↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/41

06.強制的に結婚?

 本当に、わけがわからない。


「は……、花嫁?」

「そう、花嫁」


 この人(?)は、突然なにを言っているのだろう。


「ちょっと待って、私はここがどこかもわかっていなくて……! それに、あなたは一体誰!?」

「だから、俺は銀夜」

「……名前じゃなくて! あなた、人間じゃないでしょう……?」

「ああ」

「……私は、人間なの!!」

「知ってる。おまえは姫巫女だろう?」

「…………はい?」


 ひめみこ?

 私が、あの、姫巫女様?


 この人は本当に、なにを言っているの……?

 唐突すぎるし、脈絡がなさすぎてもう、なにから突っ込めばいいのかもわからない。


「……そんなわけないじゃない」


 私の正面であぐらをかきながら、彼――銀夜は面倒そうに溜め息をついた。


 溜め息をつきたいのはこっちなんですけど……。


「自覚がないのか」

「え?」

「おまえは姫巫女だぞ。その証拠に、さっきからぷんぷん匂ってる」

「え!? ……私、くさい?」


 さっき走ったから。たくさん汗をかいたせい?


「そうじゃなくて――」


 けれど、くんくんと自分の匂いを嗅ぐ私の反応を見て「あー」と言葉を詰まらせると、彼は面倒くさそうに頭をかいてから改まったように言った。


「俺たちあやかしは、姫巫女は匂いでわかる」

「あやかし……」


〝俺たちあやかし〟

 確かに彼はそう言った。


 やっぱり、彼は人ではない。

 人ならざる者――〝あやかし〟なんだ。


「特に俺たち山犬は、鼻が利くからな」

「やまいぬ……」


 山犬の、あやかし?

 あやかしって、本当にいたのね……。

 昔からそんな話を聞かされているとはいえ、さすがに信じられない。というか、信じたくない。


 祖母から聞いていた話が本当だとしたら、私はあやかしが住む世界に来てしまったということになる。


 でも、今目の前にいるこの男は確かに人間じゃない。

 先ほどから犬耳がぴくぴく動いたり、しっぽがふぁさりと揺れたりしている。


 ……あれは作り物じゃない。本物だ。


「しかもおまえは怪我をしている。その血の匂い……それに、さっき傷を舐めて確信した。おまえは間違いなく姫巫女の血を受け継いでいる」

「…………そんな、」


 くら……っと、目眩がした。

 待って。お願い、ちょっと待って……。

 色々言いたいことも聞きたいこともあるけれど、私の気持ちを置いて彼はぺらぺらと話し続けた。


「だから椛、おまえは俺の花嫁になるんだ」

「……どうしてそうなるのよ」


〝だから〟の意味がわからない。

 っていうかなにもかも全然わからないけど、なんとかその質問だけは口にできた。


「俺が山神になるためだ」

「あなたが、山神様に……?」

「ああ」


 うう……やっぱり駄目。頭が痛い。


 彼の言っている意味は全然わからないけれど、何から聞いていいのかもわからない。


 ただ彼は、その話をいたって真面目にしている様子。


「おまえと結ばれれば、俺は山神になれるんだ。そういうわけだから――」

「え?」


 それでも聞かなければ。そう思い、痛む頭を押さえて話を整理していると、突然彼は私に手を伸ばしてきた。


「ちょ……ちょっと、何するの――」


 肩をそっと押されて、私の身体はあっという間にその場に倒れる。

 背中を支えられていたから痛くはなかったけど……そういう問題ではない。


 私は今、この犬耳の男に押し倒されている。


「や、やめて……! いきなりそんなの……!」

「……」


 慌てて声を上げるけど、正面からじっと真剣な瞳に見つめられ、なぜだかドキリと鼓動が跳ねた。


「……」

「……」


 上から私を見下ろしている彼の顔が、すぐ目の前に迫る。


 犬耳が生えているけれど、しっぽもあるけれど、この男(ひと)、人間離れした、すごく綺麗な顔をしてる――。


「で、でも駄目……!!」

「……」


 初めて感じる不思議な感覚に動揺していると、すぐそこまで迫っていた銀夜の顔がピタリと止まった。


「……?」

「……結ばれるって、どうすればいいんだ?」

「…………は?」


 え……? 何、この人。わからないで言ってたの?


「と、とりあえず退いて……!」


 変なことをされるわけではなさそう……?


 そう安堵した私は、とりあえず銀夜の下から這い出ようとした。


「――銀夜、何をしているんだ」


 そのとき。

 はぁ……、という呆れたような深い溜め息が聞こえた直後、銀夜の身体がぐんっと後ろに引っ張られた。


「痛って……、玲生(れい)! いきなり何をする!」

「何かしているのはおまえのほうだろう? そのお嬢さんは困っているように見えたけど?」


〝玲生〟と呼ばれたその人が、銀夜の襟元を後ろから引っ張って、私からべりっと剥がしてくれたようだ。


「あ、あの……?」

「ごめんね、お嬢さん。こいつはこう見えて、悪い奴じゃないから」

「はあ……」


 にこり、と優しげな笑顔を向けてくれたその玲生という人は、長い金髪を後ろで束ねている、とても美しい男性だった。


 一瞬女性に見間違えてしまうほど、美形。

 その笑顔があまりにも綺麗で、私は思わず頷いてしまう。


 あれ? でも待って、この人――。


「……犬耳がない……しっぽも」


 それに、怖い感じもしない。

 この人はきっと、人間だわ……!


「膝を怪我しているね。その怪我は早く治療したほうがいい」

「それはそうだな」

「あの、ありがとうございます……! 私、気がついたら突然この場所に来ていて……!」


 やっと話が通じそうな人に会えた。

 その嬉しさに、私は堰(せき)を切ったように自分の状況を口にした。


「そうか、それは大変だったね。こっちにおいで。まずはその怪我を手当てするから」

「はい、ありがとうございます……!」


 優しくそう言ってくれた玲生さんに、私は瞳にじんわりと涙を浮かべてそのあとについていった。



お読みくださいましてありがとうございます!


これまでとは毛色の違う作品ですが、

じれじれ、一途なヒーロー、溺愛、もふもふ有りの、あやかし和風ファンタジーです!(*´˘`*)


なろうでどれくらい需要があるかわかりませんが、頑張りますので「面白そう!頑張って!」などと思っていただけましたら、ぜひぜひブックマークや評価☆☆☆☆☆を押して応援してくださいますと嬉しいです!!( ;ᵕ;)


いつもお一人お一人の反応がとても励みになっております。

ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。