《第十四話 機械音痴?》
「う〜ん…あれ?大丈夫みたいだよ。ちゃんと動くようになったみたい」
スヤサキはタブレットをに異常がないか確認した。俺も横から画面を覗き込んだ。
「本当だな。サクサク動いてるよ。ちょっとだけフリーズしたみたいだな」
「じゃあ、タブレット返すね」
スヤサキは、天ノ村にタブレットを差し出す。
「あ、はい。ありがとうございます」
不安そうな顔で受け取る天ノ村。
深く息を吸い込み、そして吐く。
「ふぅ〜よし!いきます!」
天ノ村は気合を入れ直し、画面を触った。
ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!
タブレットからけたたましく音が鳴り響いた。
「え?え?なんで?なんで?」とメガネの奥の瞳をぐるぐるさせながら涙目になる天ノ村。
そのけたたましい音に店中の視線が俺たちに注がれる。
天ノ村は慌てて画面をタップしたり、タブレットにある側面のボタンを一度押したり、長押ししたりしているが、音は一向におさまることはなく、最終的に天ノ村は自分の胸で抱きしめるようにして音を小さくした。
それでも音は漏れている。
「うう〜、止まっってぇぇ」
「おねえちゃん。つむぎにかしてみるでしゅ」
紬星ちゃんはテーブルの下に潜り込み、天ノ村の足元からタブレットを奪い取った。
「あ!紬星!コラ!かえしなさ、いたっ!」
ゴツン!
天ノ村はテーブル下に潜り込んだ紬星ちゃんを見ようとして、テーブルのふちに頭を盛大にぶつけてしまった。
「だ、大丈夫!?結星ちゃん」
「お、おい、大丈夫かよ天ノ村?」と俺は席を立ち天ノ村の近くに寄った。
「うう〜、大丈夫です〜」
「そうだ。新しいおしぼりをもらってくるよ、それでぶつけたところ冷やすといい」
「あ、ありがとうございますぅ〜」
俺はメガネの女性店員さんに事情を話して、新しいおしぼりとお店のご厚意で、おでこに貼る冷却シートをもらうことができた。
さっそく俺はもらった新しいおしぼりと、冷却シートを天ノ村に届けに戻った。
タブレットから聞こえていた、あのけたたましい音はもうなくなっていた。
「天ノ村。新しいおしぼりと冷却シートをもらってきたから、これでぶつけたところ冷やせ」
「あ、ありがとうございます」
天ノ村は頬を赤らめながらおしぼりでおでこを吹いた後、おでこに冷却シートをペタっと貼った。
「血は出ていないみたいだな、良かった」
「ホントだね、痕にならなくて良かったよ」とスヤサキも胸をなでおろす。
「そういえば、タブレットの音止まっているな、治ったのか?」
いつの間にか、静寂しているタブレットを見てスヤサキに聞いてみる。
「それがね、すごいんだよ真神君!紬星ちゃんがアレコレ触っていたら止まっちゃったんだ」
「なんだそりゃ?紬星ちゃん、一体何をしたんだい?」
「かんたんなことでしゅ。つむぎが"まほう"をつかったでしゅ」
得意げな表情を浮かべてはニンマリする紬星ちゃん。
「魔法?」俺はオウム返しをした。
「まほうでしゅ。ステラとおなじまほうをつかったでしゅ」
「確かに音が止まるとき紬星ちゃん、ステラと同じ詠唱を唱えていたね」
ワクワクとした瞳でスヤサキは言った。
「どうでしゅ?つむぎはまほうもつかえるんでしゅ」
両手を腰にあて、あの「えっへん」のポーズをとるつむぎちゃん。
今日でそのポーズを見るのは二回目だ。
「すごいなぁ紬星ちゃん。ボクにも教えてほしいなぁ」
「それはだめでしゅ。」
「ええ〜、どうして〜?ボクも魔法使ってみたいな」
スヤサキは両手を組み、お願いする。
「つむぎにもどうしてつかえるかわからないからでしゅ。
おねえちゃんはが、さわったものをなおすことしかできないでしゅ」
つむぎちゃんは得意げにそう話しているが、
どうやら本人にもわかっていないようだな。
なんでも天ノ村が触って動かなくなった機械だけ治せるらしい。
不思議なこともあるものだ。
「そっかぁ残念。ボクも魔法使いになりたかったな」と残念がる。
「すみません、お客様?」と声をかけられ振り向くと、先ほどおしぼりと冷却シートをくれたメガネの女性店員さんに声をかけられた。
メガネの女性店員さんは「誠に申し訳ありません。代わりの端末を持ってきましたのでこちらをお使いください。そちらの端末は、お預かりしますね」と言い、別のタブレットと交換してくれた。
「ありがとうございます」と俺はお礼を言ってタブレットを受け取った。
「それじゃあ、もう一度私が…」
「「「それはダメ(でしゅ)」」」
また自分でタブレット操作しようとする天ノ村を三人で制止した。
「うぅぅ」と落ち込む天ノ村であった。




