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アンストッパブル・ハート!  作者: ふじきど
5/5

謎の狼戦



  馬車の御者の席で1人の若者が震えながら、

 大声でわめきつつ狼を追い払おうと

 手当たり次第に物を投げつけています。


 しかし狼は全く怯む様子を見せず、

 唸り声を上げながら襲い掛かる機会を

 探すように若者を睨みつけています。



  「あの馬車の奴、

   結構対処をわかってるみたいだな!

   狼相手には怯んだ瞬間に襲い掛かられる!」

  「ああ、

   んでもう1つわかッたことがある。

   あの狼、馬もいるのにそッちを狙おうとはしてねェ」



 ロインが指さす方向には、

 確かに怯えて嘶いている馬の姿もありました。

 しかし狼はそちらには目もくれようとせず、

 若者だけを狙っているようです。



  「人の味を覚えちまったやつかもな、

   そうなるともう追い払うのは無理だ!」

  「さッきの奴もそうだッたのかもな。

   とッとと斬ッちまうしかないか!!」



 ロスが狼の目の前へ向かって飛び出そうとすると、

 ロインが声を張り上げます。



  「狼の目を直接見るなッ!!

   俺はさッき覗いちまッたら、

   身が竦んで……動けなくなッちまッた!

   明らかにただの狼じャねェぞッ!!」

  「お前何やってんだよ!

   狼相手に目なんて覗き込んだから

   襲われたんじゃ──」



 呆れ半分でロインに目を向けようとした、

 その時でした。


 ロインと挟み込むようにしていた狼が

 突然こちらに目を向け、

 ロスは思わず目を合わせてしまいました。

 

 ──狼の深紅に染まった目がこちらを見た

   その瞬間、ロスは周囲の空気が凍り付いたような

   錯覚を覚えました。


   その眼にはまるで命の脈動を感じませんでした。

   その眼にはただひたすら命を奪い取る昏い執念がありました。

   その眼には生き延びようとする意思すらもありませんでした。


 ──その狼は、

   この世のものではない〝魔〟が

   獣の形に擬態した物としか思えませんでした。



  「──ロスッ!!!」



 怒声が聞こえた瞬間、

 ロスの眼前には狼の鋭い歯が迫っていました。


 あ。これはヤバい、死ぬ……

 ロスはまるで他人事のように

 自分の置かれた状況を理解しました。

 反射的に動くこともできず、

 逃げる体制にもなれていない自分には

 何もできることがない、


 そんな結論が頭の中ではじき出され、

 ロスは引きつったように笑いました。



  「へへっ……」



 狼の鋭い歯は、

 しかし次の瞬間真横から何かが激突し、

 真横へと吹っ飛ばされていきました。



  「何ぼさッとしてやがるロスッ!!

   さッさと気合い入れなおせッ!!」



 血まみれの剣を振り回してロインが

 ロスの顔を引っ叩こうと空いている手を上げます。


 その背後で狼が体勢を立て直し

 再びこちらに走ってくる姿が見えます、

 ロスはロインの手が顔に寸での所で

 がしりと食い止め笑いました。



  「……悪かった、

   確かにあの目、

   ただの獣なんかじゃあなかった。

   今度は間違いなく斬るっ!!」

  


 剣を構えなおしたロスに向かって

 狼が飛び掛かります。

 

 その時機タイミングに合わせてロスは身をかがめ、

 上を通過しようとした狼の腹めがけて

 剣を突き出しました。

 切っ先は真っすぐ狼の腹に突き刺さり

 その動きを封じます。

 


  「今だ、やれ!!」



 掛け声と同時に後ろに下がっていたロインが

 踏み込みながら剣を振り下ろし、

 狼の首は跳ね飛ばされゴロリと転がりました。



 ──狩りは初めてではありませんし

   狼と遭遇したことも何度もありましたが、

   今回ほど死を覚悟したことは

   ありませんでした。

 

 そしてそれを乗り越えた興奮が

 心の底から沸き上がり、

 同時に死地を乗り越えた安心感から

 2人はその場にへたり込みました。



  「うおおおおお勝ッたあああああああ!!!」

  「はぁ……はぁ……ざまぁみやがれ狼野郎!!

