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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第十九話 映画にはポップコーン》

楽しい食事が終わり、渋谷駅まで天ノ村姉妹と一緒に歩く。

ステラのフィギュアを手に入れた紬星ちゃんは、

お腹いっぱいになったのか、お店を出るころには眠ってしまっていた。

今は姉の天ノ村におんぶされてる。

天ノ村は見た目によらず力持ちのようで、

俺が紬星ちゃんをおんぶしようかと言聞いたら、

自分がやると言い、なれた手付き妹をおんぶしたのだ。


「楽しかったね、結星ちゃん」

「はい、今日はありがとうございました。夜空さん、真神さん」

「俺たちも楽しかったよ。ありがとな、天ノ村」

「はい、真神さんたちとの食事が紬星も楽しそうで…私も嬉しかったです」

一度背中の紬星ちゃんを見た天ノ村は、母親のように微笑んだ。

「ああ。こっちも楽しかったよ、ありがとな」

駅に割と近いお店だったので、横断歩道を渡ってすぐに渋谷駅についた。


「それじゃあ、ここでお別れだね」

「はい、今日は本当にありがとうございました」

天ノ村たちは井の頭線を使うらしく、

忠犬ハチ公の銅像の前で別れることにした。

「おやすみ、紬星ちゃん」

スヤサキは天ノ村の背中で寝息を立てている紬星ちゃんに囁いた。

「うーん」と寝言で返事をする。

紬星ちゃんは、今日俺たちと天ノ村を探すのに歩き回って

疲れちゃったようだ。無理もない、まだ幼稚園児だもんな。

夜も九時になろうとしていた。子供は寝る時間だ。

俺は弟が小さい頃を思い出していた。

母さんにおんぶされてる弟は気持ち良さそうにスヤスヤ寝ていたな。


「さて、ボクたちもここで解散かな?」

天ノ村たちの姿がなくなったのをみやり、スヤサキはこちらを振り返る。

「そうだな。他に行く予定もないし、映画も終わってるだろうしなぁ」

「映画………待って!真神くん。もしかしたらまだ映画やっているかもだよ!」

「え?」

「レイトショーだよ」

「ああ!そうか、レイトショーがあったな」

映画館では夜遅くに放映する時間帯がある。

通常料金より安くて、人も少ないのでお得なのだ。


「さっそくいってみようよ、真神くん。善は急げだよ」

「あ、ああ」

「ほら、早く早く」

スヤサキの勢いに負け、上映時間も確認せずに俺たちは歩き出した。

映画館の受付に着いた。

あっ!先ほどの受付のお姉さんだった。

あちらもあっ!となったが、すぐに接客スマイルに戻る。


「シャーロック・ホームズ。まだ上映ありますか?」

現在時刻は夜の八時五十七分。

「はい、ございます。もうすぐ本上映が開始する回がございます。お席をお取りになりますか?」

「はい、お願いします」

「やったね、真神くん。ギリギリ間に合ったよ」

「そうだな。行ってみるもんだな」


突発的な行動だったけど、うまくいった。なんだか楽しくなってきた。

「じゃあ、ボクポップコーンとコーラ買ってくるね」

「ああ」

先ほど寿司を食べたばかりだろ?

と思ったけど俺も食べたくなっている。

スヤサキと一緒にいると食べ物が美味しそうに見えて食べたくなってしまう。


「真神くんは何味にする?」

「塩で頼むよ」

「わかった。ボクはキャラメルにするから食べあいっこしようね」

「なんだよ、食べあいっこって」思わず笑ってしまった。

「えー、塩も気になるじゃん。真神くんはキャラメル気にならないの?」

「う~ん…気になるね」

「でしょ?じゃあ、真神くんは先に席について待ってて」

「いいけど、大丈夫か?俺も一緒に買いに行こうか?」

「ううん。大丈夫だよ、ありがとう」

手を振り、スヤサキは売店に向かった。

食べ物のことはスヤサキに任せよう。

スヤサキの言う通り、先に席で待つことにする。


既に他の映画の予告が流れている。

お客さんの数は、俺とスヤサキを入れても数人程度のようだ。

ほとんど貸し切り状態ってやつだ、やったぜ。

足元の明かりを目印に自分たちの席を探す。

後ろの方、スクリーンに向かって左側の席を取ってもらった。

その席の辺りは誰も座っていなくて、居心地が良さそうだ。


「わ、わわわっ!」と両手いっぱいにポップアンドコークを抱えて、

フラフラと足取りのおぼつかない女性が入ってきた。

暗がりの中だけど、数人しかいない他のお客さんに注目されていた。

信じられないくらいデカいポップコーンを二つ抱えている。

女性の顔も半分見えないくらいだ。


「あ、あいつ!?」

俺は席を立ち、その女性に近寄る。

その女性は言うまでもなくスヤサキだ。男です。

今の姿が女性コーデなだけで男です。

他の男性客は全員、スヤサキのことを見ている。

てか、お一人様の男性客しか見当たらない。


二人組は俺らだけか…

しかも女性と一緒に来ていると思われているから、

俺の方にも視線が…睨んでる。


「おい、スヤサキ。なんだそのデカいポップコーンは?」

俺は小声で問いかける。

「あ!真神くん。凄いよね、ここのポップコーン。

Lサイズの上にキングサイズあるんだよ。

迷わずキングを選んじゃった」

迷え!さっきたらふく回転寿司食べてきたばかりだろ!


「片方のポップコーン貸してみろ。俺も持つから」

「うん、ありがとう」

ポップコーンを受け取る俺を見て、ニコッと笑うスヤサキ。

「早く、席に座ろうぜ。本編が始まっちまう」

「うん」


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