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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第二章 陽太、ゴスロリ美少女と食事をする》
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《第五話 ナポリタンもおいしい》

こういう風に誰かと二人で食べるのは久しぶりだ。そんなことを思っているとスヤサキはすでにナポリタンを口にしていた。またもや見逃した。


「ナポリタンもおいしい〜♡」


スヤサキは、口の周りをケチャップソースまみれにして、幸せそうな顔をしている。紙エプロンをつけて正解だった。


だってあんなに口の周りがケチャップソースまみれだもん。

べっとりついてるもん。

色白の肌に真っ赤に太く強調された唇はまるでピエロ。

下水溝から「ハァ〜イ、ジョージ〜」である。


「何笑ってるの?」

「ん?なんでもない、なんでもない」


それからスヤサキは、カレーライスとナポリタンを交互に口にしては

「んぅ〜おいしい〜」を繰り返している。そこへ次の料理が運ばれてきた。


「ホットサンド、お待たせしました。ご注文は以上です」

「はわぁ〜!!」

「はい、ありがとうございます」


スヤサキの代わりに俺が返事をした。

目の前に現れた新たな料理に、またもやうっとりするスヤサキ。

なんていい顔するんだよ。恋する乙女か。


カレーライス、ナポリタン、ホットサンド、そしてミックスジュース。

注文したすべての料理がテーブルに並べられた。

なんとも豪勢なディナーになってしまった、主にスヤサキだけだが。

本当にこの量の料理を食べ切れるのか心配になってきた。


「ナポリタン美味しそうだな?少しだけ俺にも分けてくれよ」

「え?ボクのナポリタン食べちゃうの?」


ナポリタンのシェアを要求したが、自分のナポリタンが食べられちゃうと思ったのか、フォークをカランっと落としケチャップソースまみれの口をポカンと開けている。ショックを隠しきれていない。本当にこれだけの数の料理を一人で食べきると言うつもりなのか?


「あっいや、そういうつもりはないんだ。ただこの数の料理を一人で食べ切れるのか、心配になってな」

「全然大丈夫だよ!これくらいの量は普通かな」

「うそだろ?三品も頼んでいるから普通に三人前だろ?」

「食後にチョコレートパフェも食べたいかな」

「まだ食うのか!?)」

俺はその食いっぷりに愕然とした。


「そんなに注文してしまって、お金の方は大丈夫なのか?」

「うん、それは心配しなくても大丈夫かな。何だったらここのお代はボクが払うよ」


バッグから小さい財布みたいなケースを取り出し、中からクレジットカードを出して見せてくれる。

あのクレジットカードは見たことあるな。

俺自身貧乏大学生だからクレジットカードなんて持てるはずもない。

しかし、この「喫茶ペンブローク」で接客のバイトをしていると当然お会計の時にお客さんのクレジットカードを何度も見ることがある。

それゆえ、クレジットカードの種類を覚えていたのだ。

スヤサキの手にあるクレジットカードは上流階級も使っているものだったはずだ。


スヤサキは実はお金持ちの家の子供かもしれないな。

そんなことより、スヤサキの口から嬉しい言葉が飛び出してきたと思うのだが、もう一度聞いてみよう。


「え?今なんて?なんて言ったの? スヤサキ君?」

あたかも驚愕の事実を告げられたときの顔で俺は聞いた。

「え?お金は大丈夫だから心配しないで、何だったらここのお代はボクが出そうか?」

やっぱり聞き間違いじゃあなかった。スヤサキは奢ってくれると言っているのだ。


「え?そんな悪いよ〜」頭をポリポリ。

「そう、だったらやめにする?」

「いえ、是非お願いします」


俺は席を立ち体を九十度に曲げお辞儀した。貧乏大学生にとっては外食代はバカにならない。

秒で建前を捨てて奢ってもらうことにした。正直言って奢ってもらえるのはありがたい。


「うん、素直でよろしい。キミも遠慮せずにいっぱい食べるといいかな。ナポリタン注文する?」

ナポリタンの皿を持ち上げながらニコッと笑うスヤサキ。


食の女神降臨!なんて神々しいんだ。

その笑顔に心と財布が救われる思いだ。主に財布のほうが。


「うん、そうさせてもらう。すいませ〜ん、ナポリタンお願いしまぁ〜す」

スヤサキの食べっぷりをみて、俺もナポリタンが食べたくなった。

だって美味しそうに食べるんだもんこの子。

俺も口の周りをケチャップソースまみれにしたいもん。



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