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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第二十話 なら帰りも一緒だな》

他のお客さんからのあっっつい視線(殺気)を気付かないフリをして、そそくさと席に着く。

席に座り、映画会社のロゴがスクリーンに登場した。

いよいよ本編の始まりだ。


今日この映画館に来た理由は、

スヤサキが「シャーロック・ホームズ」を観たことがないと言うので、

二人で観に来たのだ。

すぐるにも言い訳を作るために、

内容を知っておかないといけないということもある。


映画館の中が一段と暗くなった。

さあ、本編が始まりそうだ。

この瞬間はいつもワクワクするんだ。


       


上映が終了。

劇場内から数人しかいないお客さんが、次々と出口に向かう。


俺たちも席を立ち出口へと向かった。

空になったトレーをまとめて俺が持ち、

スヤサキに自分の肩に手を置くように促す。


「ありがとう真神くん」スヤサキは俺の肩に手を置いてゆっくりと階段を降りた。手を繋いでやれればいいが、今は両手が塞がっている。


「面白かったね。シャーロック・ホームズ」

「そうだろ」

「怖いシーンもそんなに無くて、心配なく観れたよ」

「そうだな」

「アクションシーンもかっこよくて、ホームズって体育会系なんだね」

「頭脳明晰で腕っぷしも立つなんて、かなりかっこいいよな」


この映画の題材となっているコナン・ドイルのシャーロック・ホームズもボクシングはプロ級で、拳銃も打った弾の弾痕でアルファベットを書けるほどの腕前らしい。まさに超人である。


「うん。バシュ!バシュ!ってかっこよかったな」

口で効果音を出しながら、拳を前に突き出すスヤサキ。

スヤサキの子供のような行動にに思わず笑ってしまう。


「プハッ!なんだよ、それ」

「キックなんてこうだよ、えい!」

「あ!お前その格好で」


スヤサキは自分の今の格好を忘れて、大きく右足を蹴りだした。

そのため本日二度目のパンチラサービスをしてしまった。

周りにいる他の男性は「ラッキー!」とばかりに目を向けてくるが、こいつが女ではなく男だということを知っている俺は、そんなことはないのだ。

ただただ、恥ずかしいだけだった。


「おい、スヤサキ。その姿のままであまり派手に動いたりするなよ」

「はぁ!ごめん。つい興奮しちゃって」

映画館を出て俺は手帳とペンをとりだし、今観た映画の感想を書き始めた。

「何を書いてるのかな?真神くん」

隣を歩くスヤサキが聞いてきた。

「ん?ああ、映画の感想だよ」

「いつもしてるの?」

「ああ、そうだな。感想文とかそんな対したものじゃないよ。観た映画の面白かったポイントをメモしてるだけだ」


「ふーん、何のために?」

「映画作りの参考かな。俺は映画の脚本を書きたいからな」

「あ〜なるほどね。夢のためだ」

「そういうことだな」

「ボクも女優さんの演技をもっと勉強しよう」

「女優?」

「あ!間違えた、俳優さんだね。えへへへ」

「まあ、演技の勉強って言うなら男女関係なく女優さんからも得られるものがあるんじゃないのか?」

「そ、そうだよね。女優さんの演技からも何かを得られるよね。いいこと言うなぁ真神くんは」

なぜだか一人で焦って、一人で安心するスヤサキ。


「ところで、スヤサキ。実は今日観た映画は続編で、シャーロック・ホームズには前作があるんだ」

「え!そうなの?観てみたいかも」

「今度の傑との映画鑑賞の前に観とくのもいいかもな」

「そうだね。また一緒に観ようよ?」

「もちろん、良いぞ」

「やったぁ!それじゃあさぁ。このまま真神くんのお家で鑑賞会しようよ?」


「今からか?」

「ダメかな?」

「……」

「……ごくり……」不安そうに見守るスヤサキ。


………


「よし!わかった。良いぞ。このままの勢いで見ちゃうか?」

「やったぁ!」

急遽、俺の家で鑑賞会をすることになった。

俺としても続編を観た後に前作を見直して、ホームズの知識を深めたい。

話しているうちに渋谷駅に着いた。


「俺は中野で降りるけど、そういえばスヤサキはどこに住んでいるんだ?」

「実はボクも中野に住んでるんだよね」

「えっ?そうなのか?なら帰りも一緒だな」

「そうだね」ニコッと嬉しそうに笑うスヤサキ。

そこで駅のアナウンスが新宿方面行きの電車の到着を告げる。


「「まもなく〜一番ホームに電車が参りまぁ〜す」」


「電車が来たみたいだな」

「そうだね。あ!ラッキー!結構空いてるね。座れるよ」

終電間近の電車だ。

満員を覚悟していたけど、スヤサキの言う通りラッキーだ。


「ああ、今日は歩き回って疲れたからな。ラッキーだよ」

二人並んで座っているうちにスヤサキがウトウトし始めた。


「おい、大丈夫か?」

「う〜ん…少し眠いかな」

「すぐに乗り換えだからな」

「う〜ん‥‥」


駄目だ、目が半分閉じてる。

仕方ない乗り換え駅に着いたら起こしてやるか。

それから十分ほどで乗り換えする駅に着いた。


「スヤサキ、乗り換えだ」

「う〜ん…わかった〜」

フラフラと立ち上がり、俺の袖を掴む。

どうやらこのまま乗り換えるつもりのようだ。


完全に眠っているわけじゃないので良かった。

このままスヤサキを担いで帰るのは避けられそうだ。

半分寝ているスヤサキを気にしながら中野行きのホームに向かう。


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