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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第十八話 ガチャというものは…》

紬星ちゃんは、ちらし寿司でもらった一回分のガチャコインを使って

ガチャのつまみを勢いよくひねる。

ガチャリ。ゴロゴロ。

先程と同様に真っ黒で中身の見えないカプセルが出てきた。

紬星ちゃんはその黒いカプセルを手に取り、中身を確認する。

折りたたまれた紙に印刷されていたのは…「F賞」


残念、目当てのステラのフィギュアではなかった。

景品はクリアファイルだった。

今回用意されている景品の中で一番下の景品になる。

クリアファイルには魔法少女のキャラが三人描かれている。

その中にはステラも描かれている。

なけなしの一回にかけてみたが、現実はそう甘くなかった。

落ち込んでしまう紬星ちゃん。

紬星ちゃんの頭を撫でながら姉の天ノ村は

「落ち込まないで紬星。ほらステラもちゃんといるじゃない?」

「でも、つむぎはフィギュアがほしかったでしゅ…」シュンとする紬星ちゃん。

しょんぼりしている紬星ちゃんを見ていられなくて俺は

「紬星ちゃん、俺のコインをあげるからもう一度チャレンジしてみないか?」

「いいの?ようたおにいちゃん?」

「ああ、もちろん。遠慮なく使ってくれ」

「ありがとう」ニカッとまた笑顔に戻ってくれた。


寿司が美味しくて俺も意外と食べてしまった。

ガチャコインは四枚手に入れた。

俺は自分のガチャコインを全て紬星ちゃんに全て渡した。

さあ!いざ尋常にガチャ!紬星ちゃんの目に再び生気が宿る。

ガチャリ。ゴロゴロ。

ガチャリ。ゴロゴロ。

ガチャリ。ゴロゴロ。

ガチャリ。ゴロゴロ。

今回はまとめて四回引いた紬星ちゃん。


一個ずつ黒いカプセルを開けていく。

一個目、F賞。

ぐっ!またもF賞か。でもまだ三個残っている、次に行こう。


二個目、C賞。

これは良いぞ!

カタログを確認するとA賞、B賞、C賞は同じグレードのフィギュアのようだ。


「ああ!凄いよ紬星ちゃんC賞はステラの親友のスレッタだよ」

瞳を輝かせるスヤサキに対して、落ち込んではいないが、

まだ喜んでいるようには見えない紬星ちゃん。

やはり一番目当てのステラがいいのだろう。


よし!この調子で三個目だ。

三個目、E賞。

E賞はキーホルダー。何かのマスコットキャラのキーホルダーのようだ。


「あっ、可愛い。アルカのキーホルダーだね」

とうとうラスト一個になった。泣いても笑ってもこの一個がラストだ。

一同に緊張感が走る。


パカッ。紙に書いてあるのは………E賞。


無念。現実は残酷だった。

またしてもステラのフィギュアをゲットできなかった。

紬星ちゃんの目から生気の炎は消え、涙が今にもこぼれ落ちそうだった。

ガチャというものは…残酷だ。

こんな小さい子にも非常な現実を打ち付けてくる。

なんとかしてやりたいが、俺のガチャコインは全て渡してしまった。

落ち込んでいる紬星ちゃんの頭を撫でる天ノ村。

「紬星、泣かないで。今度はお姉ちゃんがガチャ引いてみるよ」

天ノ村もガチャ一回分の食事をしていたみたいで、その手にはガチャコインがあった。

「紬星も一緒に回そう。ほら」と紬星ちゃんの手を握って二人でつまみを掴む。

「うん」ズビッと鼻水を啜る紬星ちゃん。


「それじゃあ、せーの」ガチャリ。ゴロゴロ。

出てきた黒いカプセルを手に取る紬星ちゃん。再び緊張感が走る。

パカッ。紙に印刷されているのは………!?

A?A賞だ!やった!A賞が出た!


「凄い!本当にA賞を引いたよ!紬星ちゃん凄い!」スヤサキはパチパチと手をたたき喜んでいる。

「良かったね紬星」

「…………」

「紬星?どうしたの?」反応しない紬星ちゃんを見て心配になる天ノ村。

紬星ちゃんはテーブルの下に潜り込んで、そのままテーブルの下から出て、どこかへ行ってしまった。

「わっ!待って、紬星どこに行くの?」天ノ村はすぐさま紬星ちゃんのあとを追って席を離れた。


「紬星ちゃん、いきなりどうしたんだ?トイレか?」

「ううん。違うと思うよ」スヤサキは朗らかに笑って言った。

「じゃあ、何をしに行ったんだ?」

「ふふ、それはすぐに戻って来るからわかると思うよ」

口元に左手を当ててクスクスと笑うスヤサキ。

何か心当たりがあるようで嬉しそうな笑顔だ。


「よぞらおねえちゃん!ようたおにいちゃん!」

どこからか戻ってきた紬星ちゃんに呼ばれ、俺たちは紬星ちゃんを見た。

「ああ、そういうことか」俺は紬星ちゃんを見て理解した。


紬星ちゃんは天ノ村と手を繋いで席に戻ってきた。

紬星ちゃんの手にはステラのフィギュアが握られていた。

紬星ちゃんはトイレに行ったのではなくて、

景品交換所にステラのフィギュアを取りに行ったんだ。


「つむぎもステラをゲットでしゅ!」


ステラのフィギュアを天高く掲げて自慢してくる紬星ちゃん。

さっきのフィギュアを手に入れたスヤサキみたいで笑ってしまった。


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