《第十二話 姉妹の再会》
「あ!つむぎちゃん!?」
つむぎちゃんはお店前で店内を覗き込んでいる女性に向けて、
「おねえちゃ〜〜ん」と叫び、駆け出した。
呼ばれた女性は「紬星!?」と応え、近寄ってきた紬星ちゃんを抱きしめた。
まさかこんなところで、探してた紬星ちゃんのお姉さんに会えるとは思わなかった。
「もう!紬星ったらどこに行っていたの!?」
涙目になりながら妹を叱る姉。
怒っているけど、心なしか安堵の表情を見せる。
お姉さん、ずっと心配だったんだろうな。再会できて良かった。
「おねえちゃんこそ…どこいってたでしゅか?
つむぎは…つむぎは…さびしかったでしゅよ〜」
さっきまで平然としていた紬星ちゃんも、ついには泣き出してしまった。
やっぱり不安だったんだな。
「私はずっと紬星を探し回ってたんだから」
「良かったね、紬星ちゃん。お姉さんに会えて」
「うん。ありがとうでしゅ、よぞらおねえちゃん、ようたおにいちゃん」
「ところで紬星…こちらの方たちは?」
俺たちの存在に気づき、紬星ちゃんのお姉さんは恐る恐る聞いてきた。
「よぞらおねえちゃんとようたおにいちゃんでしゅ。つむぎといっしょにおねえちゃんをさがしてくれたでしゅ」
「そ、そうだったんですか。あ、あの…ありがとうございます。妹が大変お世話になりました。そ、その、う、うちの妹が何か粗相をしませんでしたか?」
妹の頭を撫でながらこちらを伺うお姉さん。
「いやいや、そんなことありませんよ。紬星ちゃんはとっても良い子でしたよ、お姉さん」
スヤサキが満面の笑みで応える。
実際に紬星ちゃんは、スヤサキの言う通り、とても良い子だった。
気丈に振る舞っていて、この年頃の子供にしては大したものだと感心していたところだ。
まあそれでもお姉さんに再会したら緊張の糸が切れて泣き出したのは、
子供らしく見えた。
「はいでしゅ。つむぎはいいこでしゅた」
両手をグーにして腰にあて「えっへんのポーズ」をしている。
「もうこの子ったら」
そんな紬星ちゃんの頭を撫でてやるお姉さん。
撫でられた紬星ちゃんはニヒヒと笑った。
「本当にありがとうございました。何かお礼をしたいのですが…」
お姉さんはオズオズとこちらの機嫌を伺うようにして聞いてきた。
「いや、別に気にしなくても…」
「ひぃ!」
俺が応えようとするとなぜだかお姉さんは怯えてしまった。
するとスヤサキが間に入ってきたて
「ごめんね、真神くんは顔が怖いから」
「うっ!」
「あはは、まあまあ」
「ようたおにいちゃんはこわいかおでしゅけど、
おはなちてみるといいひとでしゅ」
お姉さんの袖をつまんで教えてあげる紬星ちゃん。
「ご、ごめんなさい!わ、わたしあまり男の人と話たことなくて」
あたふたと慌てるお姉さん。メガネも白くなってきてる。なんて漫画的な反応をするんだこのお姉さん。
「うぅぅ…ごめんなさい…」
頭を下げて謝るお姉さん。
「いや、そんな、謝らなくていいから。
こっちこそなんだか怖がらせて、ごめんなさい」
俺もお姉さんに頭を下げる。
「いえ、いえ、そんな私こそ、勝手に怖かってごめんなさい」
頭を下げるお姉さん。
「そんなこと言ったら俺の目つきが生まれつき悪いから…ごめんなさい」
お姉さんに頭を下げる俺。
「もう!ちょっと謝り合うのはそこまでしてお店入ろうよ」
スヤサキは俺とお姉さんの謝り合戦を見て業を煮やし、店に入るのを急かしてきた。
「それもそうだな。お姉さん、せっかくだから俺たちと一緒に食べないか?」
「えっ?一緒に?良いんですか?」
「うん、いいよ。さっきまでボクたちも紬星ちゃんと一緒に食べようと思って、ここに来たんだから」
俺はお姉さんを見て
「そういうことだから、遠慮しなくていいぞ」と食事に誘った。
紬星ちゃんはお姉さんの顔を見上げて「おねえちゃん…」と心配そうに言った。
「そ…そうですか、そ…それならお言葉に甘えて…」
紬星ちゃんに見つめられお姉さんは、申し訳なさそうにも俺たちとの食事を受け入れてくれた。
「やったね、紬星ちゃん?」
「はいでしゅ!」
スヤサキと紬星ちゃんは、手を繋ぎお店に俺とお姉さんをおいて入っていった。
取り残された俺とお姉さんの間にほんの少し気まずさが残る。
「そ、それじゃ俺たちも入ろうか?」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「そうだ、まだ俺たちの名前いってなかったな。
俺は真神陽太です。よろしくな」
俺たちがまだお店に入ってこないのをおかしいと思ったのかスヤサキが引き返してきた。
「ちょっと何をモタモタしてるかな。そんなんだとお店からお寿司がなくなってステラのフィギュアがゲットできなくなるかな」
なんでお前もステラのフィギュアが欲しいんだよ。
「ああ、すまん。今ちょうど自己紹介してたところなんだ」
「ふーん、そうだったの。ごめん、ボクもお姉さんに自己紹介してないや。
はじめまして、ボクは須夜崎夜空っています。よろしくね」
ペコリと頭を下げるスヤサキ。
「は、はい。わ、私は天ノ村結星です。如月女子学院の高等部一年生です。こっちは妹の紬星です」
お姉さん、高一だったのか。中二くらいかと思っていた。




