それはまた随分と健康的なやつだ。俺なんていつもバラバラの時間に寝ている。


「そうだったんですね。驚きましたよ、急に電池が切れたように動かなくなって…えっと…」

「今日は友達と映画を観てくるから遅くなると連絡は受けていたが、まさかこんなに遅くなるとは」

まずいな、怒っているのかな?お兄さん。


「す、すいません。本当は夕方に上映される回を観るはずだったんですが、いろいろありまして。急遽レイトショーを観ることにしたんです。まさか門限があるとは知らなかったんです」

俺は正直に謝り許してもらうことにした。怒らせたら怖そうな人だし。


「いや、謝らなくても大丈夫。夜空から連絡が来ていたから」

スヤサキ、お兄さんに連絡を入れていたのか。

「ところで、今日はずっと夜空といたのかい?」

お兄さんの声色が鋭くなった。ギロリと睨まれ体がこわばるのを感じる。

「え、ええ。もちろん、夕方からはずっと一緒にいましたね」

「本当かい?」

「え、ええ。本当です」

ギロリと睨むお兄さん。いったい何を聞きたがってるんだ?


「誰かにつけられてたりしなかったかい?」

そんなやつはいなかった…と思う。

だいたい、誰かにつけられてたりしてると思って過ごしていなかった。

スヤサキって誰かにつけられてるのか?男でもストーカー被害にあってたりするのか?スヤサキなら無いことも無いだろうけど…


「誰にもつけられてはいないと思います。何事もなかったですし」

「本当だろうね?」

なぜ疑う?何を気にしているんだ?この人は。

「うちのルーナに本当に何もなかったということかね?」

その言葉を聞いて、俺はようやく思い出した。

お兄さんが何を心配しているのか察した。

そうだ、スヤサキはこの前「喫茶ペンブローク」で生ライブしたバーチャルアイドルのルーナだ。


でも心配し過ぎではないか?

この前の「喫茶ペンブローク」では顔を隠した状態でライブしたんだから身バレは無いような気がするのだが。

「本当に大丈夫でしたよ。スヤサキは変装しているみたいな状態だし、まさかバーチャルアイドルのルーナが女装した男だなんて思わないだろうし…」


「シッ!そのことは他言無用だ。誰が聞いているかわからない」

顔を近づけ圧をかけられた。怖い。

「あっ!すいません」

しまったぁ。このことはスヤサキとも約束した秘密なんだ。

「とりあえず、今は君の言葉を信じよう。それじゃあ夜空を」

「あ、はい」


俺は背中で寝ていたスヤサキを降ろす。

スヤサキはまだ眠ったままだ。

一向に起きようとしない。何が何でも起きないようだ。


地面に降ろされたスヤサキは、フラフラと頭を揺らしながら、なんとか直立した状態を保っている。

支えていないと今にも倒れそうで不安定だ。

俺は心配になり手だけをスヤサキの肩に置いて支えていた。お兄さんはすぐにしゃがんでスヤサキをおんぶするスタイルをとる。


「スヤサキ。ほら、今度はお兄さんにおんぶしてもらえ」

「ん〜」

右目をこすりながら、お兄さんの背中におぶさった。

スヤサキはまた「スースー」と寝息を立てて眠りに入った。


「それじゃあ、真神君。今日はこの辺で」と言い、離れて行った。

「あ、はい。お疲れ様です」

なんて言ったらいいのか迷ったあげく、いつも言い慣れている「お疲れ様」が出てしまった。


お兄さんは背中で俺の挨拶を受け取り、「ああ、お疲れ様。気をつけてな」と別れの言葉を返してくれた。


俺は二人が消えていくのをなんとなく見てから帰ることにした。

スヤサキの家は、俺の住むアパートとは逆の方向のようだ。

あっちは確か…高級タワーマンションが立ち並ぶエリアだったような気がする。あいつ、やっぱりお金持ちなのかな?配信とかで稼いでいそうだしな。


二人が見えなくなったので、俺も家に帰ろう。

今日はそれなりに大変な一日だった。

午前はいつもの大学だったけど、夕方からは映画を観るつもりで渋谷に行ったが、迷子の紬星ちゃんと出会って姉の天ノ村を探した。


天ノ村には、なかなか出会えなかったけど、綺麗な夕日が見れた。

偶然行くことにした、回転寿司屋の前で天ノ村とも出会い、そのままみんなで美味しいお寿司も食べた。


良い一日だったと思う。

スマホの時計を見ると、あと二十分で今日が終わる。アパートに帰り着く頃には明日になっているな。


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