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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、迷子幼女に会う》
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《第六話 クレーンゲームは得意です》

スヤサキの言う通り、ぬいぐるには足だけ浮き上がり、頭の重さに耐えきれずアームがすり抜けていった。

だが、これは想定の範囲内だ。

最低二回はトライすると心の中で宣言している。

逆立ちする手前まで足が持ち上がったぬいぐるみは重力によって再び地面に倒れる。


これは失敗…と思いきやぬいぐるみが倒れた反動で、バウンドし、穴の方へと近づいていった。

この一度のバウンドにより、ぬいぐるみの体の半分が穴の上のさしかかる状態になった。


「あ!すごい!もうすぐ落ちそうだよ!真神くん」

「落ち着けスヤサキ。次で仕留められるかが重要だ」


そう、クレーンゲームはいかに少ない投資で景品を取るかが面白いゲームだ。

しかも一回目のプレイで、穴の上にぬいぐるみの体の半分を持って来れたのはかなりラッキー。


このぬいぐるみは今、絶妙なバランスで穴に落ちるのを耐えているのだ。

こうなったらもうこっちのものだ。まな板の上の鯉とはこういうことをいうのだろうな。

そして二回目のトライ。

続いて俺が取った行動は、ぬいぐるみのお腹の部分にアームの片側だけを押し込むやり方だ。


体が半分穴の上に来ているぬいぐるみはお腹をアームに押し込まれてバランスを崩し、見事、穴に落ちていった。

出口から白いきつねのぬいぐるみを取り出しつむぎちゃんにあげた。


「はい、つむぎちゃん。これ欲しかったんだろ?」

「ありがとでしゅ、ようたおにいちゃん」

嬉しそうに目をキラキラさせてぬいぐるみを抱きしめるつむぎちゃん。

こんなに喜んでくれるならやってよかった。


「良かったね、つむぎちゃん」

「はい、でしゅ」

「じゃあ次はこっちの犬のぬいぐるみだな。これが欲しかったんだよな?スヤサキ」

「え!?ボクのも取ってくれるの?」

スヤサキは驚きに満ちた顔をした。

「ついでだ。俺が代わりに取ってやる、まかせろ」

「ううう〜!!ありがとう、真神くん」

スヤサキは涙を浮かべながら

俺の手を握ってブンブン上下に振りながら感謝した。

落ち着けスヤサキ、まだぬいぐるみはゲットしていないぞ。


次に狙うぬいぐるみは、スヤサキが欲しがっている犬のぬいぐるみ。

名前は「ブレッド」。

ブレッドは出口から一番遠い位置に設置させられている。

さっきのスヤサキのプレイのおかげで、中心部分から出口の方向とは逆の方向にぬいぐるみが行ってしまったのだ。


ブレッドはコーギーをモチーフにしたキャラクターなので胴長短足になっている。

頭と体の比重はあまり変わらないと思うので、これは体の部分を掴みに行くのが正攻法のようだな。


ただ、このクレーンゲームのアームはかなり弱々しい。

ブレッドの胴体を掴むのは簡単だけど、持ち上がらなかったり、運良く持ち上げられても、クレーンが上限の位置まで行ったときの衝撃で落ちてしまうだろう。


これらはすべてスヤサキがプレイしたときに把握した情報だ。

おそらく胴体を掴むやり方では、かなりの金額を投資しなければゲットできないだろう。


ターゲットは出口から最も遠い位置にいる。

お金もそんなにかけたくない。

たぶんスヤサキならいくらでも出しそうだけど、つむぎちゃんの前でそんな金銭感覚が狂ったようなお金の使い方は見せられない。


そこで俺がとった行動は…

「すいませ〜ん店員さ〜ん。この犬のぬいぐるみの位置を変えてもらえませんか〜?」

スヤサキは「え!?真神くん、なんだいそれ?」と言うような顔をしている。

驚きを隠せていない顔だ。

つむぎちゃんは「ようたおにいちゃん、だいたんでしゅ」とつぶやく。

そう、俺は「店員さんに景品を初期位置に戻してもらおう」作戦を決行したのだ。

クレーンゲームでは、欲しい景品がなかなか取れない時はこうやって、店員さんに景品を取りやすい位置に移動してもらうことも可能なのだ。


店員さんの中には、あと一回で取れますよ〜って位置までずらしてくれる優しい店員さんもいる。

この店員さんはどうかな?

残念、真ん中辺りだ。

この位置からブレッドのぬいぐるみを取ろうとすると、一回では無理そうだろう。


「真神くんすごいね。店員さんと知り合いなの?」

「いや、そういうわけじゃないよ。ゲーセンのクレーンゲームではこういうサービスもやっているんだよ」

「そうなんだ。初めて知ったよ」

「これでブレッドが取りやすくなった」


俺はそこから三回ほどプレイをして、なんとか出口の穴にブレッドを寄せることができた。

あとはブレッドのお尻を持ち上げてあげれば、ブレッドを頭から穴に落とすことができる。


次のプレイで確実に落とせる。そこで俺はふと手を止めた。


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