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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、仲間と映画を観て創作意欲を湧かせる》
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《第十二話 もう不意打ちだよ、真神くん》

「急にどうしたんだよ?」俺は後ろを振り返りスヤサキに言った。

「ん?ううん。なんでもないよ。それより早く中に入ろうよ」

哀しそうな顔をしていたスヤサキはすぐに笑顔を作り、猫カフェの中の猫に興味を示した。

「まぁ…そうか」


カランカラン。スヤサキはお店の扉を開けて入店した。

「いらっしゃいませ〜当店は初めてですか?」

受付のメガネをかけたお姉さんが笑顔で迎え入れてくれた。

「はい、3人です。もしかして予約って必要でしたか?」

「大丈夫ですよ。今の時間ちょうど空いています。猫ちゃんたちはお昼寝してる子もいますけど、起きて元気な子もいるので楽しめますよ」

「本当ですか?楽しみです」

「それでは時間はどれにしますか?」

「う〜ん。どれにしようかな〜ねぇ真神くんどれが良いかな?やっぱり3時間?」

「え!?3時間?そんなに居座らないぞ」

「ええ〜。猫ちゃん可愛いよ〜。時間があっという間に過ぎていくと思うかな」

「それにしても3時間ってちょっと長いだろ?なぁ傑?」

「まぁまぁ。いいじゃんかよ。それくらいは」

「うん、そうだよね。宇賀野くん。話がわかるなぁ」

「仕方ない。2対1なら多数決に従おう」

「やったぁ!じゃあ3時間コースで行くね」

「おう。わかった」


会計を済ませた俺たちは中に入ってみる。受付の隣にある扉を開けるとそこは猫ちゃんの楽園だった。部屋の中央にはキャットタワーが置かれていて、キャットタワーの下の部分には円状になったスペースがあり、そこに一人の女性が座って白い猫ちゃんと戯れていた。

俺はぐるりと店内を見回して三人でくつろげそうなスペースはないかと探した。


「陽太、あそこのスペースがいいんじゃないか?」

「ん?」

傑が指さした方向に視線を送るとガラス張りの窓に向かってソファが置かれているスペースがあった。

「おお!良いなぁ。俺もちょうどああいうスペースがあると嬉しいなと思っていたところなんだ。さすが傑、ありがとう」

「お前の考えてることは大体わかるよ」

「ねぇねぇ。どこに座る〜?」

くつろぐ場所を決めたすぐにスヤサキが三人分のコーヒーをトレーに乗せてやって来た。

「ちょうど、今決まったところだ。あそこの外の景色が眺められる気持ちの良さそうなスペースにするぞ、スヤサキ」

「わぁ!良いね!今日は晴れてるし眺め良さそう〜」

「じゃあさっそく座って話すか?」

「ああ。そうだな、傑」

「うん、座ろ座ろう」


吉祥寺の街並みを一望できる窓際の席はとてもいい景色だ。

「うわぁ〜。いい眺めだね。天気もいいし〜」

スヤサキは持っていたトレーをソファの近くに置かれている一人用の丸いテーブルにおいて、窓の方に近づいた。

「うわ!ちょっと高いかも……」いい眺めに気を取られたスヤサキは自分が高所恐怖症だということに気付いて驚いている。振り返るスヤサキは俺の顔を見て何かを訴える表情をした。

「ああ、そういうことか」

俺はその物欲しげな表情を見て何かを察してスヤサキに近づいた。

「横にいたら安心か?スヤサキ?」

「う、うん」スヤサキは少しだけ恥ずかしそうに頷いた。

そしてもう一言、小声で「手も繋いでくれるともっと安心かな…」と言った。

俺は一言「却下だ」と言った。

男同士で手を繋ぐのはなんだか嫌だ。前に一度手を繋いでやったことはあるんだが、あれは何ていうか、スヤサキが完璧な美少女に女装していたから手を繋ぐことができたのだ。

断られてうつむくスヤサキを見かねて、俺は右手をスヤサキの右肩に回して肩を抱いてやった。


「うぇ!?」

驚いたスヤサキはビクッと身をすくめて俺の顔を見た。

「ど、どうしたの!?真神くん!?」

「男同士で手を繋ぐのは却下だが、肩を抱き合うのは許可する。親友同士みたいで良いだろう?」


「しん…ゆう…」


目を丸くして心底驚いた顔をするスヤサキ。恥ずかしそうであり、嬉しそうでもある顔にも見える。そしてクルッと背を向けた。

「どうしたんだ、スヤサキ?嫌だったか?」

「ううん、違うんだ。親友って言ってくれたことが嬉しくて…もう不意打ちだよ、真神くん」

スヤサキの瞳が若干潤んでいる。


「一緒に映画見て、感想会しようっていうんだからもう親友だよ。俺の中ではな。スヤサキ、お前はどうだ?」

「うん、ボクもそう思うよ。ありがとう、真神くん……あ!」

少し涙目になってるスヤサキの足元に一匹の猫がすり寄って来た。耳と尻尾がグレーのラグドールだ。

「ああ〜。猫ちゃん〜。来てくれたの〜?」スヤサキは寄ってきたラグドールを赤ちゃん言葉で抱きかかえた。


「その猫はラグドールって種類の猫だな」

「それぐらい知ってるよ」

「さすが猫好きだな。ならこの子の名前は知ってるか?」

「それはさすがに知らないかな。お名前はなんでちゅか〜?」

スヤサキは抱いてるラグドールにスリスリと頬ずりした。

「ヨゾラちゃんって言うらしいぜ」

俺はスマホの画面を見てニヤリと笑みを浮かべてスヤサキに見せて言った。

「ええ!?キミ、ヨゾラちゃんっていうの?」

自分の名前と同じで驚いたスヤサキは抱いてるラグドールことヨゾラちゃんの顔をマジマジと見つめて言うと、ヨゾラちゃんは「にゃぁ〜」と返事をした。


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