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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、仲間と映画を観て創作意欲を湧かせる》
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《第七話 久しぶりに美味しい朝飯を食べた》

スヤサキの言った言葉に俺は目を見開いて驚き、グギギギと歯ぎしりした。

「だって、ホントのことだもん。仕方ないかな」

スヤサキは至極当然なことを言ったが、なんだろうもっとこう…手心というものがあってもいいと思うんだな、俺は。


「でもボクは真神くんかっこいいと思うかな。真神くんが気づいていないだけで真神くんのことを好きになってる女の子はいると思うんだよね」

な!何だってぇ!?そ、そんなことがあると言うのか!?俺が実はモテるってコト?

「いやいや。まさか、そんなことは…………例えば誰が俺のこと良いって言ってた?」

「え!?そ、それは…その…えーっと…」俺の質問にスヤサキは明らかに困った顔をして目を逸らした。


「ふっ……やっぱりね。俺のこと好きだっていう女の子はいないんだ……」

「い、いるいる!いるよ!必ずいるって!それにサ…!?」

「ん?さ?『さ』がなんだ?」

「えっと…その、それは……」

聞き返され歯切れが悪くなるスヤサキ。

視線もあっちこっちとクロールしている様子は、どう言い訳をすればいいかを考えているようにも見える。

「サ、サ、探せば必ず真神くんのことを好きな女の子に出会えるよ!うん!そうだよ!そのはずだよ!」無理矢理押し切るようにスヤサキは俺の手を握りながら言った。その目は哀れみなのか?涙が少し滲んでいた。


「探せば…いるか……そうか!?…そうだな!!?…そうかもなぁ!!?」

俺はそれでもそう言ってくれるだけでも嬉しかった。俺はスヤサキの言葉に勇気づけられ朝のアパートで雄叫びをあげた。

「うーん。その意気だよ!その意気!人間はね、その気になれば何でもできるんだよ」

「よっしゃぁぁぁあ!!なんだかやる気が出てきたぞ!朝飯は俺が奢ったるぜ」

「やったぁぁあ!ボクもやる気が出てきたよ」スヤサキはグッと両手を胸元で握りしめガッツポーズを取った。ぴょんぴょんと飛び跳ねて小躍りしてやがる。本当に食べることが好きなやつだ。


「じゃあ、早速行くか。朝飯を食べに」

「うん!真神くんの奢りだからいっぱい食べちゃうぞ!」

「え!?奢るって言っても一品だけだぞ」

「ファミレスだから包み焼きハンバーグとか山盛りフライドポテトとかボロネーゼとか」

「あの…俺の話聞いてます?スヤサキさん?おーい?」

俺が呼びかけても一切気づく素振りを見せないスヤサキは一人でファミレスのメニューを頭で想像してニヤけながらスタスタと先を歩いて行く。

俺の財布が激しい減量を余儀なくされる予感だ。無理なダイエットは体にも財布にも悪いというのに。俺はスヤサキの背中と自分の財布の中身を見比べて涙ぐんだ。


スヤサキと一緒に朝飯を食べに行ったファミレスでは、『夏が来た!だからガッツリ食べよう!〜SOKOSのSummerFoodFesta〜』という夏らしい食べ物が盛り沢山のキャンペーン中だった。


スヤサキはお店ののぼりを見て「うわぁ!サマーフードフェスタだって真神くん。ちょうどいい時に来たねボクたち」とニッコニコ。

「いいか?一品までだぞ、一品まで」と俺は念を押したのだが、

スヤサキは「わかってるよ〜」と軽い返事。

わかってるなら良いかとその時は思ったのだが甘かった。スヤサキはガツガツと朝から信じられない量の品を食べたのだ。


「おいおい。そんなに食べて大丈夫か?」

「大丈夫だよ〜まだまだ食べれるよ。真神くんも食べて食べて」

「お!いいのか?悪いね〜じゃあその海鮮焼きそばをいただこう」

俺はスヤサキが食べていた中で一番美味そうだった海鮮焼きそばを一口いただいた。


プリッとしたエビ、ふっくらとしたイカ、旨味たっぷりのホタテを頬張れば目に浮かぶのは、砂浜の上に立つ海の家の中。海の家から見えるのは太陽の光でキラキラと光る砂浜。聞こえてくるのはざぁーざぁーとゆっくりと寄せては返す波の音。


「美味い!美味いぞ!この海鮮焼きそば!」ファミレスの海鮮焼きそばにあまり期待していなかったのだが、思いの外絶品だった。スヤサキはさらに他のメニューも勧めてくれた。俺は一品だけ食べるつもりだったが絶品すぎる海鮮焼きそばが着火剤となり、イカ焼きも一杯頼んでしまった。スヤサキは海鮮焼きそば以外にもぶっといフランクフルトをかぶりつき、フライドポテトも食べていた。


スヤサキは「美味しい!美味しい!」と幸福に満ちた顔を見せる。

スヤサキは本当に楽しそうに食事をするやつだ。

おいおい。本当によく食べるやつだ。その体の一体どこにそんなに食べ物が入っていくんだ?


「イカ焼きです」

お?追加注文したイカ焼きをウエイトレスが運んできてくれた。

「わぁ!真神くんのイカ焼きも美味しそうだね。一口ちょうだい?」

「良いだろう。一口だけぞ」

パクっ!言うが早いか。スヤサキはイカの頭の三角を丸ごといった。実際には頭ではなく胴体の一部なのだそうだが、なんだか苺ケーキの苺を持っていかれた気分だ。

「うーん。もぐもぐ…美味しい〜醤油ダレが甘辛くていい感じ。イカも頭までプリプリだよ!真神くんも早く食べて食べて」

「わかったよ。そんなに美味そうなら…」

「あ!やっぱり待って!」ガシッと俺の手を掴んだスヤサキは俺の手から頭のないイカを奪い取った。

「あ!?お前何を!?」やっぱり食べ足りないのか?俺のイカ焼きを全部食べようと言うのか?この大食いの怪物くんは。


「はい、あ〜んだよ。真神くん」スヤサキは有無を言わさず、俺の口にイカ焼きをねじ込んだ。

「ほぁぐぅ!?……もぐもぐ……ごくり」

「どう?美味しい?」

「うまい!美味いぞ!スヤサキ!?」

シンプルな醤油ダレのイカ焼きだがそれが良い。炭酸飲料が飲みたくなるイカ焼きだ。

「だよね?だよね?このイカ焼き美味しいよね。ボクも追加注文しちゃおう」

「いいな。なら今度は俺が頭を齧らせてくれよ」

「え〜しょうがないな〜。またあ~んして食べさせてあげるよ」

「おいおい。また誰かに見られやしないか?」

「大丈夫だよ。ここは二階だよ。さすがにサクラコちゃんは見てないよ」

「それもそうか〜」

俺とスヤサキはこの後楽しく食事をした。久しぶりに美味しい朝飯を食べた。

誰かと一緒にする食事はいつも以上に美味しいのだ。


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