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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第十七話 もぐもぐタイム》

「天ノ村っていいお姉さんだな」

「えっ、あり、ありがとう…ございます」と天ノ村はうつむいてしまった。

「おねえちゃん、かおがあかいでしゅ」

「つ、紬星!や、やめなさい!」あわあわと焦りながら顔を赤くする天ノ村。

メガネが曇っている。なんて漫画的な表現をするやつなんだ。

面白くて、好きになりそう…


「アハ、結星ちゃんメガネが曇ってるよ。可愛いな」

「えっ!可愛い!?」

「うん、可愛いよ」

「可愛いな、天ノ村。抱きしめたいくらいだ」

「かわいいでしゅ、おねえちゃん」

スヤサキについで俺と紬星ちゃんも褒める。

耳まで真っ赤にして先程よりも恥ずかしがる天ノ村は

「うぅぅ…」と今にも泣き出しそうだ。

やばい!ちょっとからかい過ぎたか?

「皆さんやめてください…」

「ごめんごめん。もうしないよ。そういえば、結星ちゃんは何を頼んだの」

「え?あ、わ、私はたいにしました」

さりげに話題を変えるスヤサキは天ノ村の選んだネタに興味を示した。

天ノ村は淡白な白身ネタからいくようだな。


天ノ村は箸で鯛のにぎりをつかみ、醤油を少しネタにつけて口にほおばる。

そしてもぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ、と長めのもぐタイムに入った。

あまりにも長めのもぐもぐタイムだったので、俺はまじまじと天ノ村を見つめていた。

視線に気づいた天ノ村は噛むのをやめ、ゴクリと飲み込む。


「な、なんですか?真神さん」顔を赤らめて俺を見つめ返す。

「いや、なんでもないよ」と俺は笑いながら答える。

「もぐもぐしている結星ちゃんが可愛かったんだよ。ね、真神くん?」

「そうだな、もぐもぐ可愛かったな」

「ま、また!可愛いなんて!もう!やめてください」

「もぐもぐかわいいでしゅ」

「紬星もやめてぇ〜」


天ノ村をからかいながらも楽しい食事が続いた。

今日初めて出会った二人だけど、こうして一緒に食事をしてみれば、

なんだか家族のように思えてくる。

俺は少しだけ実家の家族のことを思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。


「そろそろ、ガチャを回してみようかな」

自分が注文した寿司を食べ終わったスヤサキは、

手に数枚のガチャコインを手のひらでジャラジャラし始めた。

俺に向かって「どう?ボクお金持ちでしょ?」などとしたり顔で言ってきた。

なんか腹立つ。

スヤサキは、それぞれのテーブルに備え付けられている、

ガチャガチャのボックスにガチャコインを入れていく。

ぐるりとつまみをひねると、黒いカプセルが出てきた。

中身に何が入ってるか、外から見てもわからない。

スヤサキが「…開けるよ」と言い、黒いカプセルをみんなの前で開けて見せた。

みんなの視線が黒いカプセルの中身に注がれる。


中身は折りたたまれた紙一枚だけだった。

その紙を開いてみると文字が印刷されていた。

印刷されていた文字は「B賞」だ。

「わぁ!?やった!やったよ!真神くん!B賞が当たったよ!」

興奮気味で俺に紙を見せてくるスヤサキ。

確かに紙には「B賞」と書いてある。

普通に考えて上から2番目に良いか賞品が当たったことになる。

メニューと一緒に置いてあるガチャのカタログを見てみるとA賞、B賞、C賞はおそらく同格商品だと思われるので実質大当たりだ。

くじ運の良いやつだぜ、まったく。


「B賞は何が当たったんだ?」

「えっとね〜」と景品のカタログを見てスヤサキは「B賞は…やったぁ!ルナだよ、ルナ!」

作品を観たことない俺はスヤサキの見ているカタログを覗き込む。

スヤサキの頭に近づき過ぎたのか、フワッと花の香りがして少しだけドキッとする。

うおっ!?いい匂い。どんなシャンプー使ってんだ?


カタログに映るルナは、魔女が被るような黒くて、

先がとんがって曲がっているツバの広い帽子を被っている。

その長い銀髪は左側の髪を一房だけ三つ編みにして、

ぱっちりとしたお目々をしており、

女の子が自転車の荷台に座るように箒に座っている。


「真神くん!ちょっとごめんね!」

興奮気味のスヤサキは、俺を立たせてどかし、席を立って、どこかへ行ってしまった。そしてすぐに返ってきた。

「やったよ真神くん。いきなり欲しかったルナのフィギュアをゲットできたよ!」

天高くルナのフィギュアを掲げてみせた。

「おお!」

俺はフィギュアには詳しくないが、かなりいい出来だと思う。

特に素晴らしい脚をしている。健康的な太ももだ。ちょっとけしからんぞ。


「おお!よぞらおねえちゃんすごいでしゅ」

「おめでとうございます」と天ノ村姉妹は瞳を輝かせパチパチと拍手を送る。

幸先の良い出だしになった。

「よぉし!この調子で全部の景品をゲットしちゃうかな」

その食欲と財力で手に入れたガチャコインをじゃらじゃらさせて、グヘヘヘと悪い顔で笑うスヤサキ。


「つむぎもステラのフィギュアをゲットするでしゅ」

一枚のガチャコインを握りしめステラのガチャに挑む紬ちゃん。

紬星ちゃんのところにはステラのフィギュアが来てほしい。

スヤサキはもう自分の欲しい物が手に入っているので、応援はしなくていいだろう。

頑張れ紬星ちゃん、財力に物を言わせて全ての景品をコンプリートするつもりのスヤサキなんかに負けるな!


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