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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、仲間と映画を観て創作意欲を湧かせる》
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《第六話 モテる男が許せない!》

スーツのお姉さんはスヤサキを車の後部座席に乗せて、俺に会釈をしてから運転席に乗り込んだ。後部座席の窓が開き、スヤサキが顔を見せた。


「それじゃあここでお別れだね」

「ああ、今日は怪我させちまってごめんな」

「ううん、ボクも不注意だった。でも助けに来てくれて嬉しかった」

「そう言ってくれると助かるよ」

「ねぇ?やっぱり双子コーデやらない?」

うるっとした瞳で見つめてくるスヤサキ。やめろよ〜その目は〜。怪我をさせた負い目のある俺の心にそれは耐えられない。


「わかった…カラーだけな。全く一緒なのは無理だぞ」

「やったぁ!それでも嬉しいよ。やっとボクに懐いてくれた」

何だよその人を野良猫みたいに。猫はお前だろ、スヤサキ?

「何言ってんだよ」

「アハハ、じゃあね〜」スヤサキは手を振り、

「ああ、またな」と俺は手を振り返した。

「出します」とスーツのお姉さんは一言発し、車を発進させた。

スヤサキに合わせて服を用意しなくちゃいけなくなったな。

ベージュの服なんて持ってたかな?

俺はアパートに帰る前にオニクロに寄ることにした。ちょうど良い値段のものがあればいいのだが。


今日は休日。朝から雨が降りジメジメとしていた。梅雨はもう終わったものかと思っていたが、忘れた頃に雨が降る。海の日も近づき、晴れる日が続く本格的な夏が始まる前の最後の雨だろうか?

雨の音に耳を傾けていると机で充電中のスマホが振動した。


『はい、もしもし?』

『もしもし、ボクだよ』

スヤサキが電話をかけてきた。

『どうした?』

『ふふふ、どうせなら一緒に行こうよ』

『ああ、まぁ別に良いけど。どこで待ち合わせするんだ?』

『ふっふっふ。実はねもうキミのアパートの入口にいるの』

こわっ!?なに?そのメリーさんみたいなことやってんの?

俺が玄関を出て外を確認したら、雨の中で灰色の傘をさしてこっちに手を降るスヤサキがいた。


「あ!真神く〜ん。おはよ〜」

スヤサキは屈託のない笑顔で元気に手を振っている。足の怪我はもう大丈夫なのだろうか?

「待ってろ!今行く」

「いや!悪いけどお部屋にあがらせてもらえないかな?」

「え!?ああ、わかった」

「やったぁ!」

スヤサキは入口の近くにできた水たまりをピョンと飛び越えて、階段を駆け上がってきた。


「エヘヘ〜、来ちゃった」

ヤンデレ彼女みたいなことを言うな!

「来ちゃったって、傑と映画見るのはお昼の回のやつだぞ」

「わかってるよ〜」スヤサキは返事をしながら俺のアパートに入っていく。

「わかってるって今は朝の7時なんだが」

「そうだ!朝ご飯食べた?」

話聞けよ。てか冷蔵庫を勝手に開けるな。


「うーん。何も入ってないね〜」

「悪かったな。ちょうど切らしてるんだ。今日の帰りにスーパー寄って帰るつもりなんだ」

「ボク、朝ご飯食べてないんだ〜早めに出てどこかで朝ご飯食べて行こうよ。真神くん?」

「こんな早い時間に開いてる飲食店なんてあるのか」

「ファミレスがあるよ」

ああファミレスか。駅に行く途中にあったな。冷蔵庫には何も食べるものが入っていないしちょうどいいか。


「わかった。近くにファミレスあったからそこに行くか?」

「わーいやったぁ〜」スヤサキはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びを表す。二階何だからやめろ。

「じゃあ行くか」

「えっ!?その格好で行くの?」

「ああ」

「双子コーデは?合わせてくれるって」

「朝飯食いに行くだけだ。その後部屋に戻ってちゃんと着替えるつもりだ」

「ええ〜宇賀野君との待ち合わせまでお喋りしようよ〜」

「おい!5時間くらいファミレスに居座るつもりか!?」

「余裕だよ〜女の子なんてそれくらい居座るのなんてよくあるよ」

「あ!そっかそれなら構わないか…ってなるか!俺は女の子じゃないし、お前も女の子じゃないだろ?あ!あれか彼女とかの話してるから?俺に彼女が出来ないからってマウントとってるなぁ!?」

「ええ!?ち、違うよ!ボクは男だし、彼女もいないよ!勘違い勘違い」

「え!?そうなの?なんだ同志だったか。それはすまなかった。勝手に決めつけてしまった」

「うん、大丈夫だよ」


「でも何で女の子は5時間もファミレスに居座るって言うんだ?」

「それはボクが時々女の子たちとファミレスで食事するからかな」

「やっぱり女とファミレス行ってるじゃねぇか!!しかも『たち』!?『女の子たち』って言いましたよってあなたぁぁ!?」

「わわわ!もう!そんなことで怒らないでよ!真神くん!」

「そんなことで!!!?生まれてこの方、女の子と付き合ったことのない俺に!そんなこととはなんだ!!?」

俺はスヤサキの言葉に怒り心頭。許せない!モテる男が許せない!


「どーどーどー。落ち着いてよ真神くん。そんなに大声だすと隣の人がびっくりしちゃうよ」

スヤサキは暴れる馬を鎮めるかのように俺をなだめる。そんな生ぬるいなだめ方では俺の暴れ馬の怒りは収まらない。どうしてくれるのだ?俺はスヤサキを恨めしそうに睨んだ。

「そんな目で見ないでよ真神くん。キミがモテないのはボクにはどうしようもないかな」

「なんて辛辣なことを言うやつなんだ!お前は!?」


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