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スヤサキ君って実は…  作者: みえないちから
《第三章 陽太、仲間と映画を観て創作意欲を湧かせる》
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《第五話 やっぱり良いとこの御曹司なのか?》

「ボ、ボクは男かな…」俺の体にコアラのように抱きついてスヤサキは言った。なぜ俺の体に飛びついたんだ?

「はぁ!ご、ごめんなさい。あまりにも綺麗な顔をしていたもので、女性かと勘違いを…」

「朝霧さん、こいつはこんな顔をしているが大学で女子に人気の男子生徒です」

「そ、そうですか。し、失礼しました」

「そんなことはないですよ、朝霧さん。ところで今日はお出かけでしたか?」

「あ!お仕事で」

「ああ、駅近くの図書館で司書をやっていましたよね」

「は、はい」

「俺、あそこの図書館を昔利用してたんですよ」

「し、知ってます…」朝霧さんは蚊の鳴くような声で何か言った。


「え?あの…すいません。よく聞こえなくて」

「い、いえ…なんでもないです。すいません」

「ねぇ真神くん、そろそろ」俺の体にしがみついてるスヤサキが耳打ちした。

「あ!そうだ。お前ケガしてたんだ。朝霧さん、すいません。俺たち部屋に入るんでここで!また」

「は、はい…また」朝霧さんは小さく右手を振った。

「またね朝霧さん、今度一緒にお茶でも」スヤサキはさらっとナンパなセリフを吐いた。これがイケメンの日常的に使うワードなのか。

「あ、は、はい」朝霧さんは少し困ったような顔で返事した。

朝霧さんはコミュニケーションが苦手そうだな。スヤサキみたいな陽キャ野郎に声をかけられて困ってるじゃないか。


「真神くん何してるの?早くお部屋に入ろうよ。ボク片足立ちでいるの、そろそろきついよ」

「ああ、悪い悪い。今開けるよ」

俺はドアノブに手をかけドアを開けようとした

が、スヤサキがドアの開く場所に立っているから

このままではスヤサキにドアが当たってしまう。

「スヤサキ、ちょっとズレてくれないか?そのままだとドアがスヤサキに当たっちまう」

「あ、うん。ごめん、今どくよ」

ケンケンと器用に片足でドアが当たらないところまで逃げるスヤサキ。

「うわぁ!わわわ!?」

だが何かに躓いたのか、スヤサキはバランスを崩し倒れそうになった。

「た、助けて!真神くん」

「お、おう」俺はよろけたスヤサキの体を倒れないようにキャッチすることに成功した。


スヤサキの体は俺に抱きかかえられるような形で転倒を免れた。俺とスヤサキの顔が触れそうなくらいに近くなった。

「はふぅ!!!?」すると隣で見ていた朝霧さんが歓喜ともとれるような声を上げた。鼻のあたりを手で抑えて「ありがとうございます」となぜかお礼を言いながら朝霧さんは自分の部屋に入っていった。

「あ、ありがとう…真神くん…」スヤサキの顔は仄かに赤くなっていた。

「ドキドキしたか?」

「え!?」

「床に倒れそうになってドキドキしたんじゃないか?顔を赤いし、少し汗ばんでる」

「あ!う、うん。ちょっとドキドキしちゃった。助けてくれてありがとう」

「どういたしまして。よっと!」俺はそのままスヤサキをまたお姫様抱っこして立ち上がった。

「うわぁ!?また!?やめてよ!恥ずかしいよ」

「もう誰も見てないって」

「もうお隣さんに見られたよ!」

「ハハハ。それもそうか。ならもう気にする必要はないな」


俺は恥ずかしがるスヤサキをなだめてお姫様抱っこしながら自分の部屋に入った。

スヤサキはプリプリ文句を言っていたが、モッチ・de・リングをあげたら夢中で食べていた。モッチ・de・リングを食べながらスヤサキは言った。

「やっぱり双子コーデで行こうよ、真神くん?」

「やーだよ」

「はぁ〜ざ〜んねん」モッチ・de・リングを食べ終えたスヤサキは親指についた砂糖を舐めて言った。俺はスヤサキの怪我をした足を手当てした後、スヤサキを駅まで送ることにした。


こんな時、車があったら便利だなと俺はスヤサキに歩幅を合わせながら歩いて思った。

「なぁスヤサキ?駅まで抱っこしようか?」

「いいよ!もう!抱っこは!?手当もしたし、少しだけ歩きにくいだけだから、心配しないで」

俺の愛のある優しさを拒否して、おぼつかない足取りで前を行くスヤサキ。

やれやれもう恥ずかしがることないだろうに。


駅前に着いた俺たちはここで別れることにした。

「じゃあ、ここまでだね。送ってくれてありがとう」

「ここまででいいのか?マンションの前まで送ろうか?」

「ううん、大丈夫だよ。実はお迎えが来てるんだ」

「え?お迎え?」俺は駅前の周りを見回した。

「あれだよ」スヤサキが指さしたところに黒塗りの高級車が一台止まっていた。その側にはスーツ姿の人物が立っていた。長い髪を後ろで一房に結い、サングラスをかけている。胸に二つの山があり、腰はくびれていて、丸みを帯びたお尻をしている。体つきを見るからに女性のようだ。

「あれってスヤサキ、お前はやっぱり良いとこの御曹司なのか?」

「まぁ、そんなところだよ」

「ふ〜ん」


俺はそれ以上深く詮索はしなかった。直感だが、スヤサキはプライベートなことを詮索されるのは嫌いな気がした。

スヤサキを車の前まで送るとスーツの女性がスヤサキの腰あたりに手をあて支えた。

「ありがとうございます、真神様。ヨゾラ様をここまで送っていただいて」

「あ!いや、俺が怪我をさせたみたいなものなのですいませんでした」

突然名前を言われてびっくりして俺は慌てて頭を下げた。そしてスーツのお姉さんの声はハスキーでとてもセクシーだった。女性の低い声も良いな。


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