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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第十五話 全部サーモンじゃないかよ!》

タブレット事件で少し元気がなくなった天ノ村をみんなで慰めながら、

レーンの上を泳ぐ寿司たちを眺める。

スヤサキたちはそれぞれ好きなネタをとって食べていた。

しばらくすると、

上のレーンから新幹線が俺たちのテーブルに到着した。

その新幹線は後ろの車両を3つの皿で表現している。

中央の皿には表面がキラキラと輝く、脂がのった中トロが一貫、鎮座していた。


俺が頼んだ中トロだ。一番最初に食べるのは好きなものからと俺は決めている。俺が末っ子だからというわけではない。

むしろバリバリ長男だ。自分のおかずを兄弟にとられたなんて経験はない。

イチゴのショートケーキだったら、上に乗ってるイチゴから食べるタイプだ。

こうする理由は特にないのだが、子供の頃からそうしてきた。


好きなものは食べて、苦手なものは残してしまう子供だったのでよく母親に怒られたな。

今では出されたものは、しっかり全部食べる精神で、生きているので残すことはなくなった。


「はい、これ真神くんの中トロだよね?」

レーン側に座っているスヤサキから中トロを受け取る。

「ありがとう。スヤサキ」

「うん、中トロ美味しそうだね」

スヤサキは玉子の握りを食べながら、俺の中トロを食べたそうな目で見てくる。

「あげないぞ」

「ム〜、一口いいじゃん」

「嫌だよ。お前に一口あげたら、中トロがなくなっちまうだろうが!」

「そんなことないもん」といいながら、二貫目の玉子の握りを一口でたいらげるスヤサキ。

説得力のないやつだな。


そんなやつのことはほっておいて、俺は自分の中トロを食べることにした。

箸で持ち上げると、より一層キラキラ輝いて見える。

脂が適度に乗っているのがわかるな。キラキラしてるぜ。

口の中に運ぶと身が引き締まっており、噛んでいくうちに程よくとろけ、消えていく。

脂ののりと赤身の旨みがバランス良く調和しているな。

一貫だけしか乗っていない中トロは、あっという間に無くなってしまった。


「真神くん。なんだかすごく美味しそうだね、その中トロ?」とスヤサキがもらし、

「本当ですね」と天ノ村が同意して、「つむぎもチュウトロたのむでしゅ」と紬星ちゃんがタブレットをとりだし、中トロを注文した。

スヤサキと天ノ村も「ボクもお願い」「私もお願い」とついでに紬星ちゃんに中トロのオーダーをした。


俺の注文した中トロを皮切りに、次々とスヤサキたちが注文した寿司が新幹線レーンから流れてきた。

俺のときは三皿使った車両編成だったが、七皿使った車両編成だ。

皿の上に乗っていたネタは、サーモン、オニオンサーモン、焼きとろサーモン、おろし焼きとろサーモン、ジャンボとろサーモン、チーズサーモンの七つ。


全部サーモンじゃないかよ!


スヤサキはかなりのサーモン好きのようだ。

まあ、サーモンは旨いのはわかるけど、もっと別のネタも食べてもいいのでは?

スヤサキはテーブルに七つのネタを並べた。

七皿も並べたせいで、思いっきり俺の陣地に入り込んでいる。


「なぁ、スヤサキ。一気に頼みすぎだろ?」

「そうかな?…と言いたいけど、このテーブルだとすぐにいっぱいになっちゃうよね。ごめん、次からは五皿ずつ頼むようにするよ」

「それでも五皿かい。ていうかまだ頼むつもりか?」

「当たり前だよ。ボクは今日でステラのコラボグッズをコンプするつもりだからね」

スヤサキは体型に見合わずの大食らい。

男にしては華奢な身体つきだが、胃袋の方は怪獣並だった。


紬星ちゃんも「つむぎもすてらのふぃぎゅあ、げっとするでしゅ」とグッと両手を握り決意を表明する。

天ノ村も「紬星。私のコインも使っていいからね」と妹の頭を撫でる。

撫でられる紬星ちゃんは嬉しそうだ。

「ステラのちらし寿司お待ちしました」と店員さんが紬星ちゃんの頼んだちらし寿司を持ってきた。

キッズサイズといってもちらし寿司だからさすがにレーンからは来ないようだ。


「わぁぁ、美味しそうだね。紬星ちゃん?」

早くもちらし寿司に目が行くスヤサキ。

お前は自分の頼んだサーモンをまず片付け…え?


もう無くなっている…だと!?いつだ!いつ食べたんだ!?


七皿もあったのに!?


そこへさらに、注文したネタをのせて七皿のお寿司がやってきた。

ひとつは天ノ村が頼んだ「鯛」、残りはスヤサキの「とろサーモン」や「炙りサーモン」とまたサーモンを頼んだようだ。


「またサーモン頼んだのか、スヤサキ?」

最後に食べたジャンボとろサーモンを飲み込んで

「うん、ボク、サーモン大好きなんだ」

と満面の笑みを浮かべるスヤサキ。

こいつはホント食べるのが好きなんだな。


「そんなに食べて大丈夫なんですか、スヤサキさん?」

心配そうに尋ねるのは天ノ村。

そりゃそうだろう、先ほどまでテーブルいっぱいに並んでいたサーモンを一瞬で食べたあとなんだから。

「うん、大丈夫だよこれくらい」

「ほえ〜」とあっけにとられる天ノ村。


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