《第十一話 寿司くいねぇ》
ぐぅううぎゅるる〜
盛大につむぎちゃんのお腹が鳴る。
その後にすぐにつむぎちゃんは「おなかすいたでしゅ」と言った。
「「………」」
見つめ合う俺とスヤサキ。
そして同時に「はぁ〜」っと胸をなでおろす。
「なんだ、お腹が痛いのかと思って心配したかな」
「ああ、確かにな。でも良かったよ、お腹が空いているだけなら」
「よくないでしゅ」ぐぅううう〜
「ああ、そうだな。ごめん、お姉さんを探す前に
なにかお腹に入れとこう」
「いいね。とりあえずコンビニに寄ってみる?」
「そうだな」
このビルの中にもコンビニがあったのを、
屋上に来る途中にみかけた。
立ち上がったつむぎちゃんが俺の袖を引っ張り言った。
「おすしがたべたいでしゅ、まほうしょうじょステラのミニフィギュアがほちいでしゅ」
「お寿司?魔法少女?フィギュア?」
「魔法少女?のミニフィギュアがほしい…のかな?」
「はいでしゅ」
「もしかして、それって今スシ丸でやってる魔法少女ステラとのコラボキャンペーンだよね?」
「はい、そうでしゅ。つむぎとおねえちゃんはきょうはステラのフィギュアをぜんぶそろえるでしゅ」
「わああ、それは凄いね。ねぇ真神くん?
ボクもお寿司が食べたくなったかな」
「ええ!お前まで何言い出すんだよ、だいたいその寿司屋はどこにあるんだ?」
「えっとね。今調べてみるからちょっと待ってね」
スヤサキはスマホをスイスイと操作して、寿司屋を検索する。
「あっ!ここから結構近い場所にあるよスシ丸。行こうよ、真神くん!」
「いや、しかしつむぎちゃんのお姉さん探しの途中だしな…」
「でもでも、つむぎちゃんすっごくお腹空いているみたいだよ。本当だったら今頃お姉さんとお寿司を食べていたのかもしれないよ。
可哀想だよ、こんな小さい子がお腹を空かせているなんて、見てられないよ。真神くんもそう思うでしょ?」
うっ!?確かにこんな小さい子がお腹を空かせているのは見ていて気持ちいいものではない。何か食べさせてあげたい。
俺の好きな映画に出てくるお婆ちゃんも「一番いけないことは、お腹が空いてることと独りでいること」だと言っていた。
今のつむぎちゃんはまさにその状態ないか。
お腹が空いているし、一緒に渋谷に来たお姉さんとはぐれて独りだった。
今は俺たちがついているけど、本当は不安でいっぱいかもしれない。
ここはせめてお腹を満たしてあげるのが、今の俺達にできることじゃないのか?
ここはお姉さん探しは中断して、お寿司を食べに行こう。
「よし、わかった。一旦、お姉さん探しは中断して、その寿司屋でお寿司を食べよう。つむぎちゃんもそれでいいかな?」
お腹をさするつむぎちゃんに聞いてみたところ、お寿司が食べれると聞いて背筋がピンとなり立ち上がった。
「おすしたべていいの?」
「そうだよ。お寿司食べて良いんだよ。しかもステラのフィギュアがもらえるスシ丸で食べるんだよ、つむぎちゃん」
「ステラのフィギュア!」
「やったね!つむぎちゃん」
フィギュアの事を聞いて小躍りしだすつむぎちゃん。しかもスヤサキも一緒に小躍りしだしているし、お前は恥ずかしいからやめてくれ。
人の視線が集まりだしてきている。早いとここの場を移動しよう。
「そ、それじゃ行こうか。スシ丸に」
俺は足早に先頭を切って、エレベーターに向かう。
地上に降りて、スシ丸の方に行こうとする俺に
「あ、真神くん。そっちじゃないよ。こっちだよ」
そうだ、俺はスシ丸の場所を知らないんだった。
「おお、すまん」
「もう、おっちょこちょいだな」
「おっちょこちょいでしゅ」楽しそうスヤサキの真似をして言うつむぎちゃん。
今度はスヤサキを先頭にスシ丸を目指すことにする。
つむぎちゃんはまたスヤサキと手を繋ぎ、歌を歌い始めている。
気分がいいと歌いだしてしまうようだな。
子供のこういう無邪気なところは可愛くていいな。
「楽しみだね〜お寿司?」
「はい、でしゅ」
笑顔の二人を見ていると、なんだか本当の姉妹のように見えてきた。
スヤサキは男なんだけどね。
つむぎちゃんの本当の姉は、今頃どこで何をしているのだろうか。
「ねぇ、つむぎちゃん。ステラのキャラだったら誰が一番好きなの?」
「つむぎはステラでしゅ」
「ステラか〜良いね。ボクはルナが好きかな。真神くんは?」
「ごめん。そのアニメ見たことないや」
「ええ〜面白いのに〜」
話をしているうちにお店に着いた。
本当に駅から近い場所にあった。
マグロがはちまきを巻いているキャラが、看板に描かれていた。
お店の入り口まで近づくと、店内を丸メガネの女性が覗き込んでる。
お店に入ろうか迷っているのだろうか?
するとスヤサキと手を繋いでいたつむぎちゃんが
手を離し、走り出した。




