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アンストッパブル・ハート!  作者: ふじきど
4/5

2日目



  「おッしャあ!!

   完全回復、突ッ走るぜ!!」

  「起きて早々にそれかよ!?

   疲れが多少抜けたくらいでイキるなよ!」



 ロスが宿の番台で勘定を済ませている間に、

 ロインは息も猛々しく飛び出していってしまいました。



  「あの馬鹿……!

   勘定ここに置いてくぜ!!

   ちと多いかもしれねぇが受け取っといてくれ!!」



 慌てて宿を飛び出したロスは道を見回し、

 豆粒程まで小さくなってしまった

 ロインの背中を見つけると追いかけ始めました。


 昨日も考えていた「間に合わなかったらどうする」という問いに

 ロスはまだ明確な答えを出せていません。

 それどころか頭の中でぐるぐると渦を巻き、

 心のしこりになってしまっていました。


 そう考えるとロインが後先考えることなく

 傍若無人になってしまうのは、

 その焦りからくるものなのだろうと

 ロスは気付きます。


 猪突猛進であることも

 それが理由なのだろうということは

 わかりますが、

 それでも確実な方法を取らなければ

 目的は果たせないことを

 ロインに伝えなければなりません。


 やがてロインの背中が近くなってきたことに

 ロスは怒りを飲み込みつつ

 声を投げかけました。



  「おいロイン!!

   急ぐだけじゃあ駄目だって昨日も──」

  「ロス、剣を抜けッ!!!」



 返ってきた声にロスは首をかしげます。

 が、次の瞬間ロインに飛び掛かった影を見て

 ロスは剣の柄に手をかけました。



  「ロイン!!

   なんだありゃ──狼!?」



 ロインに襲い掛かろうとしている影、

 それは狼でした。


 しかし明らかに違うのは、

 その目は村を襲った怪物たちのように赤く爛々と輝いており、

 普通の狼よりも一回り、いえ、下手をすれば二回りも大きく、

 明らかに異常と呼べる存在だったのです。


 狼はロインの喉笛を食い千切らんと

 執拗に噛みつこうとしており、

 ロインは両手で必死に押しとどめることしか

 できません。



  「くそっ、そこをどけ!!」



 ロスが剣を引き抜きでたらめに振り回します。

 その切っ先の一筋が狼の脇腹を斬りつけたらしく

 真っ赤な血が噴き出しました。


 やった、これで狼は逃げ出すはず、

 そう思うロスは瞬時に異変に気が付きます。

 狼は怯む様子もなく、

 なおもロインの首めがけて噛みつこうとしているのです。



  「な、なんだこいつ……っ!!

   離せ、離しやがれってんだよ!!」



 こちらに注意が向かっていないことを確認し

 ロスは今度は正確に狼に剣を振り下ろします。

 両の手で握り渾身の力で振り下ろした剣は、

 狼の背をざっくりと裂き鮮血が溢れます。

 しかしそれでも狼は食らいつこうとすることを止めず

 ロスはただひたすらに斬りつけます。

 血みどろになりながらも暴れていた狼は

 徐々に動きが鈍くなっていき──


 やがてどうっと倒れ、動かなくなりました。


 



 肩で息をしながら初めての戦闘に勝利したロスは、

 剣を放り出して倒れているロインを揺さぶりました。



  「おいっ、しっかりしろロイン!

   生きてるか?……生きてるよな?」


 

 喉には噛みつかれていないはずでしたが

 もしかしたらどこか怪我でもしたのではないか、

 そんな不安に駆られたロスの手を握り

 ロインは疲れた顔でにやりと笑いました。



  「勝手に死なすんじャねェよ……」

  「……はぁっ!!脅かすんじゃねぇよ、ったく……」



 地面にへたり込んだロスは、

 身を起こしたロインを睨みつけました。



  「なんか俺に言うことあるよな?」

  「あー、えッとその……悪かッたな?」

  「疑問形かよっ!!」



 ロインの肩を拳で軽く突くと、

 ロスはようやく笑みがこぼれました。


 

  「はぁ、朝っぱらから疲れちまった……

   にしてもなんなんだこの狼、

   やけにでかいし傷つけても

   まるで意に介さずにお前を襲い続けるし……」

  「群れから追い出された奴、

   ッてわけでもなさそうだな……

   体躯もいいから食いっぱぐれるような

   弱い奴とも思えねェ。

   なんなんだこいつ──」



 2人で狼の死骸を見ながら考えていましたが、

 叫び声が聞こえてきたことでその思考は中断されました。



  「なんだ!?」

  「この先だ、

   俺たちが向かおうとしてたとこだぜ」

  「正確にはお前が1人で突っ走ろうとしてた道な」

  「もう謝ッたからいいだろ?

   どのみち向かう先なんだ、

   行ッてみようぜ!」



 ロイン達は駆けだし、

 しばらくもしないうちに声の聞こえてきた場所が

 目に入りました。

 街道の中心で行商らしき馬車とその一行が

 先ほどと同じ狼に襲われていたのです。



  「あれか!!」

  「正直無視して先を急ぎてェとこだが……

   今はあの狼のことを知りてェ、

   立て看板もあったことだし行商ならなんか知ッてるかも。

   狼にはこの先また出くわすかもしれねェしな!」



 ロインの一言に苦虫を噛み潰したような顔をしたロスは、

 しかし今は急がなければと駆け寄ろうとし──



  「あっ──やべぇ!!

   剣さっきの場所に置いてきちまった!!」

  「は!?」



 大事なものを忘れてきたことに気付きました。

 今から戻っていては行商たちは間違いなく助からないでしょう。

 しかし得物も無しにあの狼に立ち向かうことなど

 できるかどうかもわかりません。



  「どどどどうすりゃいい!?

   おおお俺はどうすりゃいい!?」

  「んなこと言われてもよ……

   なんか不思議そうな剣だッたし、

   呼んだら手元に来たりしねェか!?」

  「おとぎ話じゃねえんだぞ!?

   〝剣よ来い!〟なんて言ってくるわけ──」



 ロスが叫んだ瞬間でした。

 風切り音が聞こえたかと思うと

 ロスの右手には重い感覚があり、

 目をやってみると──


 先ほど置いてきてしまったはずの剣が

 収まっていました。

 


  「ま、マジで来た……」

  「マジか……なんでもやッてみるもんだな……

   まァとにかく武器があるなら突撃すんぞ!!」

  「お、応っ!!」



 ロスとロインは剣を振りかざし、

 狼の前へと突っ込んでいきました。






ロス「それで、作戦はあるのか!?」

ロイン「〝くたばる寸前までガンガンいこうぜ!〟これ1つッ!!」

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