   はぁ……本気で死ぬかと思った……!!」

  「自分たちから頭突ッ込んでおいて

   くたばッてたら最低の笑い話に

   なるとこだッたぜ……!!」



 そういえばそうだったと頷いた後、

 ロスは行商人はどうしたのかと

 周りを見回すと、

 宿をとっていた町に馬車が入っていくのを

 見つけました。



  「はぁ……どうやら行商人は

   町に逃げ込めたみたいだな……」

  「あの商人野郎、

   狼が俺たちを襲い始めたのをいいことに

   なんにもせずに逃げたんだよな?

   こういうときは持ちつ持たれつだ、

   情報の1つや2つ貰ッたッて

   罰は当たんねェよなァ?」

  「おい、当たり屋じみてきてんぞ……

   まぁでも、勝手に割って入ったとはいえ

   礼の1つくらいは欲しいよなぁ……?」



 2人でそんなことを言い合っていると、

 町の方から1人こちらに向かって

 駆け寄ってくる者がいます。


 それは先ほど馬車に乗っていた

 御者らしき若者でした。

 若者は手を振りながら

 ロスたちの元へとやってきて、

 息を整えながら笑顔をこちらに向けました。



  「けほっけほっ……

   あ、ありがとうございました……っ!!

   お2人が助けてくれなかったら

   僕はあの場で狼の餌食になってました……

   何とお礼を申し上げればいいのか──」

  「ほう、

   俺たちに礼がしたいのか!?

   なら貰ッとこうか。

   あの狼の情報について知ッてる事洗いざらい

   吐いてもらうぜッ!!」

  「言い方ってもんがあるだろうが!

   でもまぁなんだ、

   さっきの狼のことを少しでも

   知ってるなら、

   確かに教えてもらいたいぜ」



 急ぎたい気持ちを抑えつつ

 御者の若者に詰め寄ると、

 たじろぎながらも

 若者は話してくれました。



  「え、えっと……?

   そんなことでいいんですか?

   それなら聞いただけの話ではありますが──」

  『どんな話なんだっ!?』

  


 さらに距離を詰めながら問いかけると

 若者は一歩後ろに下がりながら言いました。



  「あの……

   僕が聞いたのはここ最近、

   街道での狼との遭遇率がかなり多いとの話です、

   それも遭遇するのは先程のように決まって1頭ずつだとか。

   普段は街道から外れて森の中とかにでも

   入らない限り狼には襲われないんですが……」

  「さっきの町でそんなこと

   なに1つ聞いてないぞ?

   どうなってんだ……」



 ロスが首をひねっていると

 ロインが先を促します。



  「他になんかないか?

   例えば灰色の肌で空飛ぶ怪物とか、

   西の果て、だッけか。

   そこに居るとかいう〝まおう〟とかいう奴の

   情報だとかよ」

  「まおう……?

   うーん、聞いたことがあるような

   無いような──あっ」



 若者は考え込んでいたかと思うと、

 パッと顔を上げて手を打ちました。



  「まおう、そう、思い出しました!!

   探されている相手かはわかりませんが、

   〝魔王〟と呼ばれている存在、居ます!!」

  「マジか!?」

  「聞いてみるもんだなァ!!

   どんな奴なんだ!!」



 ロスたちが息を荒げて詰め寄ると、

 若者は「確かこうでした」と言って続けました。



  「魔王──〝第六天だいろくてんの魔王まおう〟と呼ばれている

   存在がいると耳に挟んだことがあります!!」






ロス「そういや俺血だらけじゃあねぇか……?」

ロイン「後で川にでも飛び込めばいいじャねェか」

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