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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第八話 新しいコーヒーカップが欲しいな》

「つむぎちゃん、何階でお買い物したのか、覚えてるかな?」

スヤサキはしゃがみこんでつむぎちゃんと目線を合わせる。

「ごめんなしゃい。おぼえてないでしゅ」

つむぎちゃんは残念そうに下を向いた。


「うーん、それじゃあ、何を買ったか、覚えてないかな?」

「おねえちゃんはこっぷをかってたでしゅ」

「コップ?だったら雑貨屋さんかな?この施設だと…

あっ!五階にあるみたいだね、雑貨屋さん」

入口の案内板を見てスヤサキは言った。


「みたいだな。とりあえずそこに行ってみるか?」

「そうだね。それでいいかな、つむぎちゃん?」

「りょーかいでしゅ」と右手で敬礼のポーズをとる。


エレベーターで五階に行こうと思ったが、

「エスカレーターで行こうよ、もしかしたらつむぎちゃんのお姉さんとすれ違うかもしれないから」とスヤサキが提案した。

「そうだな、それがいい」

「じゃあまた手を繋ごう、つむぎちゃん?」

「はいでしゅ」

スヤサキはつむぎちゃんの手を引き、上りのエスカレーターの方へ向かった。


キュルルルリィン!とニ○◯タイプのあの音が俺の頭に鳴り響いた。


すると、スヤサキたちが視線を集めていることに

俺は気づいた。

駅で待ち合わせしたときもそうだったが、

やはり男の視線が多い。


「あの子めっちゃ可愛い」

「アイドルの人かな」

「子供連れてる、まさか娘?」

「ばっか、妹だろ」

「小さい子のほうが可愛いぞ」

「ペロペロしたい」などなど。

一部犯罪臭のすることを言っている輩もいるなぁ…つむぎちゃんが危ない!誰が言ったか特定して殴っといたほうがいいか?


二人の身が心配になってきたので、すぐに二人のあとを追う。

結局このあと五階までの間、つむぎちゃんのお姉さんに会うことはなかった。

俺たちは五階に着いて店内を見回してみた。

生活雑貨を扱うチェーンストアのようだ。

俺の住んでる地域にもあるな。

店内は黄色を基調とした内装になっている。

初めて入るものだからどこに何があるのかわからず、

あちらこちらと視線をキョロキョロとしてみる。


「つむぎちゃん、このお店のどこらへんで、お買い物をしたのかな?」

「こっちでしゅ」とつむぎちゃんはスヤサキの手を引き歩き出した。

俺も二人のあとを追う。ほどなくして俺たちは食器を扱う棚の前に到着した。


「ママは、いつもこれに"こーひー"をいれてのんでるでしゅ」

つむぎちゃんが指をさしたのはコーヒーカップだった。

なるほど、つむぎちゃんたちはお母さんにコーヒーカップセットをプレゼントする気なんだな。

「コーヒーカップだね。お母さん、コーヒー好きなんだね?」

「すきでしゅ。まいにちのんでるでしゅ。つむぎものんだことがあるけど、にがくてのめなかったでしゅ。でもおかあさんがすきだから、つむぎもすきでしゅ」

「そうなんだ。うん、いいよねコーヒー、ボクも好きかな。真神くんもそうだよね?」

「おお、好きだな。俺も毎日飲んでいるし」

特にマスターの淹れるコーヒーは絶品だ。

「喫茶ペンブローク」を辞められる気がしない。

それほどマスターの淹れるコーヒーを俺は気に入っている。


コーヒーを毎日飲むきっかけになったのもマスターの淹れるコーヒーだ。

俺は目の前に並んであるコーヒーカップを一つ手に取る。

そういえば新しいコーヒーカップ欲しいな。

家には一つだけコップがあるんだが、一人暮らしを始めてからその一つで、すべての飲みものを飲んでいる。

カエルが王冠を被っている絵が描かれているコップだ。

せっかくの機会だし、新しいコーヒーカップを買おうかな。


俺は棚に並べてあったコーヒーカップを一つ掴んだ。

「真神くん?何してるかな?つむぎちゃんのお姉さんを探しに来たんだよ、コーヒーカップ眺めてないで、真神くんも探してほしいかな」

「悪い、悪い。俺も、コーヒーカップが欲しくなってな」

コーヒーカップに気を取られていたら、スヤサキに怒られてしまった。


「もう、ちゃんとしてよ」

「ごめんて」

スヤサキにジロッとにらまれる。

スヤサキからの目線を避けて、俺はつむぎちゃんに話しかけた。


「どうかな、つむぎちゃん?お姉さんいる?」

「ううん、いないでしゅ」

首を横に振り、がっくりと肩を落とすつむぎちゃん


(ここにもいないのか…)


一縷いちるの望みをかけてこの雑貨屋に来たが、ダメだったみたいだ。

つむぎちゃんの話からすると、

ここで母の日のプレゼントを購入したら、

食事をして帰る予定だったそうだ。


「そうだ、店員さんに聞いてみようよ。つむぎちゃんのお姉さんのこと?」

スヤサキは俺を指差し提案した。


「そうか!店員さんがつむぎちゃんのことを覚えていたら、お姉さんのこともわかるかもしれないな。よし聞こう!」

俺もスヤサキを指差し応えた。


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