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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第七話 スヤサキの再挑戦》

「ん?あれ?どうしたのかな?真神くん?」

手を止めた俺に疑問を抱いたスヤサキ。

「なぁ、スヤサキ。俺思ったんだけど」

「うん、なにかな?」

「この最後のワンプレイ…スヤサキがやらないか?」

「え!で、でも、ボクで大丈夫かな?」


「心配いらねぇよ。こいつのお尻の方を狙って持ち上げれば頭から穴に落ちるから」

「そ、そうなんだ。それだけで良いならボクにもできるかも」

「よぞらおねえちゃん、がんばるでしゅ」

「ありがとう、つむぎちゃん」


つむぎちゃんを俺に預け、操作ボタンの前に立つスヤサキは、緊張している。

「スヤサキ、落ち着いていけよ。動かすのは最初の横の動きだけで、奥の動きはほとんど動かさなくても良いから」

「う、うん……それじゃぁお金いれるね」

スヤサキはお金をクレーンゲームに入れてスタートさせた。

ターゲットとに目線を合わせて距離を測る。


「よし…いくよ」

「お、おう」

ごくり…と思わずこちらもつばを飲み込んだ。緊張感が伝わってくる。

ただ、クレーンを横に動かして止まりたい場所で止まるだけなのに。


スヤサキは最初のボタンを押し、絶妙な場所でボタンを離した。

うまい!この位置なら文句無しでブレッドのお尻を持ち上げて穴に落とすことができるぞ。


「うまいじゃあないかスヤサキ。この位置ならいけるぞ」

「いけましゅ!」つむぎちゃんも思わずガッツポーズ。

「ありがとう、でも次がまだあるんだ」


そう、まだ次がある。第二のボタン。奥行きの移動を行うボタン。

正直、もうこの位置から動かなくても大丈夫なのだがこのクレーンゲームの特性上、一度は押さないといけないことになっている。

だから一瞬だけ押して、すぐに離すのがベスト。

ドクン、ドクンとまるで、心臓の音だけが聞こえてくるかのようなほど…静寂。


スヤサキはボタンの上に手を置いたまま動かない。じっくりとたっぷりと時間が流れていく感覚に襲われる。

十分…いや二十分の時が流れた気がする、体感でね。実際は十秒くらい?


「はぁ!」ビクッとスヤサキの体が震えた。

するとクレーンは下に降りて行き、ブレッドのお尻をキャッチ。

お尻だけ掴まれ、持ち上げられたブレッドはドンドン逆立ちするような体勢に近づき、そのまま出口の穴に真っ逆さまに落ちていった。


「おお!やったな!スヤサキ。ブレッドをゲットできたじゃあないか」

「すごいでしゅ!よぞらおねえちゃん」


………。


スヤサキは何も返事しないで、ただ、手元のボタンを見ているだけだった。


「スヤサキ、どうした?初めてぬいぐるみが取れて、喜びのあまり動けなくなったか?」

ギギギギっとぎこちない動きでこちらに振り向いてスヤサキは言った。

「ボ、ボク、押してない…」

「はぁ?」


「ボク、押してない…ボクが押す前に…クレーンが下がっちゃったよ…」


スヤサキの初めてのクレーンゲームでの景品ゲットは、なんとも微妙な感じで終わってしまった。


「うぐぅ…ミスしちゃうんじゃないかって思ったら、すごく緊張しちゃって動けなかったよ…情けない」

自分の情けなさにしょんぼりするスヤサキ。


「ま、まぁ別に気にしなくても良いんじゃあないか?考え方によっては、ボタンの制限時間を逆に利用した良いテクニックだったと思うぞ」


「ほ、ホント?」

「ああ、ホント、ホント。考えてみたらクレーンをあの位置から動かさないやり方は今のがベストなやり方だと思うぞ」


「よぞらおねえちゃん、しょんぼりしないで。つむぎのすもぷりをなでてみるでしゅ」

つむぎちゃんも自分のぬいぐるみを見せて慰めてくれてる。なんて優しくてしっかりした子なんだろう。

だからそんなに気を落とすな、スヤサキ。


「ほら、欲しっがってたぬいぐるみ」景品口からブレッドのぬいぐるみを取り出し、スヤサキに差し出す。

「あ…」ブレッドのぬいぐるみを前に瞳をキラキラさせて、ブレッドのぬいぐるみを抱きしめる。


スヤサキはその大きな瞳を閉じて

「ありがとう…真神くん、キミのおかげだよ」

「取ったのはお前だよ、スヤサキ。お前が頑張ったから取れたんだ、そのぬいぐるみは」

「うん、それでもありがとうだよ。真神くん」


結局ゲームセンターでは、店内を一通り回ってみたが、つむぎちゃんのお姉さんには会うことはできなかった。

ゲームセンターから出て別の場所を探すことにした。


ぬいぐるみを持ち歩いて、つむぎちゃんのお姉さんを探し回るのは大変だから、俺たちは渋谷駅のコインロッカーを利用することにした。

ぬいぐるみを駅のコインロッカーに預けた。

次に向かったのは、渋谷駅に直結しているショッピング施設。

ここでつむぎちゃんたちは、お買い物をしたようだ。


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