《第十三話 心に残ったシーンは?》
「なんだ?痴話喧嘩かの次は仲直りのイチャイチャか?」
先にソファに座って俺とスヤサキを見ていた傑がまた茶化してきた。
「「違うよ!」」
「おお!また揃った!」
不覚にも俺とスヤサキはまたハモってしまった。
「じゃあ、今回観た映画の感想会を始めるか」
俺とスヤサキがソファに着いたら、傑が俺とスヤサキの顔をそれぞれ見てそう言った。
「ああ」
「うん、語ろう語ろう。ヨゾラちゃんも一緒に感想会する?」
スヤサキは膝の上に乗せているラグドールのヨゾラちゃんに問いかけた。
ラグドールのヨゾラちゃんは名前を呼ばれて一度スヤサキの顔を見つめるが、「なんだ?呼んだ?」みたいな顔をした後、スヤサキの太ももの上でまた大人しく眠った。
「まずはそうだな〜。心に残ったシーンはあるか?」
傑が俺とスヤサキにそう問いかけた。まず最初に問いかけに答えたのは俺。
「やっぱり俺はアクションシーンだなぁ。ホームズビジョンでシュミレーションした後にその通りに動いていくホームズがかっこいい」
「そうだよね。何でも先が分かっちゃうホームズって凄いよね」
「確かにな。でも予想外の展開もあるってところもある能力だよな。完璧な能力じゃないってとところがまた面白い」
「ボクはね。ホームズとワトソン君の友情が素敵だと思ったな。あんな風にお互いを分かり合って助け合えるのが素敵だよ。二人の会話のテンポが早くていっぱい話し合ってるけど、何も言わなくても分かり合っちゃうのが羨ましいよね」
「ホームズとワトソンは良いバディって感じだな」
「そうだな、陽太。この映画はバディムービーとしても熱いよな、シャーロック・ホームズは」
「そうだよな。孤独なホームズにワトソンだけはなんだかんだ付き合ってあげてるのが良い関係だよな」
「バディムービー?なんだいそれ?」
「『Buddy』って言葉の意味は信頼できる相棒だとか、助け合う仲間って意味で使われる英語なんだ。そういった側面のある映画を『BuddyMovie』っていうんだよ」
「そうなんだ。それがバディムービーっていうんだ。ボクの好きなジャンルかも」
スヤサキはバディムービーが好みなのか。今度おすすめの映画でも紹介してやるか。
「あとはボクの推しのアイリーンが早い段階でいなくなったのは少し悲しいよね。アイリーンは本当に死んじゃったのかな?」
「スヤサキ。そのアイリーンが死んだかどうか何だが…」
「うんうん。それが気になっていたんだよ。ボクの推しキャラがあんなに早く退場しちゃうなんて悲しいかな」
「俺は死んではいないと思っている」
「やったぁ。アイリーン生きてるの?でもどうしてそう思うの?真神くん?」
「原作の小説ではアイリーンが死んだという話がないから、続編があればまたでてくるんじゃないかって思っている」
「一応、アイリーンは二次創作とかなら死亡してるものもあるんだが、あのアイリーンが毒を簡単に飲んでしまうのは疑わしいんだよな」傑が補足はするものの俺と同じでアイリーンが死んでいないと思ってるようだ。
「そっか。それだったらまだ希望があるよね?次回作とかあったら登場するかな?」
「まだわからないが充分にありえるよな。俺も楽しみだよ、スヤサキ」
「なぁ?今度は俺にも聞いてくれないか?心に残ったシーンってやつを」傑が手を上げてそう言った。
「もちろんだ。傑。傑が心に残ったシーンは?」
「俺が心に残ったシーンはホームズたちが林の中でモリアーティ教授の部下たちから逃げるシーンだな。逃げ惑うホームズたちに容赦なく銃や大砲を使っただろ?」
「ああ」
「うんうん」
「あのシーンはスローモーションと普通を交互に流すことで銃や大砲の恐ろしさを凄くいい感じに表してるとても見ごたえのあるシーンになっていた。俺はそう思うんだよな」
「そうだよな。ハリウッド映画とか数多く観てきて銃撃戦シーンや爆破シーンはなんだか非日常すぎてそんなことを思わなくなってきたけど、改めてあのシーンを思い返すと怖いよな」
「うん、怖い怖い。格闘シーンだとかかっこいいシーンに目がいきがちだったけど、宇賀野君に言われてボクも凄い映像だと思ったよ」
「あれも良かったよな?ホームズの女装。時間がなくてオカマみたいになってたのがさ。ホームズ自身も時間がないからこうなったみたいに言ってて、面白かった」
「うんうん。そうだね、女装したホームズはなんだがお茶目で可愛いかったね」
「その辺のシーンで俺が印象的に残って面白かったシーンは、ホームズとワトソン君をガトリングガンで列車の客席ごと蜂の巣にするが、敵の一人がうっかり手榴弾のピンを抜いて、手榴弾を落としてしまったシーンだ。これまた手榴弾が落ちたところが手榴弾がいっぱい詰まってる袋の中だったから絶体絶命。落とした本人の『やっちまったぁ〜』て顔が良かったなぁ」
「ああ、あったあった!「やっちまったぁ〜すまん」って顔を仲間にしてたなぁ。確かにあれは面白かった。可哀想だけど傑作だな」俺はそのシーンのやっちまった敵の顔を思い出して笑った。




