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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第二章 陽太、ゴスロリ美少女と食事をする》
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《第十話 ゴスロリ美少女のお願い、再び》

「な、なんだよ。良いことって…?」

「うん、それはねぇ。キミがボクのお願いを聞いてくれるかもしれないことだよ」

俺に人差し指を向けてスヤサキはそう言った。


「そ、それは?」

「ボクのマネージャーになってよ!」

うすうす何か頼まれるとは思っていたが、まさか先程「喫茶ペングローブ」で断った、ルーナのマネージャーの件だとは…。


「まっ、待てよ。その件はさっき断ったじゃないか?」

「本当に断ってもいいのかな?キミはこれがないと今夜は野宿だよ」

ホレホレとスヤサキは俺の家の鍵を揺らしている。

「キミはこの鍵がないとお風呂にも入れないんだよ〜臭いよ〜」

「おい!冗談はよせって!早く鍵返せよ!」

俺はスヤサキの肩をつかもうと近づいた。

「わぁ!」

俺の手を上手く避けて、スヤサキは俺の背後に回った。

「あっ!こいつ!」

すかさず俺は後ろを向いてスヤサキを追う。

こいつ!結構すばしっこい!猫か!?


「おい!待てってスヤサキ!」

「やーだよ〜アハハハ〜」

子どものようにはしゃぐスヤサキは素早くてなかなか捕まらない。

ちくしょおおお!あの靴でなんて素早い動きができるんだ?


らちが明かなくなった俺は、必死にスヤサキを追いかけた。

素早く動くスヤサキの胸ぐらを、なんとか掴むことに成功した。

そして一喝。


「おい!ふざけるのもいい加減にしろ!」

「キャァ!!??」

ビクッと肩を震わし硬直するスヤサキ。

思いの外大きい声が出てしまい、周りの人たちの視線が集まった。

やばっ!やりすぎたか!?


俺はすぐにスヤサキの胸ぐらから手を離した。

「ごめん!」

スヤサキは胸元を手で覆い隠し、ジロリと俺を睨んだ。

「女の子の胸元を掴むなんて…下ろしたての衣装が伸びちゃったじゃないか…ひどいよ…」

だんだんとスヤサキの目から涙が滲み出した。

その様子を見ていた周りの人たちがザワザワと騒がしくなった。

しかも人だかりができたうえに、騒ぎを聞きつけた警官もやってきた。


「君ぃ!この女の子に何をやっているんだ?」

「ち、違うんです。こいつから鍵を返してもらおうと思って」

俺は焦って警官に弁明する。

「男が女の子の胸ぐらを掴んで、怒鳴っていると通報があったのだが?」

やばい!これは俺が女の子の胸ぐらを掴んで怒鳴ったことになっている!?


「あ、いや、そうなんですけど、それはちょっとした勘違いで、そもそもこいつはおん…!」

「うわぁ〜ん!ひどいよ〜陽く〜ん、彼女の私を置き去りにして家に帰ろうとするなんて〜!今日は泊めてくれるって言ったじゃなぁ〜い」

いきなり泣きわめくスヤサキ。

ひいいいいぃいいっっっぃい!!!!!なんてことを言い出すんだ!こいつ!!!!


「君ぃ?自分の彼女を置き去りにしようとしたのか?

今日は部屋に泊めてあげるんじゃなかったのか?それでも男か!?」

うるせぇなぁこの警官。こっちの事情も知らないで。こいつは彼女じゃないし、男なんだよ!


「だからこいつはおん…」

「うわぁ〜ん!!!!ひどいよ〜陽く〜ん!!一緒にお風呂に入るって言ったのに〜」さらに大きな声で泣きわめくスヤサキ。

こいつわざとやってるだろ!!!?


「くそぉ!スヤサキやめろよ!!」

「君ぃ!一緒にお風呂に入る気だったのか!!お風呂で彼女と何をするつもりだったんだぁ!?」

うるせぇよ!このおっさん警官!なんでそこが気になるんだよ!


「ちょっとあんた!?警官だからってそんなプライベートな部分まで聞き過ぎでしょうよ!」

「うるさい!とにかく交番まで来てもらおうか?」

「うるさい!???ええ!?ちょっとそれは強引なんじゃ!?」


「待ってください!お巡りさん!陽くん連れて行かないで」

スヤサキは警官に両手を組んで懇願する。

「しかしねぇお嬢さん。この男は自分の彼女に手を上げたクズ男だよ」

「だから!俺の彼女ないし」


「お前はまだ認めないのか!?このクズ男!お嬢さんはなぁ、今夜大好きな彼氏にその身を捧げる想いだったんだぞ!だから家の鍵を返さないんだ!なんでそれがわからないんだぁ!」

ぐわぁぁぁぁぁ!!!気持ち悪いことを言うなぁああ!こいつは男だぞ!!俺にそんな趣味は無いぃぃぃぃぃ!!!


「そんなぁ、お巡りさん恥ずかしいです///」

頬を紅く染めるなぁあああ!!!

「とにかく、交番まで来てもらうよ!」

警官は俺の腕をガシッと掴んで引っ張った。

やばい!このままだと本当に交番に連れていかれる。しかもこの警官、俺の話を全然聞いてくれないし、なんとかしなくてはなんとか!


「おい!スヤサキ、このお巡りさんに俺達はそんな関係じゃないって言ってくれ。あと鍵を返してくれ」

「それだったらぁ〜ボクのお願いも聞いてほしいな〜」

俺の家の鍵を見せつけ、ニヤリと笑うスヤサキ。


「……わ、わかったよ…やるよ、お前のマネージャー…」

「やったー!ありがとう真神くん」


トホホ…なんでこんなことに…キーケースか何か買ったほうがいいな…


こうして俺はスヤサキの女装アイドル活動、

「月見夜ルーナ」のマネージャーをやることになった。

不思議なことに、さっきまでの人だかりは消え、あの警官も何故かいなくなっていた…


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