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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第十話 下着も本格派》

「お前‥もしかして高いところが怖いのか?」

「うっ!そ、それは…その…」

もじもじ、ソワソワ。汗だらだら。スヤサキの目はぐるぐる泳いでいる。


「じゃあ行こうか?」

「ど、どこに?」

「あそこまで行くんだよ」

俺が指さしたのは、ここの展望台の柵だ。

しかもこの展望台の柵、ガラス張りになっているのだ。

そのせいで、開放感が凄い!丸見えだ!渋谷の街並みが丸見えだ!あんなとこまで見えてる。

いいのか?エッチだ!そんな感想が漏れそうなくらいとにかく開放感が凄いんだ。


「むっ!無理だよ!無理無理!!」

「大丈夫だって、落ちたりしないよ」

「で、でも…急に床が崩落ほうらくしたりしないかな!?」

「いや、しないよ」

「テレビのドッキリか何かで、落とし穴とかないかな!?」

「ないって、なんだよテレビのドッキリって」

「じゃあ、あれかな?巨大な怪鳥かいちょうが、ボクの肩を鷲掴わしづかみにして、今晩のひな鳥のご飯に」

「どういう世界にいるんだ!お前は!」

「ハッ!実は柵の近くの床はトランポリンになっていて、ビルからボクを落とす気だね!」

「だから、なんだよ!床がトランポリンって!?ないよ!そんなの」

「だったら!やっぱり落とし穴だ!」

駄々(だだ)をこねるスヤサキに突っ込むのも大変だ。


俺は先にガラス張りの柵に手を着いて、

街の景色を見ているつむぎちゃんを指差ゆびさして言う。


「ほら見てみろよ。つむぎちゃんなんて既に柵の方に行って渋谷の街を見下ろしてるぞ」

「ホ、ホントだ…凄いな、つむぎちゃん。なのにボクは…」

自分より小さな子供が平気でいるのを見て、

愕然がくぜんとするスヤサキ。


「よぞらおねえちゃ〜ん、けしききれいでしゅよ〜。こっちきて、いっしょにみるでしゅ〜」

ついにはつむぎちゃんに呼ばれてしまった。


「ほぉら、つむぎちゃんも呼んでるぞ〜?」

「ううぅ…なんだか嬉しそうだね。真神くん。それはどういう意味かな?」

そんなににらむなよ。しかも涙目でさ。ウルウルさせるな。


「まあ、そう睨むなよ。あれだったら手を繋いでやろうか?」

「うん、お願い」

「え?」

「ん?ダメかな?お願いだよ…」

「あ、いや。別に大丈夫」

少しからかうつもりが、涙目のまま懇願こんがんされた。

本当に怖いんだな。 


仕方なく俺は右手を差し出した。

それに左手を重ねるスヤサキ。


「ありがとう。ふー、よし、行こうか」

手を握ってやったら、顔がパァッと明るくなった。

さっきまで怖がっていたのにスヤサキは自分から柵の方へ向かいだした。


 

「ひとがごみのようでしゅ」


つむぎちゃんが、なんか怖いこと言ってる。

「つむぎちゃん、どこで覚えたんだい?そんなセリフ」

「アニメのセリフでしゅ」

アニメのセリフだった。


「はぁ、本当に綺麗だね。高い場所ってこと忘れそうなくらい綺麗だよ」

いつの間にか繋いでいた手を離し、柵の手すりを握るスヤサキ。

つま先立ちになり、少し前のめりで渋谷の街を覗いていた。その直後にビル風が吹いた。

その風はあろうことかスヤサキの履いてるスカートをたくし上げ、下着をあらわにさせた。


ん?んんん!!?


一瞬見えた下着はなんだか男物ではなく、

女性が履く下着、そのものに見えた。


「わぁ凄い風だね」


スヤサキはスカートが風で捲れたのも気にせず振り返った。

満面の笑みを俺に見せてくる。ついでにパンツも見せてくれた。


俺がパンツのことに気を取られていると、

つむぎちゃんが「ううぅ…」とうめき声をあげて

しゃがみ込んでしまった。

つむぎちゃんはお腹を手で押さえている。

どうした?お腹を痛めてしまったのだろうか?


「え!つむぎちゃん!大丈夫かな?

お腹痛いのかな?」

つむぎちゃんの顔を覗きこみ、心配そうな顔をするスヤサキ。

俺も近くに寄ってつむぎちゃんの顔を覗き込もうとしたのだが…困ったことにスヤサキのパンツが見えている。

もろ見えだ。

やっぱりどうみても女性物の下着だ。

青と白の縞パンって…お前はアニメキャラかよ!

こいつ下着まで女装してるのか?


「ねぇ、どうしよう?真神くん、つむぎちゃん…真神くん?」

返事をしない俺をいぶかしく思ったスヤサキは、

俺の固まって動かない視線の先を追って、気付いた。


「はっ!ど、どこを見ているのかな!!!/////」


俺の視線に気がついたスヤサキが慌てて、スカートを手で押さえる。

顔を赤く染めながら。パンチラをガン見していてことが早々に本人にバレてしまった。

はっ!俺は何を!青と白のボーダーラインに釘付けになっているんだ。男の本能がそうさせたのか!?ええい!!小さい子どもがお腹をおさえてうずくまっているというのに!


「いや、悪い。視界に入ってきたから、つい見てしまった。でも…お前、その下着はさすがに…」

「こ、これのどこがおかしいのかな!?」

なおも顔を赤くしてスヤサキは睨む。

「だって、それ女性用の…」

「ボ、ボクの女装は下着も本格派なんだよ!」


女性物の下着を履いていることについてふれたら、

顔を真っ赤にして怒り出してしまった。

一応言っておく、スヤサキは男なんだ。

でも今のパンチラでわからなくなってきた。

脚もツルツルだし…。

こいつの女装へのこだわりは伊達じゃないようだ。


頬を膨らませながら睨むスヤサキをなだめながら

つむぎちゃんのほうを伺う。今はこっちのほうが重要だろう。


「つむぎちゃん、大丈夫か?どこか痛むなら病院に…」


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