《第五話 ちょっとクレーンゲームをする》
つむぎちゃんが向かったクレーンゲームは、最近子供にも大人にも大人気な漫画の「すもぷり」というキャラが景品のクレーンゲーム。
小さくてプリプリとして、可愛いと特に女性に大人気だ。
スヤサキも同じクレーンゲーム台に立ち、ガラスにおでこを近づけていた。
つむぎちゃんも同じくガラスにおでこを近づけていた。
「ん〜やっぱり可愛いよね、すもぷり?」
「可愛いでしゅ〜」
二人はすもぷりの可愛さにご満悦である。
ちなみに、クレーンゲーム台のガラスまで届かない
つむぎちゃんは、俺が抱きかかえてあげている。
つむぎちゃんに「ようたおにいちゃんだっこでしゅ」と言われたからだ。
「もういいかい、つむぎちゃん?」
身動きがとれないのでおろしていいか聞いてみる。
「はいでしゅ」と許可が出た。
優しくつむぎちゃんをおろして、
俺も「すもぷり」とやらを改めて見てみる。
なんだかよくわからないけど、力士が巻いている帯のようなもの「廻し」を巻いている小さい白い狐が主役のようだ。
そのとなりには、二匹のキャラがいた。
右には二足歩行の犬、左には二足歩行のハムスター。
「ねぇ、真神くん。少しだけ遊んでいかない?
ボク、ブレッドが欲しいんだ」
「何言ってるんだよ。俺たちは今、つむぎちゃんのお姉さんを探してる途中じゃないか」
「つむぎもすもぷりほしいでしゅ」
「ええ!つむぎちゃんも!?まいったな〜」
「ねぇいいでしょ真神くん?つむぎちゃんもすもぷり好きみたいだし」
「おねがいでしゅ、ようたおにいちゃん」
瞳をキラキラとさせて見つめられる。
二人に懇願されて首を縦にふるしかなかった。
「う〜わかったよ…少しだけ遊んでいこう」
「やったぁ!それじゃボク両替してくるから台取っておいてね」
「ああ、わかった」
スヤサキが両替をしに行ったあとに気づいたけど、このクレーンゲームは電子マネーでも遊べるみたいだ。
「よし!軍資金は確保したよ。取り尽くしちゃうかもね」
「やめろ、荷物が増えるだろ。一人一個までだ」
「ぶー、ケチぃ〜全種類とっても良いじゃん」
スヤサキは頬を膨らませ、プリプリ言い出した。
「ほら、まだつむぎちゃんのお姉さんに会えてないんだから、大荷物持って歩くの大変だろ?」
「ん~それもそうかな。わかった!一個だけにするよ。じゃあ、さっそくボクから」
スヤサキはクレーンゲーム台にお金を入れてプレイを始めた。
スヤサキが狙うのは、犬のコーギーのようなキャラのぬいぐるみ。
名前は「ブレッド」パンってことか。
「あ!あ~もう!」一回目は失敗。
まぁそんなに簡単には取れないだろう。
「あ!ちょっと浮いたのに」二回目も失敗。
今度はぬいぐるみの体が浮いたと思ったけど、頭に比重がかかっているぬいぐるみのようで、このクレーンゲームのアームの力では持ち上がらないみたいだ。
クレーンゲームのアームが弱々なのってあるあるだよな。
「もう一回!」スヤサキは三回目にトライするようだ。
がんばれ〜
結局スヤサキはこのあと十回ほどトライしたが、ぬいぐるみを浮かせるだけでお目当ての「ブレッド」は取ることができなかった。
スヤサキは壊滅的にクレーンゲームの才能がなかったのだ。
「うう〜ブレッド〜〜」涙目になってブレッドを見つめるスヤサキ。
「つむぎもやりたいでしゅ」
今までのスヤサキのていたらくを見ていたつむぎちゃんが、次のチャレンジャーに名乗りを上げた。
つむぎちゃんはやる気だ。
でもつむぎちゃんはお金を持っていないみたいなので、スヤサキが代わりにお金を出してあげた。
「ファイトだよ!つむぎちゃん」
「はいでしゅ」
つむぎちゃんにエールを贈るスヤサキ。
つむぎちゃんは、俺の腕の中でガッツポーズをとる。
つむぎちゃんの身長では操作ボタンのところまで届かないので、またまた俺が抱きかかえてあげているのだ。
結果ら言おう。数回チャレンジしたつむぎちゃんもド下手だった。話を聞いてみれば一度もクレーンゲームをやったことがないというのだ。
スヤサキがプレイをしているのを見て自分でもできると思ったのだろうが、お手本が悪かったようでうまくはいかなかった。
つむぎちゃんは口をへの字にして拳を握り「むねんでしゅ」と悔しがる。
「今度は俺が挑戦するよ」
「真神くん、油断しないでね。このクレーンゲーム、アームが激弱だよ」
「ああ、二人のを見てたからだいたいわかる」
つむぎちゃんをスヤサキに預けてプレイ開始。
狙うは穴に一番近いぬいぐるみ。
さっきつむぎちゃんが狙っていた、白いきつねのぬいぐるみだ。名前は「すもぷり」
変な名前だな。
今のすもぷりの位置で考えると、最低二回はトライしなきゃだめそうだ。
俺はクレーンのアームをすもぷりの体の中心よりやや足の方に差し込んだ。
すると頭の重いバージョンのぬいぐるみは、頭は着いたまま足側だけが持ち上がる。
「ああ、真神くん。それじゃあとれないんじゃあないかな。ほら、足だけ浮き上がっちゃったよ〜」
スヤサキはしょんぼりと肩を落とした。




